能力も使い様
暑さのあまり汗をかき始めた英治は早く何か創らないとと思い……。
この暑さを、どう凌ぐかを考えるも余計に暑くなった。ダラダラ汗をかきはじめる。
(最悪だぁ~……なんで、こんな砂漠の……ド真ん中に転移させるんだよぉー)
暑さで余計に分からなくなった。今にも泣きそうである。
(俺の妄想って、こんなもんなのか? 暑さを凌ぐものって、他にないのかよ)
そう思い必要な物を幾つも思い浮かべた。
冷たい水、涼しい部屋、冷やし中華、大量の氷、クーラー、クーラーボックス、どれも無理だと諦めようとした。
だが、ふとある物が思い浮かんだ。
「ネッククーラー……これなら持てるサイズだ。それに首にかけておけばいい」
思いついたネッククーラーの色や性能などを想像する。すると掌の上に魔法陣が展開され発光した。
それと同時に、チカチカと光ながら黒いネッククーラーが姿をみせる。
そのネッククーラーを持つと食い入るようにみた。
(見た目は、ネッククーラーそのものだ。だけど、まだ機能を確認してみないと成功とはいえない)
ネッククーラーのスイッチが何処にあるのか探してみる。
「なんだ! この紋章のようなものは?」
紋章のようなものはネッククーラーの左外側に描かれていた。
その紋章のようなものがなんなのか気になり何気なく触ってみる。
すると内側から、ヒンヤリした冷気が漏れてきた。
「冷風だ! そうか……この紋章のようなものが、スイッチなんだな」
どれだけ涼しいのかを体感したく思い首に装着する。
ネッククーラーを装着した英治の顔は余程、気持ちいいのか力が抜け融けそうだ。
「これはいい。首だけでも冷えてれば、なんとかなるだろう。レベルが上がれば、もう少しましな物を付けれるだろうしな」
なんとか暑さを克服した英治は次にすることを考え始める。
(このまま歩いて近くの町に行くか? それとも野宿……いや、その選択は皆無だろ!
こんな所で寝たりしたら得体の知れない何かに襲われるかもしれない)
恐る恐る周囲を確認したあと良かった居ないと安堵した。
(そういえば装備はどうするんだ? 身に付けるものなら消えないのか? 調べてみるか)
プレートを操作しながら装備を創造しても消えないのかを調べる。
(持てる範囲の物であれば服や装備など身につけられるならかぁ。なんとかなりそうか……デストピアで浮かない格好がいいからな)
スチームパンク系、サイバーパンク系、ミリタリー系、ダークファンタジー寄りの服装などなど何が無難かと思考を巡らせていた。
(折角若返ったんだ! できるだけカッコいい衣装や装備品がいいよな)
考えが纏まるとカッコいい装備品を身につけている理想的な自分の姿を妄想する。両手を前に出し掌を上に向けた。そのあとすぐに魔法陣が展開され眩く発光する。
その後、チカチカ光って手に持てるぐらいの大きさのフィギュアが現れた。
それを手にし英治は魅入ってしまい、マジマジと食い入るようにみている。
「これって俺か? まるで別人のようだ……って! なんで自分のフィギュアを創らなきゃいけないんだよ~」
どうせなら可愛いキャラを妄想すれば良かったと後悔した。
(そもそもフィギュアを創造したって意味がない。ハァー……面倒でもパーツ毎に具現化させた方がいいかぁ)
改めて服や装備品などなどをパーツ毎に創造していく。
次々に具現化していくも数が多すぎて疲れてくる。
それでも可能な限り力を振り絞って創っていった。
全て具現化し終えると項垂れるように地面に倒れ込んだ。
「あ、アヂィイイ~!!」
あまりにも焼けた砂の熱さに耐えきれず叫び飛び跳ねる。
「ヒェ~……聞いてないぞ! こんなに高く飛べるなんてぇええー!!」
かなり高く跳び過ぎたようだ。高さは、およそ十メートルあるだろうか。
「おいおい……こんなの、どうやって着地しろって? 絶対に無理だ! この高さじゃぁああー!!」
モフモフで柔らかい落ちても怪我をしないクッションのような物が地面にあればいいのにと思いながら落ちている。
それに反応したのか大きな魔法陣が砂の上に展開され激しく発光した。すると徐々に巨大なブタ猫のクッションが現れる。
(モフモフ巨大クッション!?)
驚くも考えている暇なんてない。そのままクッションへ落下した。
――バッフーン!! ――
英治が落下したと同時に巨大ブタ猫クッションは不思議な声のような音を立てる。その後、パッと消えてしまった。
勿論、英治は熱い砂の地面に落ちる。
「アヂー!! だからアァァアアアアアアー!」
そう叫び涙目で円を描くように駆け回った。そんな英治の顔は焼けて赤くなっている。
「あー薬を創造できればなぁ。薬や食べ物なんかは具現化できないって最悪だぁああー!」
落ちている装備品などなど回収した。
「もう何処でもいい! 町に行くぞぉおおー!」
そう叫び英治は町がある方へ、そのまま走り去る。
「何者? でも強い。助けてくれるかも。追いかけよう。それに向かったのって、ボクが住んでる町だし」
何処に隠れて居たのか十代後半ぐらいの少女は英治を追いかけた。
読んで頂きありがとうございます(^_^)/
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