休憩2 -意識連結-
どうぞお読みください!
…レイカー家の周りは、ただただ…、静かだった。
美しい。 すばらしい。
自然が、あふれている。
目の前に広がるは、銀世界。
「来年も、ここでこうやってリンセルたちとみれるかな。」
「…みるつもりなの? 私たちと?」
「うん。」
うなずく、するとリンセルは不思議そうな顔をして…すぐに顔色を戻した。
……俺に対して満面の笑顔で。
「…ラン君。お父さんのデータ、教えるね。」
二人から分厚い書類を渡された。
アンセルとリンセルが必死になって集めたのだろう。
小説の設定集の如く、事細かにルークさんのスペックが記されていた。
多用魔法、今までの逸話から事実、戦闘パターン。
中には「なぜ知っている!?」と驚くようなことまで記されている。
二人の頭をなでる。
すなおに、ただ素直に、感謝するしかなかった。
「ありがとう。…でもいいのか? 実の父親だろう?」
「…ラン君に勝ってほしいですし、私は…生きたいです。」
アンセルがつぶやいた。
生きたい。
この一言が、彼女の、彼女たちの本心だろう。
「でも、このまま【儀式】が始まったら、私はリンセルと戦わないといけません。…自分の双子の妹を殺すようなものですから、私は嫌です。」
その言葉が、いやおうなしにおれの心に響く。
その感情は、俺がミレイと戦うことになった時と同じだろうか。
俺はミレイを妹のように感じていたせいか、彼女に対して少し甘いところもあるのかもしれない。
でも、彼女は俺についてきてくれた。
俺の後を追うように、自殺までした。
……俺は、彼女の気持ちに答えていけるのだろうか。
今の、ルークさんとの決闘よりも正直言うと不安である。
ミレイを失いたくない、傷つけたくない。
でも。
「…絶対に、そんなことはさせない。」
俺の内側から湧き上がる感情は、いったい何。
俺の体は今、何を原動力にして動いている?
自分が怖い。
でも、自分に打ち克つ。
「そっか。」
「……絶対に、もうリンセルたちを泣かせたくないんだ。」
リンセル、アンセル、クリーゼ、ミレイ。
全員を抱え込めるかといわれると、たぶん無理じゃなかろうか。
しかし、俺にはこの手段しか残っていないのだ。
自分に勝たないと。
克たないと。
「ラン君なら大丈夫ですよ。…私は、これでも一年間ラン君を見てきたんですよ?」
「……うん、ありがとう。」
ありがとう。
こんな俺を応援してくれて。
こんな俺の言葉を信じてくれて。
「【聖魔の牙】。貴方は伝統に牙を穿つべき人なのです。今までの私たちの常識を、伝統を、……変えてください。」
アンセルとリンセルが、そっと俺の両手に片方ずつ。
ラウンジの上で、虹色の光が螺旋の柱となる。
その柱は、天に直結し、俺にさらなる力を与える。
【希望】。
不安なんて、もう吹き飛んだ。
俺は、強く彼女たちの手を握りこむ。
光が一層増した。
周りの属性をも吸い込み、その柱は太くなってゆく。
「ラン・ロキアスに、神々の祝福を。」
「ラン・ロキアスに、神々の加護を。」
リンセルとアンセルがつぶやく。
何かの儀式だろうか。
でも、俺の力が、徐々に強まっていくのがわかる。
「…ふぅ。」
「今のは、なんだったんだ?」
光の柱が消えて、リンセルが息をつく。
「ん、リンクを真面目にしたの。」
…そりゃあそうか、この前みたいに一瞬触れ合っただけで、ほかの属性の魔法が簡単に使えるはずなんてないんだな。
「頑張って。……もっと、強くなって。」
「分かった。」
強くなれるよ。
背負うべきものがあるんだから、俺には。
次回はとびっきり甘くなる予定です。
ご容赦ください…っ。