ホール・イーザー・デルタ『∀∨Δ』
初めまして。時風獅と申します。
つたない人間ではございますが、是非これから植物のようにゆっくりと成長していく私と、その作品を見ていただけたらなと思います。
記念すべき第一作はホール・イーザー・デルタ『∀∨Δ』というSFのような作品になります。
以上挨拶終了。
:前書き
生きてゆくうえであらゆる事を選択をすることは当たり前。
だからこそ、意識しなくとも選択していることもある。
のちに起こる結果、それらはいつ選択したことの結果なのか。
主人公は、謎の存在「nano improve system」(ナノインプルーヴシステム)にホール・イーザー・デルタ『∀∨Δ』という言葉をとうし、その倫理を諭す。
五章:ne_xt
一節:疑問
からっぽだな、おともなくながれていける、
冷たい、誰だ、今どうすれば、俺は今、何処に、
だいじょうぶ、ごめんね、---------
まぶたに光が差しこみ、彼は目を覚ました。
頬に砂がついていて、長い時間力尽きていたようだった。
全身に痛みやだるさがあるように苦しむ顔をしている、だが、無理に体を動かそうとしている。
意識がはっきりしていない状態で体を起こすよういに、ぐらつきながら立ち上がる。
そして、目の前の状況に喉を切り裂く大声で叫びだした。
『どこだここわーーーー?!』
人間あるいは生物、物質、それら存在は意識があるとして、当たり前に『選択』『責任』に苛まれることだろう。
星、国、文化、人、数えきれない視点に,数えきれない選択を、どう決断するか、どう結果としてなるのか。
これは2347年から2461年の今に至る記憶とこれからの話ーーーーーー
語り出しであるこの星は、おのれの悪意と善意を見失うような、混沌が入り混じる事変の星、通称『совместный планета』(サヴミェースヌイ プラニェータ)
気温は良好、湿度は毎日40%を下回り、火山灰のような砂が静かに吹き散る。
至る所に渓谷があり、それはどこまでも続いていて果てが見えない。
だが、こんな過酷な環境下のなかでも、ひっそりとたたずむ『prosperity come closer』(プロスペリティ カム クローザー)と言うガソリンスタンド。
給油スペース、飲食店、一軒家にもできそうなぐらい大きい倉庫があり充実している。そう、ここが「これからの話」の始まり。
店からは何気ない会話が聞こえる。若い女性と高齢のお爺さんの声だ。
穏やかで少し豊満な若い女性「アン・フェルニー」はお盆に乗せていたお冷をカウンターに置きお盆を胸元に持ち直し、話し始めた。
『最近「灰雨」(ばいう)が少なくなってきてよかったですねボリスさん。まともに来店されていなかったので心配していましたよ』
お冷を一口飲み年相応の味のある雰囲気を醸し出そうとしている「ボリス・アンドレイ」だが、こてこてしく、胡散臭い。
『あぁ、昔の仲間と会っていたもので『灰雨』もちょうどよかった、というと縁起良くはないがこれてよかった』
『お歳なのですから、あまり忙しいのであれば体のことを第一に考えてください、無理されてはダメですよ、』
『確かにそうだが、ここに来ることは、、なんだかな使命みたいなものだからな、』
『そんな大げさな、フフ、』
『ああそれと、あの、受信機、、あぁ~ラジオか!壊れちまったから、ほら、あいつ、最近この店に入ったやつに渡して、直してくんねえか?エンジニアだって聞いたからな』
そう言ってボリスが古びたラジオをカウンターに置くと、フェルニーが店の外の工具がちりばめている物陰に、もごもご蠢く物体に向けて声を大きくして言い放った。
『なぎちゃ~ん、いつもの話してるボリスおじいちゃんがラジオ直してほしいって~』
蠢く物体は人間の少年だった。フェルニーの声に気づくなり大声で返事を返す。
『わかった!やっておくからおいておいて!』
外にいたのは「福島 永義修」というスマイルマークをも要した仮面をかぶっている青年。体つきはやせていて、身長は一見小さく見える。
永義修の大きく手を振り元気よく飛び跳ねている姿を見て、フェルニーは微笑みを浮かべていた。
その様子にボリスは暖かな顔をする。
『あの小童、よく働くな~、俺の若い時代にはよくいたんだけど、今はああいうやつめっぽう減ってきてるからな、珍しくいい子なこった』
『はい、とても助かってます!ですが、年もあるしきっと何か深い事情もあるだろうから、もう少し甘えてもいいと思うんですけどね』
