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n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


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第97話 帝都の二重影

 帝都の冬の空は、薄曇りに覆われていた。冷たい風が高い石壁を吹き抜け、街全体にひんやりとした空気を運ぶ。


 書斎の一角、リリア・フェルミナは机に広げた地図と報告書を凝視していた。

 南方のルミナールが、北方領に居るレスティーナの指示で着実に発展している――その情報が、リリアの胸を焦がす。


(……くっ、またあの子が、遠くに居ながら都市を完璧に動かしている……)


 リリアは元平民出身ながら、最近男爵家の令嬢となった。

 その新しい地位を利用し、帝都の情報網を駆使してルミナールの経済活動を探り、間接的な妨害策を打つつもりだった。

 魔の森素材の搬入状況、市民の購買傾向、商会の稼働状態――すべてを掌握し、レスティーナの戦略に微妙な影響を与えようと考える。


 一方、数部屋離れた邸宅では、メアリー・スーが独り、商会記録と売上表を睨みつけていた。

 何度も商会を立ち上げては破産してきた経験が、今の彼女の焦燥を増幅させる。

 自分は神に選ばれた特別な存在――その思い込みで、どんな困難も跳ね返せるはずだった。

 しかし現実は、北方領にいる十三歳の少女の手腕によって、何度目かの敗北を重ねていた。


「くっ……こんなはずじゃない……!」

 メアリーは舌打ちし、机を叩く。

 リリアと同様、ルミナールの発展を妨害する策を練る。だが、メアリーの方法はより直接的で、商会に対する圧力や噂の流布、取引条件の操作など、自己中心的で短絡的な手段に偏っていた。


 重要なのは、リリアとメアリーは犬猿の仲であり、互いに協力することはない。

 リリアは情報操作と心理誘導を得意とするが、メアリーは単純明快な商会戦略で押し切ろうとする。

 互いに意図せず同じ目標――ルミナールの発展阻止――を目指すも、手法は正反対で、結果としてお互いの邪魔になったり、失敗を重ねることも多い。


 リリアはひそかに笑う。

(あのメアリー・スー、今回も自分の失敗を誰かのせいにして焦るのだろうな……)

 そう思いながら、彼女は冷静に策略を巡らす。魔の森素材の搬入に微細な遅延を与える方法、商人の心理を揺さぶる噂、商会の内部対立を誘発する書簡――すべて計算済みだ。


 メアリーも負けじと、独自の商会圧力を準備する。

 ルミナールの市場に、自分の商会商品を過大に宣伝させ、価格操作で利益を確保しようとする。しかし、市場全体の流通量や北方領の指示を介した資材管理には太刀打ちできない。

 結果、メアリーの策略は部分的にしか効果を発揮せず、損失も大きくなる。


 ルミナール市長は、帝都からの圧力や情報操作にも冷静に対応していた。

 私、レスティーナが北方領に居ながら指示を出し、商会の運営や物流ルートを最適化しているため、市民生活や市場活動は大きく乱れることはない。

 ネットショップを介して直接資材を取り寄せ、商会に割り当てることで、帝都からの妨害は完全に間接的なものに留まる。


 数日後、ルミナールの市場は再び活気を取り戻す。

 商人たちは新商品を前に歓声を上げ、子供たちは珍しい鉱石を手に取り、目を輝かせる。

 市民の笑顔も戻り、街全体が成長を実感できる空気に包まれる。


 その報告が北方領に届くと、私は微笑む。

 (リリアもメアリーも、今回も焦って無駄な策を巡らせるだろう……だが、都市の成長は止められない)


 帝都では、リリアが焦りの声を上げる。

「くっ……北方領のあの子、どうしてこうも計算が正確で、資材も市民も動かせるの……!」

 一方のメアリー・スーも舌打ちしながら、商会記録を睨む。

「こんなはずじゃ……神に選ばれた私が……!」


 互いに対抗心を燃やす二人。

 しかし犬猿の仲であるため、協力はなく、戦略もバラバラ。結果として、北方領のレスティーナが作り上げた都市経済にはまったく影響を与えられない。


 十三歳の私は、北方領から遠く南方の都市を見守りつつ、次の施策を思案する。

 商会、物流、魔の森素材、市民の生活――すべてを把握し、都市の発展を加速させることが、私の責務だ。

 リリアやメアリーの策略はある意味で、都市の成長の証明でもあった。


 夜、ルミナールの街灯が静かに通りを照らす。

 商人の声、子供たちの笑い声、市民の足音――すべてが都市の活力を象徴している。

 帝都からの間接的妨害も、北方領にいる私の手腕の前では、ただの波紋に過ぎない。


 そして私は、次の都市発展計画を練り始める。

 十三歳の私は、北方領に居ながらも、南方ルミナールの未来を守り、さらに輝かせる――それが私の使命だ。



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