現状把握と自分の能力
我に返った英治は今自分におかれている状況を把握して……。
暫く自分の手をみて英治は思考を巡らせている。
(……若返ったのか? そういえば、あのキグルミの少女が言ってた。俺の夢を叶えるって)
本当に若返っているのか気になった英治は何時も持ち歩いている鏡を鞄から取りだす。
恐る恐る鏡をみた英治は感激で涙腺が緩んだ。
(あの少女が言っていたことは本当だったんだ!)
そう思ったあと周囲を見回した。
(そうか……ここは異世界。でも、なんで砂漠に転移させたんだ? 空は曇っている訳じゃないのに暗いし)
不思議に思い困惑する。
(考えても分からない。それよりも折角やり直せるんだ……今までのように我慢しないで好きに生きるぞ!)
異世界に転移し尚且つ若返っていることに対し喜び生きる希望が湧いてきていた。
そしてキグルミの少女に感謝しかないと思い手を合わせる。
「さて、これからどうする? 異世界転移と云えば……何らかの能力を授かっているはずだよな」
もしかしたらと思い、あらゆる方法を試し始めた。
目の前に手を翳し「ステータスオープン!!」と言ってみたり目を閉じ脳裏に浮かべたりもしてみる。
でも何も表示が浮かんでくる気配はない。
「どういう事だ? じゃあ、ステータスは表示されないってことなのか。そんなら、どうやって能力を把握する?」
手を眺めながら思考を巡らせる。
(能力を確認できる物でも創造できればいいんだけどなぁ)
脳裏にステータスを確認できるようなプレートを思い浮かべた。それはガラス製のプレートである。
すると掌の上に魔法陣が現れて、ピカッと発光した。その光と共に、チカチカと徐々に形が現れてくる。
それは英治が思い浮かべたガラス製のプレートだ。
「……思い浮かべた物が創られてる。そういえば、あの時……確か創造して暮らしたいって言った。そのためか?」
使えるのかを確認するため、ガラス製のプレートを操作してみる。
(ステータスは表示されない。だけど能力の説明や、この世界についてなんかを調べることができるのか)
これは便利だと思い検索し始めた。まるで、タブレットのようである。
調べていくと文字が表示された。
どうやら、この世界のことを調べ始めたようである。
この世界の名前はモルネデアスと云い幾多の戦争と世界中に起こった大災害により滅んだようだ。
滅んだと云っても数少ないが生存者はいる。
(デストピアか……まあ生存者がいるだけ、マシと思わないとな)
そう思いながら更に検索し始めた。
(地図も表示してくれるのか、この機能は助かる。さて何処に向かうかだな)
今いる場所には紫のハートが表示されている。
(現在地の表示だけじゃなくて……ナビ機能もついてるのか。だけど、こんな機能って必要ないと思うぞ。
だけど俺が創造したってことは脳内で再生されたんだろうな)
プレートを操作しながら、これからどうしようかと思い悩んだ。
(プレートに表示されている情報をみる限り近くの村や町は何処も壊滅してる。生存者情報までは書いていない。
どうするかだ……向かった所で誰も居なくて何もなかったら無駄になるし)
何かイイ方法はないのかと周囲を見回しながら考える。
「能力は妄想……いや想像した物を創り出すことができる。でも何処までの物を具現化できて、それらは永久に残るのか?」
手にしているプレートで検索してみることにした。
(創作レベル? なるほど創造と云うよりも、コッチか。
俺の妄想程度と、レベル値にもよるってことだな。それで、どうなんだ?)
表示された内容を読み進める。そこには今の英治のレベルで永久に残り創造できる物の基準が表示された。
(現段階だと手に持てる程度の物だけか。但し現状のレベル2での武器の創造はできるもランダムで使用後に消えるようだ。
まあ……できるだけ使用したくないけどな)
そう考えながら他にも何かないかと検索していたが暑く、いや熱くてツラくなってくる。
「駄目だ! こんな所に何時までも居たんじゃ日干になるぞ!!」
何か涼しくなる物を創造できないかと想像してみた。
脳裏に浮かんだ物は扇風機やエアコンなどだ。しかし、それらだと動力はどうするんだと悩んでしまう。
(だけど困ったぞ。そもそも、このプレートの動力ってどうなってるんだ?)
気になりプレートで検索し始める。
(動力は、この世界のマナと云うエネルギーであり魔法に使われるエネルギーにもなっている。
この世界では必要なものの一つだ。そうなると、これを使って動かせるかもしれないぞ!)
そう考えが纏まると手のりサイズの扇風機を想像した。それに反応し掌の上に魔法陣が展開されてピカッと発光する。
そのあと、チカチカと徐々に形がみえて来て掌の上に小型の扇風機が現れた。
「創造できたが実際、動くのか?」
そう思い扇風機に記されている魔法陣を恐る恐る触れると羽が勢いよく回り始める。
「ウッ……風が強い~! それに……グッ……これって熱風じゃないかよぉー!!」
これじゃ駄目だと思い慌てて扇風機の魔法陣に触れて停止させた。
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