表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
期待しない女は、最後に選ばれる  作者: 篠宮しずく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

第12話 最初の違和感

 それは、とても小さな違和感だった。


 だから最初は、

 気のせいだと思った。



 昼休み、いつものように食堂へ向かう途中で、

 佐藤真琴に声をかけられた。


「ねえ、白石さん」


「何?」


「最近さ……高瀬さんと一緒にいること多いよね」


 私は、立ち止まらずに答える。


「たまたまよ」


「だよね。でもさ」


 真琴は少し言いづらそうに、

 それでも続けた。


「結局、二人って、付き合ってるの?」


 その言葉に、

 胸の奥が、ほんの少しだけ沈んだ。


「違うよ」


 即答だった。


 嘘ではない。

 事実だ。



「そっか」


 真琴はそれ以上踏み込まなかった。


 でも、その一言が、

 私の中に残る。


 ――違う。


 口にしたその言葉が、

 やけに重く感じられた。



 食堂で席を探す。


 高瀬さんの姿は、見当たらなかった。


 いつもなら、

 無意識に探している場所。


 今日は、少しだけ肩の力が抜けた。



 午後、仕事に戻る。


 集中しようとしても、

 さっきの会話が頭の片隅に残っていた。


 付き合っているのか、という問い。


 違う、と答えた自分。


 それは、

 自分で選んだ立場だったはずなのに。



 夕方、企画部に用事があってフロアを訪れる。


 高瀬さんは、同僚と話していた。


「……ああ、白石さん」


 こちらに気づいて、声をかけられる。


「これ、お願いします」


「はい」


 それだけのやり取り。


 以前と、何も変わらない。


 それなのに。


 なぜか、

 心の奥に、細い棘が刺さったままだった。



「最近、仲いいよね」


 企画部の誰かが、

 冗談めかして言う。


 高瀬さんは、

 少しだけ笑って答えた。


「仕事で、よく関わるので」


 それだけ。


 否定もしない。

 肯定もしない。


 ただ、曖昧に流す。



 ――ああ。


 その瞬間、

 違和感が、はっきりと形を持った。


 私は、ここにいる。


 でも、

 選ばれてはいない。



 責める気持ちは、なかった。


 問い詰めたいとも思わなかった。


 だって、

 私は最初から、

 期待しないと決めていたのだから。



 帰り道、駅までの道を一人で歩く。


 今日は、高瀬さんと一緒にならなかった。


 それが、

 少しだけ、胸に優しかった。



 ――そうだ。


 これは、

 私が望んだ関係だ。


 安心できて、

 踏み込まなくて、

 何も約束のない関係。


 なのに。


 どうして、

 こんなにも心が重いのだろう。



 家に帰り、バッグを置く。


 一人分の夕食。


 静かな部屋。


 変わらない日常。


 それなのに、

 今日は少しだけ、

 息がしづらい。



 私は、ゆっくりと結論を出す。


 これは、失望じゃない。


 ただの確認だ。


 ――私は、やっぱり選ばれていない。


 それだけのこと。


 そう思えたはずなのに。


 胸の奥に残った違和感は、

 その夜、なかなか消えてくれなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