『ガハハ!フェルニーちゃんは別嬪さんだから甘えるんが恥ずかしんじゃねえの?』
『フフ、ボリスさんったら』
ボリスはフェルニーといっしょにガラス張りの店のカウンターから遠目に、この星では楽しくも平凡に近い会話をしながら作業している永義修を見る。
そんな二人に見られていても永義修は懸命に作業を続ける。返事をしたきり二人に顔を向けることもない。
『最近拾った子なんだよな、』
ボリスがそう言うと、すこし苦い顔をしてアンが言う。
『ちょうど一週間前に大都市デリオに食品を買いに行こうと思って「Начало дорога」(ナチャラドローゴ)の方向から近道して向かっていたら、その近くで「Tardigrade」(タルディグラード)の群れに囲まれて倒れていたんです』
『あの中型緩歩虫にか?』
『はい、護身用で電灯を持っていたので大丈夫でしたが、』
『高温圧縮電灯か、今度もう少しまともな護身具を持ってくる。それだけじゃ心もとないだろうに、』
フェルニーは『ありがとうございます』というが、その後、出来事への恐怖なのか難しい顔をして沈黙していた。
『しかし、今の様子を見ると大きなケガだったりをしてはいなさそうでよかったが、なぜ「ナチャラドーゴ」ところにいたんだろうな、』
ボリスは店の天井を仰ぎ考えはじめた。「ナチャラドローゴ」は昔、他の惑星が戦争によりこの星「サヴミェースヌイ プラニェータ」へ放たれた、反物質粒子砲が着弾した地であり、その周囲では放射線など、危険が多々あるといわれている。
許可のある者のみ通行が許可されていて、周囲の物体はセンサーで監視しされている。人も動物も動くものはすべて感知して接近を拒まれるはず。
だからこそ「ナチャラドローゴ」に永義修がいたことがわからなかった。
『フェルニーちゃんその時の「永義修」の服装だったり身に着けているものに、異変を感じたことはないか、詳しく覚えていたらおしえてくれないか?』
『あの時の服装は、、なんだか見たこともない容姿だったですけど、正装のようなととのったものを着ていたような、すみません。ちょうど一週間前、まだなぎちゃんが寝込んでいた時、軍人の方々があの子を探しに来てまして。少し怪しい方々でしたのであの子のことは話さず帰っていただこうとしましたが、店を強制的に捜査されてしまって、幸いなぎちゃんをかくまうことはできましたが、なぎちゃんの衣服と持ち物を持っていかれてしまいました。』
ボリスは苦い顔をしながら腕を組んだり天井を仰いだりして考えたが、結局はわからずじまいで、最後には。
『詮索しすぎるとなんだかいたたまれない気持ちまでてくるからな、本人に聞くのが一番か、』
と、一番手っ取り早い決断をした。
そうこう頭をこねくり回し終えると、永義修が作業を終えて店に入ってきた。
『いや~外は暑いっすね~仮面の色、落ちたりしてないですか?』
陽気な口調で永義修は店のカウンターまで歩いてくる。
『お疲れ様、色は落ちてないわよいつも以上にニッコリに見えるけど。はいお冷』
『にっひ、機械いじいじすんの楽しくって連動しちまってるんですよ』
永義修はカウンターの椅子に座り、フェルニーへ感謝を伝え乾いたのどを一気に潤わすようにお冷を飲み干す。
『お疲れさん、話は聞いてると思う、私は「ボリス・アンドレイ」よろしくな、それと、仮面付けてるなんて変わったやつだな』
ボリスは永義修のほうへ向き軽く自己紹介をして、握手を求めた。永義修はお冷を飲み干すなり、握手に答え自分も自己紹介をした。
『フェルニーさんがいつも言ってるボリス爺さんですか!自分「福島 永義修」って言います。』
『ちなみに仮面は趣味です。』
『機械いじりをしてるし、仮面かぶってたからてっきり気難しいやつかもと思ったよ、あくまで俺の経験上の偏見ってやつだけどな』
『そんな風に思ってたんですか!僕はボリスさんの話をフェルニーさんから聞いて優しい人だと思ったのに、、ひどいっす、、』
永義修はノリよく返しをした。ボリスはすかさず『悪かったな』といって笑いだす。
ひとしきり笑ったところで、ボリスは呼吸を整え永義修に問いただした。
『そうだ、外で何をやってたんだ?見たところ装甲車らしいが、、』
その話を聞きながら永義修は、手持ち無沙汰手な手ををふさぐかのようにラジオを手に取り、もくもくと作業しながら話し始めた。
