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醒眼族の異世界学園覚醒譚  作者: 天御夜 釉
第1部、第1章  異世界に転生しても結局学園生活です。…普通のかどうかは怪しいけれど
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決着

 「『アッパー』、発動。」


 俺は、1年前、何故死んだかを思い出した。

 幼なじみの少女と喧嘩したのだ。

 泣かせてしまったのだ。

 そこのショックから、俺は謝る。

 逃げる。

 で、フラフラと歩いていたら、鉄骨に貫かれた。

 …全部、自業自得だから。


 だからこそ、この世界では、俺のせいで泣かせたくなかった。

 助け、求めてほしくなんてない。

 でも…。

 大切な人が、涙を流すくらいなら。

 …俺は…!















 戦う。
















「『アッパー』…だと?」


 リンを泣かせる?

 …散々姑息な手を使ったのに、まだそんなことをするのか?


 許さない。

 絶対に、許すわけには行かない…。

 《闇魔剣アビス・ブレード》を消去して、拳を握る。


「これでも食ら…え…?」


 ランレイが射出したチェンソーを。

 俺はそのまま掴む。



 …スーパーサ○ヤ人になった気分だ。

 そのまま握りつぶす。

 手すら傷つかない。

 チェンソーが原形をとどめなくなり、ランレイの顔がゆがむ。


「あ…ああ…。や、やめてくれ…。許して…!」


 絶望の喘ぎ。

 それが逆に俺の逆鱗に触れる。


「許せると思うか?」


 射出したチェンソーから垂れている糸…これ、ナ○レのあれだろ。

 それを見つけるなり、思い切り引っ張ってこちら側に寄せ。


 渾身の力込めて腹を殴りとばす。

 闘技場の端から端まで吹き飛ばし、チェンソーと彼の腕は完全に分断された。

 彼の最後の【腕輪】が、砕けて霧散する。


 …『アッパー』発動時は、おそらく殴りで人を殺せるんだな。

 …いや、さっきの剣戟けんげきが影響してるか。


 その間に、リンに近づく。


「……。」

「何も言わなくていい、待ってろ。」


 涙を拭ってやる。

 そして、猿ぐつわをはずし、手錠を引きちぎる。

 あっけなく千切れた。

 魔法封印の石って聞いたから、『アッパー』もかと思ったが、違うみたいだね!


「…何もされてないか?」

「うん…、ランっっっ…。」


 頭を撫でてやる。

 と、後ろで動く気配。


 相手はすでに腕輪がない。

 俺が勝っているんだが…。


 彼に向かって俺が跳躍するのと、

 ルルルルルの学園長が発言をするのが同時だった。


「…ラン・ロキアス君。…決闘は終わりました。」

「……。」


 俺は返事をする気も起きなかった。

 胃が煮えくり返る思いだった。


「そこのギリス・ランレイ君に関しては、理事会で然るべき対処をします。…ここは一旦、引いてください。…あと、あなたには期待できそうです。」


 …対処がしょうもないものだったら、そのときにまた殺せばいいかな。

 そんなことを思いながら、自分に対して唱える。

 たぶん、発動だから解除っていえば元に戻るはず。


「『アッパー』、解除。」


 そして俺は、気を失った。



















 目を開けると、自室の天井が見えた。

 …いや、俺どうしてたんだっけ。


 あ、『アッパー』を解除したら、ぶっ倒れたのか。

 …だめだな、もっと訓練しないと。


「…ラン? 起きたの?」


 心配してくれているような、そんな声が聞こえる。

 思えば、手は包まれているような感触がした。


「ラン君? …私たちのこと、分かる?」


 幼げなかわいい声だ。

 首を右の方に向けると、リン、アンセル、リンセル…ウスギリが勢ぞろいしていた。


「…多分。」

「そっか…よかった。」


 げ、力が入らない。


「…かっこ良かったよ。……くんに似てた。」


 …誰に似てたんですか、俺。

 しかも、アンセルがかっこいいとか言うな。

 無表情だから感情が分からんわ。


「おねーちゃん、それは言っても意味ないよ。」

「…ごめん。」


 ウスギリは、俺の方を笑顔で見つめていた。

 気になったことを、おそるおそる聞いてみる。


「…アイラって、誰?」

「…ああ…、アイラは俺の幼なじみだ。…もう、死んだ。」


 一気に部屋から言葉が消えた。

 ウスギリは、悲しそうに言葉を続ける。

 彼の顔は、歪んでいた。

 今にも泣き出しそうだった。


「美しくて、可愛いサミュリだった。 俺のことをずっと気にかけてくれて、とても献身的だった。でも、それは俺が11歳のときまでだった。」


 彼の手は、堅く握られている。


「彼女の武器は、目だった。…普段は黒いけど、武器化するときは赤く変わって相手がどうやって動くのか、俺に教えてくれた。でも、その能力を欲しがったランレイに弱点を付け入られて、誘拐された。」


 その間、リンセルは涙をにじませながら、俺の額に乗っているタオルを交換する。

 …妙に体が熱いと思ったら、熱か。

 それより…、あの時殺しておけば良かったな。


「警察が、ランレイの家から遠く離れた小屋でアイラを見つけたとき、すでにアイラは無惨な姿で捨てられていた。目も当てられなかった。病院の魔術師が癒しの魔法をかけても手遅れで、彼女は俺の目の前で死んだ。…最後に『ごめんね、大好きだったよ』っていう言葉を残して。結局、ランレイは『力』を手に入れられなかったし、結局…!」


 抵抗したんだろうな、とウスギリは呟く。


「俺は、遺族からそのあとに、彼女が俺のことを大切に思ってくれていたことを聞いた。で、形見は彼女のパーツと…」


 俺に対し、ウスギリは一本のネジを見せた。

 少し特徴的なネジだ。…ウスギリはこれを自分のブレスレットに組み込んでいるらしい。


「このペンダントだ。」


 その中身は、金髪の少女の写真だった。

 機械的な印象はいっさいなく、本当に可愛い。

 サミュリには、見えなかった。


「だから、本当はあのとき、…乱入しようかと思ったけど。…そんな必要はなかったな。…ありがとう。」


 俺は、何もいえなかった。

 …重すぎる。

 …と、アンセルが口を開く。


「…おかん、ご飯。」

「ちょっとは空気読めよ!」


 しかし、怒っている様子はなかった。

 ただ、優しい目でアンセルを見、立ち上がる。


「今日は寿司にするぞ。」


 うお、この世界に来て食えるとは。

 ウスギリ…、すごいなお前。



 あと、気を失っていたのが4時間くらいでよかったです。

次回から第2章です。


ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。

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