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醒眼族の異世界学園覚醒譚  作者: 天御夜 釉
第2部、第3章 勇者(自称)が思いのほか面倒です…。
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勇者(自称)来襲

最後まで読んでいただければ光栄です!

「【聖魔の牙バルデュバル・ケル】はいるか!」


 初めての授業の朝は、そんな声とともに吹き飛びました。




 世界一とも謳われる、クレアシモニー学園の前。


 校門でそう叫んでいるのは、黒い髪の毛の、勇者っぽい格好に身を包んだ男子だった。

 …だれだあいつ。

 何よりも、俺の目から見ると痛いんだが。


 いつの間にか、校門にカレルが現れた。

 …本当に何時の間にだ。


「…学園部外者は出ていってもらおうか。」


 カレルのその声とともに、学園の門衛が10人ほどその男を取り囲む。

 門衛…ああ、この世界では特に高価な銃まで持ち出して!

 男は一瞬ひるんだが、すぐに勝ち気な表情を取り戻した。…なんなんだろう。


 ウスギリが俺を窓から引き剥がし、ジン・ライオが窓の方に向かった。

 相変わらず無言で。

 ウスギリは何か焦ったような顔をしていたが、いったん俺に聞く。


「知り合いか?」

「んな訳ないだろ。」

「それもそうか。…しかし、ランの噂が結構広まっていることになるのかな。」


 知らないよそんなこと。

 …面倒なことになってきたな。


 ジン・ライオが顔をゆがめて窓から離れ、席に着く。

 …んん?


「そろそろ授業が始まるんだ。迷惑がかかるから放課後に…。」

「魔王のこと…。」


 カレルが口をつぐんだのだろうか、何も聞こえない。

 耳のいいウスギリが、俺を驚愕の目で見つめた。


「…行った方がいいかもしれない。…魔王の話を持ち出してきた。」

「分かった。」


 すぐに向かおうとしたところに、二人分の肩の重み。

 後ろを向くと、リンセルとアンセルが俺を見つめていた。


「…私たちもいく。」

「…でも…、ああ、そうだな。」


 リンセルとアンセルが直接関与していることでもあるからな。

 これは一緒に行った方がいいのかもしれない。






------------------




「…俺が【聖魔の牙バルデュバル・ケル】だが。」


 俺が校門に急行すると、カレルがあわてて俺を制止しようとした。

 …俺を面倒なことに巻き込みたくないのだろう。

 しかし、これ以上カレルに迷惑をかけるわけにも行かない。


「…おまえが?」

「そうだが?」


 …さらに驚いたような顔をする男。


「…俺の名前は、ハヤト・イリテだ。」

「…名前なんて聞いていない。…どういうことだ。魔王の話を持ち出して。」









 学園長の計らいで、応接間に入ることとなった。

 さすがに、あそこで話をするのは機密性に欠ける。


「…一緒に、魔王を倒してくれないか?」

「却下の意を示そう。…そもそも、なぜ魔王のことを知ったのか、なぜ魔王を倒しに行くのか聞いていない。」


 できるだけ、拒絶の意を示すように話を進める。

 …だって、いやだもん。

 俺はリンセルとアンセル、そしてレイカー家の為に魔王を討伐しにいくだけで、名誉とかは正直言っていらないのだ。

 しかし、たぶんだがこの男は違うだろう。わざわざ俺を呼び出すのは、絶対何かたくらみがある。


「…魔王のことを知ったのは、この世界に召喚された時。…その時に、世界の平和のために魔王を倒してほしいと言われたからだ。」


 召喚?

 カレルの方をみても、カレルは何がなんだか分からない様子だった。

 もちろん、学園長もだ。


「話に割り入ってすまない。召喚されたとはなしていたが、召喚した本人は誰だ?」

「…教えるなと言われた。」


 …まあ、信用できないわ。

 ふつう信用できると思う?


「…どうせ、魔王を倒したら褒美をくれてやろうとか言われたんだろうよ。」

「ぐっ。…しかし、君は褒美とかいらないのか?」


 …うぜぇ。

 お金目当てか、結局は。


「…いらないよ。俺が魔王を倒すと言っているのは、少なくとも金や名誉の為じゃない。」


 ハヤト・イリテは、一瞬頭にハテナマークを浮かべた。

 しかも、疑問はそこから消え去ることなく。


「どういうことだ?」

「自分の頭で考えろ。」


 そもそも、魔王討伐成功の名誉なんて、後で軍隊に雇われる原因になるじゃないか。

 俺は名誉はもらっても、それを行使することはないだろう。


「俺は勇者と認定された人だぞ!」

「そういう幼稚な人が、一番嫌いなんだよ! 出直してこい!」


 異名制度は、確かにその人の強さを表すものではある。

 俺が拒否していないのは、異名を持つことで自由が増えるからだ。


 俺は自由を求める。

 特に、この世界に入ってからは、その気持ちが強くなっているのだ。


「この世界には、決闘があるんだよな?」


 ハヤト・イリテは、俺に対して怒りの表情をとりながら呟いた。

 行使しようって言うのか、このバカは。

 決闘を俺と? …まあいいか。

 お灸を据えてやるにはちょうどいい。


「…いいだろう、その申し出、受け取ってやるよ。」









「とかいったけど、大丈夫なの?」

「自称勇者だぞあっちは。…しかも、世界平和なんて下らない。この世界に簡単に平和が存在するんだったら、とっくにこの世界は崩壊しているよ。」


 魔獣の問題もあるじゃないか。

 魔獣は、間違っても魔王が生み出したものではない。

 『魔王の獣』ではなく、『魔法の獣』なのだから。

 魔法だって、魔王が誕生するずっと前から存在していたことだと文献にもきちんと残っている。


 魔獣も、あの人が日本から召喚されたのだったら分かると思うが、ふつうの動物と一緒だ。


「俺は、あの男が気に入らないね。」

「…でも、それは分かるかも。」


 リンセルが、そっと俺の背中を撫でた。




「…相手をドラゴンだと思って叩きつぶすさ。…二人とも、力借りるぞ。」



「「了解っ!」」


ありがとうございます!

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