『さっきやってたのは、、この前なんか、ごつくて、たっぱがあって、優しくて、声がでかい人が「装甲車が壊れたから直してくれ!」って言ってたからそれを受けて今日ようやっと終わった感じっす』
『冗談のつもりだったんだが、本当に装甲車なのか!?どこでそんな腕をその年で身に着けた?!』
『自分結構機械得意なんで、でも見たことない壊れ方してたからちょっとてこずりましたけどね。それに修行みたいなもですし、拾っていただいたこともあるので、その分きっちり働いて返していかないと』
フェルニーが、永義修のそばにある空のコップに水を注いだ後、朗らかな目で優しく話しかけた。
『なぎちゃん、働いてくれるのは嬉しいけど、無理はしなくていいし、何かお願い事とかあればちゃんと話してね、』
『そんなに至れり尽くせりされちゃあこっちも罪悪感が、、』
『でも、あなた17でしょ、もう少しあたしにも何か出来たら、』
二人が相互承認している中、ボリスはその空気に割り込むように口を開いた。
『フェルニーちゃんは君のことを、どこからか来た客人だけでなく大切にも思ってくれてるんだ。少しは肩の力を抜けよ』
先ほどまであっけらかんな態度であった永義修は、何やらもの言いたげではあった。
そして、それを吐き捨てるかのように言葉を返した。
『そうっすよね、ありがとうございます、、』
あんなにも元気で張り切っていた永義修が、寂しそうに手元のラジオに意識をそらす。
ボリスは悪い気を持ちながらも、話の内容をそらすべくあの事を聞く。
『そういえば、フェルニーちゃんから聞いたけど、お前さんなぜ「ナチャラドーゴ」のところにいたんだ?』
いきなり踏み込んだ問いにフェルニーは物見高さな顔を浮かべながら永義修に顔を向けた。
すると、先ほどまでうつむいていた永義修が、驚いたかのように姿勢を正し、大きな声で口を開ける。
『あれ、話してませんでしたっけ?!』
永義修はボリスとフェルニーに顔を向けた。
『はぁ!?』
二人は仰天した顔で、目をかっぴらいた。
『いや~すっかり話してるもんかと思ってました。』
永義修の横顔から少し流れている汗が本当に話していたように思っていたことを物語っている。頭をかいてひと息整えた永義修はあっという間に治ったラジオを電源をつけてカウンターに置いた。
そして、あの場所にいたことを話そうとし『いやじつは、』と、言いかけたその時。
店の外から耳を揺るがすほどの男の声が聞こえた。
『おい!金と食料を渡せ!でなきゃわかるよな!』
店の外から爆発音と物が崩れ落ちる音が鳴り響いた。店の中にいる三人が外を見ると、給油スペースは無茶苦茶にされ、永義修がせっかく直した装甲車も落ちてきた屋根にうもれてしまっていた。
永義修は驚き思わず立ち上がる。
『なんなんだあいつら!』
沸々と湧き上がる怒りにこぶしを握り締め、永義修は足を一歩前に踏み出した。
だがそれ以上前に足は動かなかった。
ボリスが永義修の震える体を見て『落ち着きなさい』と言いう。
頭と心の整理がつかない様子の永義修。
だが、このような事態はこの星では日常のような風景、技術の発展はあっても、それを求む者に届くかどうかはわからない。
だからこそ私たちは、生きていることの認知を、物心のついたころから、争い、盗み、支配しようとするしかなかった。
対価を払い物を買う、平和のために調和を求める、それらは非常識に近い。
それがこの星である。
だが皆がその環境に恐怖しているわけではない。
『なぎちゃん、カウンターの裏に隠れて』
フェルニーにいわれてすぐさま隠れた永義修につられるよう、ボリスもカウンターの裏に隠れる。
『あの野郎ども、どっかでみたことあるな、』
『そういわれると、たしかにわたしも、』
冷静さを損なわず、盗賊に気にかけているボリスとフェルニー、その時、さっき電源をつけたラジオからニュースが流れる。
「、、、最近大都市デリオを騒がせる盗賊グループ「BOP」がまたもや大事件を、、」
『そうだ!こいつらだ!』
『そんな、、こんな人たちがなんでうちの店に、』
二人の会話で危機感をあらわにする永義修。
ボリスは現在の状況をを察し、カウンターを飛び越え両手を挙げた。そのあと、永義修とフェルニーにしか聞こえないような声で、こう言い放つ。
『絶対に戦おうとするなよ、』
そう言うとボリスは盗賊たちのもとへと歩き始める。
『じいさ、、!』
永義修が叫ぼうとした口をすぐさまフェルニーは塞ぐ、その顔は怒りとやるせない表情まぜたようだった。
