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n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


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第78話 リリアの策略日誌

 私はリリア・フェルミナ。


 今日も帝都の朝は忙しい。カーテンの隙間から差し込む光が、私の部屋を淡く照らす。

 街は目覚め、商人や令嬢たちの足音が石畳に響いている。だが私は、そんな雑音に耳を傾ける暇はない。


 机の前に座り、昨晩集めた情報を整理する。

 北方領のレスティーナ・フォン・グランテの動向、彼女の商会の勢力範囲、城下町の成長速度……すべて把握しておく必要がある。

 帝国中の情報網を駆使すれば、どんなに巧みに街を発展させても、少しの揺さぶりで彼女の計画を乱すことができる。


(ふふ……面白くなってきたわ)


 私はまず、朝の噂作りから始める。


 「レスティーナの北方領では、新しい商業施設が開設されたらしいわね」


 柔らかい声で、近くの令嬢に話しかける。微笑みながら、軽く首を傾ける。

 しかしこの噂には、微妙なニュアンスを加える。


 「でも、あの領地……まだ人手不足で、物流が滞っているらしいのよ。夜間作業が多くて、住民も疲弊しているって話も」


 声色は明るく、誰も疑わない。だが、聞いた令嬢の心には、レスティーナに対する軽い不安が芽生える。

 私はそれを計算して笑みを浮かべる。情報操作は、まず「信頼される語り手」であることが重要だ。


 次に、帝都商会の活動をチェックする。


 「今週の売上はどうかしら」


 直属の秘書に問いかける。

 私の商会は、まだ小規模ながら、帝都の令嬢たちの間で注目されている。

 策略や噂を織り交ぜつつ、売上を意図的に操作すれば、レスティーナの商会との比較で優位に立てる。


 昨日、北方領の状況を調べた結果、レスティーナの街は確かに発展していた。人口は一万人を超え、学校や医療施設も整備済み。

 それでも、都市規模が大きくなるほど、情報の齟齬や小さな失敗は必ず起きる。私はそこを狙う。


 午前中、帝都商会の集会に参加する。


 「皆さん、北方領の商会は順調らしいですが、実際には問題も多いそうです」


 私は柔らかく笑う。表情は無邪気、声は甘く、言葉は慎重。

 だが心の中では、すでに次の一手を考えている。


 「物流が滞っている、人口が増えすぎて秩序が乱れている……そんな話、どう思う?」


 商会の若い令嬢たちは私の言葉に耳を傾ける。

 私は、事実の断片に微妙なニュアンスを加える。ほんの少しの疑念を植え付けるだけで、人々の不安は膨らむ。


 昼過ぎには、帝都の街角を歩く。


 行き交う人々に微笑みかけながら、さりげなく耳に入る会話に細工をする。

 「レスティーナって、北方であんなに急速に都市を作ってるらしいわね」

 「でも、あの街……一万人も人がいるのに、夜は混乱しているって」


 誰が本当に情報を広めたのかは、もう問題ではない。

 重要なのは、都市に不安があると信じ込ませること。

 私は小さく笑みを浮かべる。これこそ、策略の力。


 夕方、帝都の広場では小さな催しが開かれていた。商人や市民が集まり、私の商会の存在も目立つ。

 そこで、私はある決定を下す。


 「次の施策は、私の商会の知名度をさらに上げる」


 新商品の仕入れ、販売戦略の調整、広告の展開……すべてを計算する。

 目的はただ一つ、レスティーナの北方領の影響力に対抗するための帝都内での優位確保だ。


 その夜、私の部屋で手帳を開く。


 今日広めた噂の効果を検証する。

 情報がどのように人々に伝わり、どの令嬢が焦って行動しているかを分析する。

 わずかの不安でも、巧みに操作すれば、他者を動かす力になる。


 私は静かに笑う。


 (レスティーナ、あなたの街は立派に育っているけれど……帝都では、私が主導権を握る)


 リリア・フェルミナ。自己中心的だと非難されるかもしれない。

 だが、私はただ、自分の未来を確実に勝ち取るために動いているだけだ。

 猫を被るのも、笑顔を振りまくのも、すべては戦略の一環。


 窓の外、帝都の灯りが揺れる。


 この街の人々の視線も、私の手の中にある情報の一部に過ぎない。

 明日もまた、新たな噂を広め、策略を仕掛ける。

 そして北方のレスティーナが、どれだけ静かに街を育てようと、私は帝都で確実に存在感を示していく――。



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