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n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


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第73話 帝都商会戦線

 帝都の朝は澄み渡り、冷たい空気が街全体を包んでいた。

 私は小さな商会の帳簿を手に、窓の外を見下ろす。

 視察や市場調査の結果をもとに、今日の売上戦略を練るためだ。


(メアリー・スー……また商会を立ち上げてるわね)


 十三歳の悪役令嬢。

 だが、彼女の商会はこれまで何度も立ち上げては破産を繰り返してきた。

 それでも彼女は諦めず、どんな状況でも帝都で新しい商会を興し、挑戦を続ける。

 前世知識から言えば、典型的な“転生者型の悪役令嬢”だ。

 短期的な売上や派手な商法で注目を集めるが、帳簿や物流管理を怠り、長期的には破綻する。


 私は窓辺で小さく笑った。

 昨日の改善策と、ググル先生の助言をもとに、私の商会は盤石だ。


『レスティーナ、今日の施策は完璧です。

メアリー・スーの過去の失敗パターンから分析すると、今回も長続きはしません。

物流の遅延、在庫管理の欠如、財務管理の甘さが致命的な弱点です』


 私はペンを握り、今日のタスクを書き出した。

 市民への限定商品の案内、配送ルートの調整、陳列の再編成。

 さらにネットショップの更新を行い、帝都全域に販促を打つ。


 午前中、帝都の市場に足を踏み入れる。

 人々の視線が集まり、自然と商会の周囲は賑わった。

 市民は昨日よりもさらに整理された陳列と、迅速な配送、丁寧な接客に満足している。


 その時、広場の向こうに赤い髪の少女が見えた。

 そう、メアリー・スーだ。十三歳とは思えぬ強引な態度で商人たちを指揮している。

 しかし目を凝らすと、慌ただしく帳簿を確認したり、荷車が詰まっている様子も見える。

 ああ、やはり――


 何度も失敗したパターンそのままだ。


「……レスティーナがいる」

 少女は鋭い視線を送る。

 小さな唇に挑戦的な笑みを浮かべる。

 しかしその背後には、混乱する商人たちと、空になった在庫棚がちらつく。


 私は平然と商会の前に立ち、昨日の改善策を活かした販売を開始した。

 配送ルートを整理し、荷車が街角で詰まることはない。

 ネットショップでは、限定商品を早朝に宣伝し、待ち受ける市民たちの注目を集める。


 午前中の売上は、予想以上に伸びた。

 市民の反応も上々で、口々に感謝と驚きを述べている。


「この商品、便利ね!」

「昨日よりも品揃えが良くなったわ」

 声を聞きながら、私は微笑む。

 これこそ、商会運営の楽しさだ。

 数字だけでなく、人々の生活に役立つ形で街が動く感覚。


 一方、メアリー・スーは苛立ちを隠せない。

 赤髪を揺らしながら帳簿を見直し、配送の指示を繰り返す。

 しかし既に物流の混乱は避けられず、売上は伸び悩んでいる。

 過去の失敗が今も影響しているのだ。


 午後になると、広場で市民アンケートを行った。

 何が欲しいか、どの時間帯に買いに来るかを直接聞き、販売戦略に反映させる。

 ネットショップにはアンケート結果を即反映し、リアルタイムで商品説明や在庫状況を更新する。


 夕方、私は帳簿を整理しながらググル先生の報告を見る。


『今日の結果、レスティーナの商会は確実に優位を確立しました。

メアリー・スーの商会は、販売力はあるものの、物流と財務管理での弱点が露呈しました。

さらに、ネットショップでの集客効果もレスティーナ側に傾いています』


「ふふ、やはりね」

 私は小さく笑みを浮かべ、翌日の施策を計画する。

 新商品の導入、商業施設の拡張、在庫管理の更なる効率化。

 そして、帝都の住民たちが日常的に利用できるサービスの整備。


 メアリー・スーが何度商会を立ち上げようとも、私は街の成長と市民の生活を優先する。

 それが、十三歳の私がこの都市を守り、育てる使命だと信じているから。


 夜、帝都の明かりが街を照らす中、私は小さく呟いた。


(商会戦争は、ただの競争じゃない。

 街の発展、市民の幸せ、そしてこの都市全体の未来をかけた戦い……。

 メアリー・スーの挑戦も、結果的には街の成長に繋がるわね)


 帳簿を閉じ、窓の外の静かな帝都を眺める。

 十三歳の少女たちの競争は、今日も街のどこかで新たな物語を生み出している。

 そして私は、冷静に、そして着実に、この街の未来を手の内に収める。



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