そのままフェルニーは永義修を抱え込みうずくまる。
ボリスが店の入り口手前付近につくと、男性二人女の子一人の三人組が殺気立っていた。
その中で姿勢が悪く、病弱そうな男が話しかけてくる。
『あんまり、下手な、ことすんじゃねえぞ、俺に歯向かうと「痛い目」じゃなく「苦しい目」にあうことになるからな、、』
その言葉にニヤつきながら、片方の傷だらけで気高そうな男が話す。
『俺はな!「苦しい目」ではなく!「痛い目」に合わせてやるからな!覚悟してろよ!』
女の子は二人の後ろでその言葉に嫌気を模した顔をし、沈黙していた。
『おい若造ども、こんなことしてもいずれ自滅していくだけだぞ』
ボリスは重みのある空気をもろともせず口を出す。その姿を見た男二人はボリスのもとへにじり寄り、顔を下からのぞき込んだ。そして息を合わせてしゃべりだす。
『それが、お前の「正しい」生き方ってんなら!この星から出ていきな、この星はな!皆が争い、力ないものが倒れていく星なんだよ!』
ボリスの顔をまじまじと見た後、病弱そうな男が勢いよくボリスの首を掴んだ。
『お前みたいな、老害が、自分たちの生きてきた時代を、押し付けてんじゃ、ねえぞ、、』
ボリスが顔をしかめた、次の瞬間。首を掴んでいる腕を左手で抑え込み、足の内側を蹴り体制を崩させ、右手で地面に抑え込んだ。
『な!?、てめぇ、、』
懐から左手で拳銃を取り出しボリスは傷だらけの男に向けた。
『若造ども無駄なことはやめるんだな』
冷汗をかいた傷だらけの男は手を挙げ、驚いた顔をしてボリスに問いただした。
『!?、、お前、へっへへへ、お前!元軍人だな!』
『それがどうした、』
『拳銃なんざ!元軍人!いや、この星を混乱の蔓延る事変の星に仕立てたくそ組織じゃなきゃ入手できない代物だよな!』
その言葉にボリスは悟るような顔をする。
押さえつけられている病弱そうな男は状況に屈することなく笑いながら話す。
『元軍人が、いるなんて、知らなかったぜ、すげーテンション上がるな。おまけにこの左手、義手だろ、随分とお偉いさんだったんだな、』
『、、お前らどこまで知ってる、』
『それより、気を付けたほうが、いいぜ、その首、、』
ボリスの体に、その病弱そうな男言葉が響き渡った瞬間、首全体が黒紫に変色した。
『ゴハァ!、、』
両手を首へ当ててしまい拳銃を落としてしまい、制圧した男までも放してしまった。
『いっひひひ、、まさか、何の意図もなく、掴んだとでも思ってたのか?』
苦しみもがくボリスに、傷だらけの男が後ろから殴りとばす。
『時代にはついていけてねぇみてえだな!』
『お前ら、、』
緊迫感の漂う店内、男二人がボリスに警戒しながらにじり寄り、傷だらけの男が先に勝ち誇る姿勢で自己紹介を始めた。
『へっへへへ、冥途の見上げに教えてやるよ!俺の名前は!』
『宇宙盗賊BOP、劇痛の道化師、ディディア・ダヴィット!』
同じく姿勢の悪い男もダヴィットの隣で自己紹介をした。
『いっひひひ、そして俺の名は、、』
『病魔の魔術師アレクシ・リヒター』
そしてダヴィットとリヒターは息を合わせてもう一人の紹介をした。
『さらに!あそこにいる、凛とした少女こそ!俺たちの、愛する妹!、、』
『詩障の色事師、サプナ・クレマンス!、』
そういう二人が店の入り口、利口そうに立ち尽くす少女クレマンスに、おかしなポーズをとりながら敬意を表すかのように両手の平で指す。
濃い内容としぐさに圧倒されボリスは沈黙をせざる負えなかった。
『なんか言えよ!、』
ダヴィットとリヒターの突っ込みが入る。
『すまんこういう自己紹介の後は何を言って良いのかわからなくてな、、』
『まあいい!ぶっ飛ばしてやる!』
ダヴィットは腰にぶら下げている筒状の何かをを上に投げ、力いっぱいにその筒を殴りつけた。
筒は一瞬で大爆破を起こし、ボリスを店の壁ごと吹き飛ばした。
『へっへへへ!無様に倒れこんで!俺のパフォーマンスがそんなにお気に召したか!』
仰向けに倒れこんでいたボリスは、左手の義手を自身にかざし燃えるような光をともす。
『さすがに体は劣れたか、そんであいつら「機戒」(きかい)をもってるな、俺も出し惜しみはやめだ』
するとボリスの体は急激にパンプアップし、すぐさま戦闘体制をとる。
だが気づかぬうちに足元が沼のようになり、身動きができなくなってしまっていた。
『くそ!』
切羽詰まった状況に見える戦場を隠れながら見ているフェルニーと永義修。
フェルニーは機を見てどこで逃げるべきかの算段を企てていた。
