関門
どうぞお読みください!
------------------【リンセル視点】
今日が【あの日】。
ラン君、今どこにいるのかなと考えながら私は自分の部屋で呆けていた。
…ラン君に今すぐ会いたいな…って思ったり。
妄想したり。
…ラン君のそばにいることが、やっぱり幸せだったから。
「…すこしいいか、リンセル。」
「…お父さん…?」
ドアがノックされ、お父さんのルーク・レイカーが顔をのぞかせる。
お父さんが部屋を訪ねてくるなんていったい何年ぶり?
…小さい頃が懐かしいな。小さい頃はお父さんとお姉ちゃんで遊びに行ったのに。
「…いいよ。」
「そうか。」
お父さん、嫌いじゃないんだけどね。
でも、愛情は持っているんだろうけど、素っ気ないっていうか。
…機械的に物事をこなす性格だから、あまり分からないっていうか。
「…まずは、明日の予定についてだ。夜の7時から交流の機会が与えられる。」
「…それ、結婚の?」
「そうだ。…今の間に有力候補をあげておこう。」
政略結婚の場。
それは私にとって、…将来の道が定まりつつある私の中では一番苦しいもの。
聞いただけで悪寒が走りそうな決まりきった常套句。
見ただけで嫌悪感がわく、太った豚。
参加者のリストをお父さんから受け取る。
あれれ?
「…あれ? ラン君の名前も入ってる。」
「ああ、最善はそれだな。…カレルの名前も入っている。」
ロキアスは遅れて合図とともに門衛を突破させる、とお父さんは言っていた。家のそこかしこに設置されたカメラで中継をとるらしい……。
これには二つの意味があるんだと思う…。
一つは、門衛突破可能という実力を見せて、儀式から目を反らす。
もう一つは、その実力を私たちを狙っている豚に突きつける。
「…ラン君が、突破したらいいの?」
「それが第1の関門。第2の関門はリンセルたちの取り合いの決闘で勝ち続けること。第3は私と戦うことだ。」
第1の関門が突破できれば、第2も自ずと出きると思うけど。
…問題はお父さんだよね。
「お父さん、手加減はしないんでしょう?」
「しないが? …【聖魔の牙】も本気だろう?」
「でも。」
2つも関門を突破したラン君は、すでに体力も魔力も限界なはず。
「リンセル、彼女が彼氏のことを信じないでどうする。」
「…でも…、ラン君…。」
心配だよ…?
「この代は、【儀式】をする気は全く持ってない。…【聖魔の牙】がもし私の条件を満たせなかった場合、次の候補は決まっている。」
「…ラン君は、勝つよ。」
ラン君は、あきらめるという言葉を知らないから。
…そこも大好きなんだけどね。
「そうだといいんだがな。」
「お父さん…、私の好み分かってる?」
「分かっているともさ。」
豚はいやなんだろう? と聞かれ、頷く。
…貴族のことを豚って呼べるのも、レイカー家だけ。
王族に一番近い貴族。レイカー家は何代にもわたって、その称号を掴みとっていた。
だからこそ、こう言うときに面倒なんだけどね…。
「明日は陛下と第二王女も来られるぞ?」
「クレインクイン様とグレイシア様?」
「ああ。」
そこまでして、注目されているの?
それは私に? それともラン君に?
「とはいっても、昨日決まったばかりなんだがな。」
私は、素直に喜べなかった。
今日はあとでもう1話投稿します!