人間と異世界種族
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トワイライトが一気にダッシュして切りかかる。
それを剣で受け止めるイリテに。
リューが拳銃を発砲した。
「…っ!」
『リューさん、私が実体化していないからと言って、そのような外道はおやめください。』
トワイライトの言葉を受けたリューが頭をかく。
彼は、トワイライトの体を貫通するように銃弾を撃ったのだ。
そりゃあ、トワイライトも怪訝な顔をするわ。
なんだその外道は。
「リュー、相手の動きを止めるだけでいい。トワイライトは、リューの合図で一気に飛び退け。」
『了解です。』
トワイライトがいったん離れ、その隙にリューが発砲。
リューの拳銃に込められているのは麻痺弾…か?
一撃で戦闘不能にしないために麻痺のレベルは低そうだ。
…悪趣味だなお前も。
結論をいうと、相手が勇者はなんたるかというのを示してくれない限り、あちらが勝利する可能性は、限りなくゼロに近い。
いや、ゼロだ。
自分は驕っている訳ではない。
すくなくとも、クレアシモニー学園で上位3割に実力は入っているだろうが。
「くそ、なんなんだよー!」
滅多打ちにされたあとの負け惜しみ、ありがとうございます。
「俺は1人だぞ。…肉体のない奴なんて召喚して、楽しいのか?」
「楽しいさ。」
バッサリ切り捨て、リューから拳銃を、トワイライトから【夕暮れ時の太陽】を借りる。
「…なら、本物の1対1で勝てるんだな?」
イリテが打ちつけてきた剣を、【夕暮れ時の太陽】で防いだら折れました。
あっちの剣が。
ついに、《汚染》が剣の芯まで浸食し尽くしたらしい。
あっさり、バキッと折れた剣をみて、イリテは開いた口がふさがらない状態。
まあ、そりゃあそうだろうな。
「…剣が。」
「勇者の持っていた剣は、ただの鉄の剣か?」
依頼者から、勇者の剣くらいもらってこいよ。
ますます怪しくなってきたよ。
「くそぉ!」
え。
まさか、素手で殴り掛かってくるとは。
それを腕で受け止め、そのまま腕をつかむ。
「!?」
そのまま、背負い投げに近い状態で投げ飛ばした。
そして、またパターン化されているように撃槍を投げつけて無力化する。
「…次。」
これで、あと1回か?
しかし、ここまで弱いのはさすがに。
…何か、覚えているんじゃないのか?
さすがに、魔法が使えないわけはあるまい。
…種族的な問題があるとはいえ、みたところサミュリでもないし。
…いったい何なんだ。
「…。」
注意深く、彼をみてみよう。
…転生者と、召喚された人って何か違いはあるのだろうか。
転生者は、転生神という存在にもう一度「生」を預かる。
その時の能力などは、俺みたいな運であったり、ミレイのような話し合いの元で決まったりする。
少なくとも、スロツ=トールとアルカだけではないはずだ。
召喚の方はどうか。
召喚ってそもそもなに? と聞きたいところだが。
前の世界でやっていたゲームとか、呼んでいた本とかと同じだとすると。
…能力も何も、持ち合わせていないと言うことになるのか…?
しかし、そのようなことがあってはならないだろう。
ただの人間は、この世界ではただの弱者である。
エリシュのように魔法に秀でたわけではなく。
ウェイカーのように強靱な肉体を持ち合わせているわけでもなく。
サイコルのように超能力を扱えるわけではなく。
フライドのように空を駆ける翼もなく。
ケレイジのように爪も牙もなく。
サミュリのように頭の回転も速くない。
…カラミタとレザールは別問題だろうが、あまりにも人間は弱すぎるのだ。
「…さて。」
しかも、この世界の空気には「魔素」というのが含まれている。
…普通の人間が、この世界の空気に適応できているのか?
「うらああぁっ!」
殴り掛かってきたイリテを避け。
足を振りあげたイリテを殴り。麻痺弾を発砲し。
「…血が上るのが早いな。」
「…うるせぇ!」
顔を真っ赤にして叫ぶイリテに、ため息をつき。
俺は、走り出した。
「心配してあげているというのに。」
「それのどこが!」
「ここがだよ!」
剣の柄を投げてきた。
それを手でキャッチし、なげかえす。
イリテは悲鳴を上げながら避けた。
…なんか、楽しくない。
初めてだ。
対人戦で…楽しくなかったのは…。
ギリス・ランレイ以来か。
…しょうがないよね。
本気出しても。
ありがとうございました!