『あともう少しあの盗賊達が離れたら、私の車まで逃げるわよ』
永義修は「逃げる」という言葉に心の靄を感じるようだった。
『フェルニーさん、ボリス爺さんはどうするの?』
『ボリスさんは元軍人よ、それも凄腕の方だったらしいのだからきっと大丈夫』
『でも、あの状況じゃあもう、』
フェルニーは厳しい顔をした。そして永義修の両肩を強くつかむ。
『厳しいことを言うけど、あなたに何ができるの?まだ子供よ、それに、ボリスさんが私たちをここにおいて一人であの盗賊達を相手してるってことは、命を張って守ってくれてるってことにもなるの、その思いを無駄にしてはダメ』
そんなことはわかっていると思いながらも自分の無力さに何も言えない永義修だった。
気づけば、先の爆発であいた店の壁から盗賊グループが外へでていった。
『なぎちゃん今のうちに行くわよ』
永義修は心の中で、なぜ自分の心は自分の持つ力とは比例せず、意志を曲げることができないのだろう。見殺しにすることはないかもしれない、でもその気持ちに甘えてもしこの先一生後悔することが起きたら。
捩じり絡まる思いが、事実が、永義修という人間へあまねく。
その時。
[Error、∀∨Δを解く式を再入力してください]
『へぇ?、』
[回答できなければ、機戒を再度シャットダウンさせます]
静かに慌てふためく永義修だが、この出来事への意味を徐々に理解して拳を握り締める。
『お、俺は、、、力になりたい』
[承認しました。回答及び、心身のデータを参照、∀∨Δを解く式を脳内に送信しました。了承されるのでしたら再度式の回答を、]
体中からバチバチと稲妻が走り、永義修はゆっくりと立ち上がった。
『なんでもいい、できるのであれば、やってやる!ぶっ飛ばしてやる!』
『ちょっと何をする気なの!』
フェルニーに止められそうでも永義修は大声で叫び目の前の空に手をかざした。
『∀∨Δ≡∃』(ホールイーザーデルタコングルエントイグジスト)
すると手のひらから稲光のように素早く何かをかたどった構造色の光が現れた。
幾多にも連なり事細かにその姿を鮮明にあらわしていく、銀色の液体がその光を纏うように流れ始め、やがてそれは両手でやっと持てるほどの大きな金槌へと形になっていった。
[これ以上のサポートはシステム上不可能です。機能の内容を脳に送信しましたので、これからはご自身でのシステムの改善を願います。]
バチバチと鳴り響く金槌を手に取り驚くフェルニーに顔を向ける永義修。
『なぎちゃん、それ、もしかして、あなたも持ってるの?』
『ごめんなさい』
永義修はフェルニーに謝った後金槌を構え壊された店の壁へと走る、そして光指す壁の穴に立ち止まり、震える腕と足に力を込めて言い放った。
『そこまでだお前ら!』
盗賊グループが永義修へ視線を移し驚愕したように思えたが、すぐに呆れたリヒターが言った。
『正義気取りも、時と場合をかんがえたほうが、いいぞ』
リヒターが手を地に置くと永義修は走り出し、体から絞り出すかのような叫び声あげながら金槌を振りかざした。
瞬く間に目の前の空気が魚眼のように曲線を描いていく。一瞬にして暴風が盗賊グループへ一直線に飛んで行き、爆音の衝撃音とともに二人を吹き飛ばした。
沼のおかげで永義修の暴風から耐えることのできたボリス、『あの小童!』と驚きをあらわにしていだが、すぐさま神妙な面持ちで思考をめぐらせ、永義修を大声で呼んだ。
『永義修!こっちに来てこの沼を吹き飛ばしてくれ!』
永義修は、目の前の光景に唖然としていたが、ボリスの言葉で我に返った。
持ちなれない大きな金槌を肩に背負い、せっせと走りボリスのハマった沼に着く。あわただしく金槌を振り上げるも、先ほどの惨状を見てためらってしまった。
『大丈夫だ!安心してそのまま叩け!』
『!?、、、どうなっても生きててくださいね!』
疑念とともに勢いよく振りかざした金槌は沼を見事に吹き飛ばした、が、同時にボリスまでも天高らかに吹き飛んだ。ボリスは予想外の威力に驚き奇声をあげる。
そして背中から勢いよく落ちるボリス。案の定腰を痛め、苦しみ声をあげながら這い上がる。申し訳なさそうにしている永義修に苦しく震える声で話しかけた。
『いいか、俺の話をよく聞けよ。お前の持ているその金槌、それは「nano improve system」(ナノインプルーヴシステム)という、ほかにも呼び名はあるが簡略化して「機戒」と呼びその能力を「機能」と呼ぶ。さっきお前がやったあいつらを吹き飛ばしたのも、お前のその金槌の機能だ、多分だが吹き飛ばしたり、ぶっ飛ばしたりするものだと思う。』
