表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/23

第10話 開拓村の第一歩

 村人――いや、正確には農奴達が頭を下げたまま動かない。


 レスティーナは少し困った顔をした。


 「そんなに畏まらなくて大丈夫よ」


 そう言っても、誰一人顔を上げない。


 どうやら彼らにとって領主とは、恐ろしく絶対的な存在らしい。


 (うーん……)


 レスティーナは内心で悩んだ。


 (これだと話が進まないわね)


 そこで、少しだけ声を柔らかくする。


 「ユラさん」


 「は、はい!」


 びくりと肩を震わせながら男が顔を上げた。


 まだ三十代くらいだろうか。

 日に焼け、骨ばった顔をしているが、目は真っ直ぐだった。


 「まず確認したいのだけれど」


 レスティーナは周囲を見回す。


 掘立小屋が五つ。

 畑は小さく、土は痩せている。


 「ここには何人いるの?」


 「……三十七人です」


 ユラが答えた。


 「大人が二十三人、子供が十四人です」


 思ったより多い。


 レスティーナは顎に手を当てて考えた。


 「食料は?」


 「……あまり」


 ユラは苦い顔をする。


 「畑も小さいですし、魔物も出ます」


 なるほど。


 レスティーナは軽く頷いた。


 (そりゃ怯えるわよね)


 飢えと魔物。


 この二つは人を簡単に絶望させる。


 


 「安心して」


 レスティーナはにこりと笑った。


 「まずは食料を持って来ているわ」


 その言葉に村人達がざわついた。


 「ほ、本当ですか?」


 「ええ」


 レスティーナはジェイを見る。


 「荷物を降ろして」


 「かしこまりました」


 ジェイが護衛達に指示を出すと、馬の背に積まれていた荷物が次々と降ろされていく。


 袋。


 袋。


 袋。


 それを見たユラが目を見開いた。


 「……麦ですか?」


 「半分は麦ね」


 レスティーナは答える。


 「もう半分は別の穀物よ」


 袋を開けると、白い粒が現れた。


 村人達がざわめく。


 「……これ」


 ユラが恐る恐る言った。


 「家畜の餌では?」


 レスティーナは笑った。


 「違うわ」


 そして胸を張る。


 「これは**お米**よ」


 


 村人達はぽかんとしている。


 


 レスティーナは続けた。


 「炊くと、とても美味しいの」


 「パンとは違う主食になるわ」


 


 (まあ最初は半信半疑よね)


 かつてグランテ領でも同じ反応だった。


 米は家畜の餌。


 それが常識だったからだ。


 


 「今日は炊き出しをするわ」


 レスティーナは言った。


 「皆で食べましょう」


 


 それから一時間後。


 村の中央では大きな鍋が火に掛けられていた。


 湯気が立ち上る。


 甘い香りが漂う。


 


 「……いい匂いだ」


 誰かが呟いた。


 


 レスティーナは木の椀にご飯をよそる。


 そしてユラに渡した。


 「はい」


 「食べてみて」


 


 ユラは恐る恐る口に入れる。


 噛む。


 


 そして――


 


 目を見開いた。


 


 「……うまい」


 


 その声は震えていた。


 


 「なんだこれは……」


 「柔らかい……」


 「甘い……」


 


 村人達が次々と食べ始める。


 


 「美味しい!」


 「パンより食べやすい!」


 「子供でも食べられる!」


 


 子供達が笑っている。


 久しぶりに満足そうな顔だった。


 


 レスティーナはその光景を見て微笑んだ。


 


 (よし)


 


 第一段階成功。


 


 「ユラさん」


 


 「はい!」


 


 「明日から仕事よ」


 


 レスティーナは地面に棒で線を引いた。


 


 「まず村を拡張します」


 「畑を三倍」


 「家を二十軒」


 


 ユラが驚く。


 「に、二十軒?」


 


 「ええ」


 


 レスティーナは当然のように言った。


 


 「人が増えるもの」


 


 村人達がざわめく。


 


 「増える?」


 


 「ええ」


 


 レスティーナはにこりと笑った。


 


 「この村は」


 


 「**開拓都市の第一拠点**になるの」


 


 静まり返る村。


 


 レスティーナは続ける。


 


 「街道を作る」


 「畑を広げる」


 「魔物を狩る」


 


 「そして――」


 


 「都市を作るわ」


 


 ユラが呆然とした顔で呟く。


 


 「……都市?」


 


 レスティーナは頷いた。


 


 「そう」


 


 そして空を見上げる。


 


 魔の森の空は広い。


 


 「ここは」


 


 「**未来の大都市になる場所**よ」


 


 村人達はまだ信じられない顔をしている。


 


 だが――


 


 その日。


 


 彼らは初めて**腹いっぱい食べた**。


 


 それだけで。


 


 人は希望を持てるのだった。


 


 レスティーナはこっそり呟く。


 


 「ググル先生」


 


 〈はい、マスター〉


 


 「開拓計画フェーズ1」


 


 「開始よ」


 


 〈了解しました〉


 


 こうして。


 


 **魔の森開拓計画**は。


 


 静かに動き始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