対談1
第2部発足!
最後まで読んでいただければ光栄です。
これからもよろしくお願いします!
グレイシア騒動をがんばって納めていると、ルークさんとスピネルさんが入ってきた。
硬直する俺たち。苦笑しているレイカー家夫妻。
…ついには、クインまでもが硬直しているのだから笑い者である。
「ついてきなさい。」
何事もなかったかのように、ルークさんは俺を手招きした。
相当のスルースキルを所有しているらしい。
羨ましい。
「ああ。陛下達も、リンセル達も来なさい。…全員に関係することだ。」
陛下も?
首を傾げていると、リンセルが俺の手を引っ張った。
行けと?
いや、ここは素直に行った方が良さそうだな。
情報がもらえるかもしれない。
「…わかりました。」
つれて行かれたのは、書斎のような、研究室のような不思議な空間だった。
本棚にあふれかえるように本が…と思えば。
片隅には、何かの実験装置が存在する。
しかし、家具はすべて銀か白で統一されていた。
機械的なイメージが見受けられる。
「すわりなさい。」
ルークさんが指をパチンとならすと、床からソファーが展開された。
…すげ。構造を今度教えて貰おう。
ソファーも白。
これだけみれば、近未来に行ったような雰囲気を味わえそうだ。
指示されたとおりに席に座る。
と、ルークさんは何かの装置に電源を入れた。
ホログラムを投射する装置。今は何も投射されていないが。
「…まずは、リンセルとアンセルに謝らなければならない。…今まで、間違った事実を17年間にわたって、教え続けていた。」
ルークさんとスピネルさんが頭を下げる。
…リンセルとアンセルは、ポカンとしたまま動こうとしなかった。
驚きで動けないのか。こりゃあ失礼。
「【儀式】は、『生け贄を選択する』ものではない。『魔王討伐の代表者を決める』ものだ。」
ででーん。
…いや、俺も知らなかった。
当たり前か。でも、そうだと知っていれば俺はこんなことをしなくてもよかったような…。
いや、彼女たちと関わった時点で、彼女たちとつきあった時点で俺が魔王を倒しに行くことは決定していたか。
まあいいや、結局倒しに行くんだし。
運命が決まっていたことには驚かざるを得なかったが。
「今回は、その儀式は行われない。…なぜなら、ラン君がそれに乱入する形となったから。…そして、ラン君自身が魔王討伐に向かうと言ってあるからだ。」
どうでもいいことなんだけど、魔王討伐っていつからなんだろうな。
この問題、俺とはあまり関係ないしさ。
「そして陛下、真実を黙ってくれているばかりか、ラン・ロキアスを保護してくれてありがとう。」
「いや、私もランに興味…、リンセル、そう睨むな。」
…クインに対して、ルークさんは敬語使わないんだな。
何か事情があるんだろうか。いや、このことは俺が首を突っ込んでいいはずがないだろう!
王族に一番近い貴族、レイカー家なんだからな!
「ミレイさん、君はいったい何者なんだ?」
ルークさんの興味はミレイに向かった。
…ミレイ、さあ、どうやって答える?
「…私は、転生者ですけど。」
「…つまりは、彼と同じか。」
「はい。」
表情をいっさいといってもいいほど変えないミレイ、正直に言うとかなり怖い。
なんで表情を変えないの?
…怖いよミレイさん。
「…さっきの魔法は何だ?」
「自作《福音系》魔法ですけど。…彼の意志で使用可能な『超絶能力開花』の鍵を、一つはずしただけです。もちろん、彼以外は解除できませんし、さらに言えば基本的に効力を発揮するのは一回です。」
…一回しか発動できないのに、あんな時に発動してもよかったのか?
「さらに、ランにはあの『超絶能力開花』を発動させるためのキーワードを決めて貰います。そうすることでそれがパスワードの機能を果たします。」
「つまり、正真正銘彼限定の能力となるわけか。」
ルークさんが感心したようにうなずいた。
…ここまで構成されているとなると、ミレイの努力には脱帽せざるを得ないな。
そして、ルークさんの関心は俺に向いた。
「…君に対しては、多くのことが知りたい。」
「そうでしょうね。」
はぁ、と息を吐き。
ルークさんは、俺の方を向いた。
「まず、あの柩剣はなんだ?」
「それは、《聖魔天獄柩》のことですか?」
頷かれる。
あれは…どういう風に説明すればいいのやら。
「《聖魔天獄柩》は、僕の最初に開発した自作魔法です。ウェイカーは種族上、《武器創造系》魔法しか使用できないはずでしたので、最初にそれを創りました。」
はずだったんだ。
はずだったのに、翼ができちゃったんだ。
…真っ黒い、あの不気味な翼が。
ありがとうございました!