ボリスは一気にエビぞりに腰を曲げ痛々しい音を鳴らし、姿勢を直した。
『今はこれぐらいしか話せない、それに戦場に出たのであればもう戦うしかない、俺の指示だけを聞いてろよ。』
『でもボリス爺さん、腰、、』
『あぁ、これは気にするな俺の機能でこんなんすぐに治る!ちなみにもう俺の機戒の機能を説明する時間はなさそうだから省く、奴らが来てるかなら集中しろよ。いつでも戦えるように構えておけ!』
『でぇ!?えぇ、はい!』
ボリスは、盗賊達が吹き飛ばされた方向を見た。するとリヒターが消えていることに気づいた。
永義修の辺りを見渡しリヒターのいないことを確認したボリスは、両腕をパンプアップさせ地面をえぐり大岩を担ぐ、それを遠くから走ってくるダヴィットに投げつけた。
ダヴィットは永義修と同じように手を空に掲げ、叫んだ。
『∀∨Δ∣x∣⊥』(ホールイーザーデルタアブソリュートバリューボトム)
構造色の稲光とともに手榴弾を大量に形成し、自分に飛んできた大岩へ投げつけた。大岩は盛大に爆散し、粉々になった。
『そんなんが当たるかよ!』
ボリスが永義修のもとへ走り、『永義修逃げろ!』と逃げるように誘導した。だがその瞬間、地面からリヒターが現れボリスに襲いかかり足止めをされてしまった。そのすきを見てダヴィットは残りの手榴弾を永義修へ投げる。
戸惑う永義修は、構えていた金槌をがむしゃらに振り、飛んできた複数の手榴弾をダヴィット、リヒター、ボリスのもとに飛ばし返した。三人は奇声を上げて逃げ惑う。
『うわぁーー!』
三人はいっせいに手榴弾とは逆の方向に飛び込み地面へ伏せた。だが、手榴弾は爆発せず静寂が皆を固まらせる。そして限界を迎えたのかダヴィットは怒りをあらわにした。
『てめえ!なんか調子狂うやつだな!遊んでんのか!今まではそこそこあしらうつもりだったけどよぉ!もう切れたぜ!』
地団駄を踏み鳴らして暴走したかのように永義修へ走りだした。伏せていたボリスは颯爽とたちあがり食い止めようとするが、視界の外から銃声が響き、その弾丸はボリスの胸を貫いた。
『やっぱ、老いぼれか、さっき落としたの、忘れてたのか?』
先の室内戦でボリスが落とした銃を、リヒターが回収していた。その銃を構えながら倒れたボリスににじり寄り、足を乗せ語りだした。
『魔法は、今では説明のつかない、力を表現されるために、使われる言葉、それを希望ととらえる者は多いい、だが本来は、迫害をうけ、その現実を隠すように腐り、語り継がれてきた物だ。俺の人生はそんなもんだった。だから理不尽をあんたにも、同じ苦しみでなくとも、味わうんだな、あんたなりの、苦しみを、目の前で、助けるはずだった者を、痛めつけられる、苦しみをな、』
ダヴィットは助走のついた拳を永義修の顔に思い切り殴りつけた。さらに倒れた永義修に容赦なくまたがり殴り続ける。
『お前が出しゃばんなきゃ、あの老いぼれの死には価値があったかもな!』
永義修はやみくもに抵抗するも、何度も何度も腹部や顔を殴られた。それを見ていたボリスは、覚悟を決めたような顔をし体全身に稲光をだした。が、次の瞬間ボリスは表情を驚かせた。
『やめなさい!』
フェルニーがダヴィットに向け高温圧縮電灯を放ったのだ。
『どぁ!あっちぃ!』
よろめくダヴィットに永義修は、ずっと握りしめていた金槌をありったけの力で振りかざしダヴィットの顔に直撃させた。まるで光と思えるぐらいの速度で吹き飛び。店の倉庫に激突した。
その衝撃により、ディディア・ダヴィットは気を失ったのか、動かなくなった。
『あいつ、まじか、』
リヒターは目の前の光景を信じられなかった。だがその次に怒りがこみ上げ、拳銃をボリスへ向ける。
『よくも、俺の、兄弟を、』
『ふん、おおぐちたたいてた割には早く終わったな。』
リヒターはボリスの言葉に今にも引き金を引きそうになったが、背後から聞こえてくる声に踏みとどまった。
『まってター兄ィ、』
背後からの声はサプナだった。
『サプナ、なんでこんなところに、』
『ダヴィ兄ィを回収して帰ろう、あの人殺しちゃダメ、それに、』
リヒターの耳元でこそこそ話した後、少し釈然としなそうなリヒターだったが妹の言うことを素直に受け取り、そのまま沈黙してダヴィットのもとへゆき地面に手をついた。
『また会おう』
そう聞こえた後に、盗賊グループ周辺の地面が徐々に沼へと変わり三人を沈めていく。次第にその姿は沼の中へと消えていった。
あんなにも喧騒としていた戦場もあっという間に静まりかえった。永義修は緊張が解け、急激に疲労が襲ってきたように倒れこむ。それを見ていたフェルニーは、走って永義修のもとへと駆け寄り、体をある程度見た後に、仮面をつけた顔をなでおろす。
『無茶なことするんだから』
そこへ、胸を押さえてよろめきながら歩くボリスがやってきて永義修に義手の左手をかざす、そしたらまたあの燃えるような光が永義修の体を包んだ。
光が消えてゆくと、永義修はすぐさま起き上がり、体をまるで自分の体ではないのではないかのように隅々を見るなり触るなりした。
『何だこれ?痛いのがなくなった、、』
それを聞いたボリスは、力が抜けるかのようにすとんとあぐらをかく。
『まったく無茶をしやがって、死んだらどうすんだ』
『ごめんなさい』
『いいか、諸々説明できなかったことを説明するぞ、お前の持っているその金槌、それは多分ナノインプルーヴシステムだ、ナノインプルーヴシステムっていうのはな、その、なんだ、感染症ともいえるし、一種の寄生虫的なものなんだが、生命活動をおこなっていないんだ。言ってしまえば俺らの体の中にある神経やその他の栄養素を使いエネルギーに変える機械的なもので、』
『ちょっとちょっとじさん、急に色々ありすぎて処理が追い付かないっていうか、』
『まあ、無理もないか、少しずつ分かればいい、じゃあ説教だ!』
ボリスは立ち上がり永義修のすぐそばまで寄り、怖い顔で言い詰めるように話し始める。
『お前な、あそこにいろといっただろ!あの盗賊達はたくさんの人を殺してきた犯罪者だ、殺されるかもしれなかったんだぞ!いくら機戒を使えるとわかっても、何が何だか分からない状態で使えたのも運が良かっただけだ!』
その言葉を受け永義修は反省したようにうつむくが、開いた口からはそれに反発するかのような言葉だった。
『優しさってことはわかってた。でも、守られただけじゃきっとその優しさも素直に受け取れなかった。心の中でもやもやしたまま守られても、それが、後で俺が誰かを助けることになった時に、助けることとそのもやもやを天秤に置いて言い訳にしそうだっから。』
ボリスはそれを聞いてゆっくりと立ち上がり、拳に『はぁー』と吐き掛け永義修の頭のつむじに振りかざした。
ゴチン!
『いでぇ!』
永義修と目線を合わせるように膝立ちになり、両手で肩を掴み真剣なまなざしでボリスは話し始める。
『お前の言うもことは正しい、俺も勝手に誰かを守ることが、その助けた人にどんな影響を及ぼすかも考えることはある。それに天秤にどんな選択肢が乗っていたって「助けたい」思いは重く深く傾くようにしている。だからこれからお前も、「選択することを怖がるな」現に今お前はやってのけただろ、自分の命や俺の優しさ、フェルニーちゃんの言葉おも自分の天秤にのせてまでも俺の力になってくれただろ、これからも誰かを助けたいのであればその気持ちを抱くのは当たり前になるんだ。』
しばらく静かになる雰囲気に、ボリスも気まずさを隠しきれなく、永義修もそれに同じく気まずくなる。じわじわと痛くなる頭を押さえながら。
『いでぇ、』
『すまん、昔の癖でつい力が入り過ぎた、、』
そんな二人の雰囲気を見てフェルニーは、腰に手を当て柔らかい困り顔をして寄ってきた。
『お二方、無事で何よりです』
『ああ、フェルニーちゃん、君も危ないことをして、あそこで助けなくても私がどうにかしてるさ』
『こう見えて私も、軍人の娘なんですよ!ボリスさんが一番わかってるじゃないですか』
『そうだったな、、、とりあえずみんな生きていてよかった。だがしばらく危険かもしれない、だから知人の医者を呼ぶ、そいつも元軍人だ、永義修やフェルニーちゃんはあいつら盗賊達が何か仕掛けて異常が出てる可能性があるかもしれない、詳しく見てから安全な場所に移動したほうがいいし、フェルニーちゃんは店もあんなことになっちまったもんだから、護衛をつけて実家に帰ったほうがいいと思うからな。すまないがWeloling使わせてもらうぞ』
そう言ってボリスは頑丈そうな携帯を取り出すと、店のカウンター横にある電話ボックスと自販機を融合させたかのような装置から半導体を買った。それを携帯に差し込み素早くボタンを撃ち込んでフェルニーと永義修から離れながら通話を始めた。
その間フェルニーは永義修を店へと連れてゆき、荷物をまとめるように伝え、互いに身支度を始める。永義修は先ほどの戦闘でダヴィットを吹き飛ばした倉庫に入り、住まわせてもらっていた寝床から工具や細かい私物を集めた。だが、見ただけでぬくもりを感じる寝床や、数日で見慣れた配置の道具たちを見て、寂しさを感じていた。
そして、支度が整った頃に永義修は店へと戻り、フェルニーに疑問に思ったことを話始めた。
『フェルニーさんここでは本当にこんな生活があたりまえなの?』
『ええ、そうよ、慣れたとは言いたくないけれど、生きていくには一つの場所に固執していられないし、戦うことも避けては通れないわ』
無力さを感じる荒れ果てた店内で、フェルニーのガサゴソと荷物をいじる音が聞こえる。永義修は荷物を床に置き店内をみわたしていた。すると、電話を終えたボリスが店内へ入ってきた。
『2、3時間ほどで来ると言っていた。それまで待とう』
ボリスは一息つくかのように、カウンターの席に座った。だが、すぐに視線を永義修へ向けて話し始めた。
『永義修さっき戦闘になる前に聞きそびれていた「ナチャラドーゴ」にいた理由を聞いてもいいか?』
永義修は、ふと思い出したかのように話し始めた。
『そういえば、言ってなかったですね、改めて言うと自分は、「日本」ってとにいたんです』
フェルニーとボリスは互いに、唖然とした表情で見つめ合い首を傾げた。
少し焦りを見せる永義修を見て冗談を言っているわけではないということを感じ取り二人も真剣に考えフェルニーが答える。
『なぎちゃん、ここは「サヴミェースヌイ・プラニェータ」といわれている星なの、あなたの言う「日本」ってところは私たちは聞いたことがないわ』
『う、嘘だ、えぇ、そんな、アメリカは?中国は?ロシアは?ここは「地球」ってとこじゃないんですか?、、』
永義修はパニックを起こし、体全身震え焦りだしていた。
ボリスは落ち着かせるように言葉を投げかける。
『永義修、いまはすごく不安だと思うが、まずは落ち着くんだ。俺は、お前の言っていること全く分からないわけではない、お前の状況を一緒に整理しよう』
永義修は、ボリスの言葉に癪に障ったように怒りを含めた疑問を、自身のことをそっちのけで問いかける。
『なんでそんなに優しくできるんすか?さっきまで迷惑かけてた得体のしれない奴に!』
その言葉を飲み込むようにうつむき、まっすぐな顔をしたボリスはまた説教をするように永義修に言った。
『「いきてる」からだ。』
『いきてるから?』
『そうだ、俺は「いきてる」のであればできる限りの力になりたい。押しつけがましい優しさと思うかもしれないが、人やそれ以外の生きる者には終わりが来る。目の前で「いきてる」それだけでも幸福であると俺は感じる。だから俺の信じる「無償の愛」を、俺のできることで、俺のできる範囲でふりまいていきたい』
永義修はあまりにも綺麗な話に苦しさをあらわにした。そして頭を抱え一つ語り始めた。
『俺は、知らない場所で、あって間もない人に迷惑かけて、寂しくて、さっきまで大口たたいてたのにそれも受け止められて、ほんっとうに俺はダメな奴だなって、どうしていいのかわからなくて、ごめんなさい、』
自分に落胆し、仮面から涙が零れ落ちる。綺麗が過ぎる、永義修は言葉にすることはできなかっただろうがとにかくそう思ったのだろう。細かな理由も、大それた思いもあるわけではないかったボリスの動機に自分の思いが爆発した。
『お前は若いし、その仮面が似合わないほど泣き虫だな。』
そういってボリスは永義修の頭をなでる。
『まったくもう、そんな弱虫さんは無理に気を張らないで私たちに頼ってもいいのよ』
フェルニーも永義修の頭を少しなでて温かく抱きしめている。
永義修の涙はより一層あふれていた。しかし、落ちていく涙は少しばかり温かく、荒らされてしまった店内もどこか居心地よさを取り戻しつつあった。
いかがだったでしょうか。
五章から始まていますが自分の力不足で、ある程度進んだ状態から出ないと書けなかったからです。
そして何か誤字やおかしな点があればご感想にお願いします。
マイナスな意見もプラスな意見も自分の糧としてこれからも精進していきます。
堅苦しい言葉以上
ちなみにホール・イーザー・デルタ『∀∨Δ』以外にも少しずつ別の作品も進めるので、そちらも認知していただければと思います。
最近格闘ゲームが面白いですGo!!Alex




