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白魔女ちゃんとパーティ組んだら、アタシの堅実冒険者ライフが大崩壊! え、ちょっと待って。世界を救うとか、そういうのはマジ勘弁して欲しいんスけど……!~記憶の魔導書を巡る百合冒険譚~  作者: 難波霞月
第2期 第3章 記憶の魔導書を巡る百合合戦譚。

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第33話 アルゴンヌの戦い(上)

 翌日。想定したとおり、昼前に彼らはやってきた。


(兵士は150くらい、ちょっと多いな。騎士は10名。とはいえ、森の中じゃ馬は使いづらいだろうに)


(……黒づくめも何人かいるわね。スコラ修道会の魔法使いか暗殺者かしら?)


 斥候に出ていたミーシャとゲルダは、ゲオルグの軍容を見てそう判断した。

 ゲオルグは、森の近くの集落に陣を構えると、のんきに兵へ昼食を与える。

 彼もまた、料理人を引き連れて、優雅にランチを取り始めた。


(何だあれ。まるでピクニックじゃないか)


(んー? あれ、おじさんの肉まんじゅうだわ?)


 よく見ると、兵士たちの多くが、通常の糧食に加えて、肉まんじゅうを食べている。


(おじさん、うちのお父さんと、何かしかけたって言ってたけど)


 全員が物見遊山のようなだれきった規律であると判断し、ミーシャが伝令に戻っていく。


 廃僧院に戻ったミーシャは、全員に事の次第を報告した。


「では、こちらも作戦を開始します。みんな、お願いしますね!」


 ミーシャの報告を受けたソニアは、30人弱の戦士たちに、そう告げた。



 やがて、秋の日が中天を差したころ。

 アルゴンヌの森の中に、ゲオルグの声が響き渡った。


(鬼殺しのミーシャ! 並びに、この森に巣くう盗賊ども! いますぐ武器を捨てて投降せよ!)


 茂みの中で、エリサとともに身を潜めたミーシャは、遠くから聞こえてくるこの声にうんざりした。


「……なまじ美声でよく通るから、かえって虫唾が走るな」


「ふふっ。そうですね」


 2人はそう言って笑う。だが、その笑いも、今は少しこわばっていた。


(……今から四半刻後(15分)に攻撃を開始する。その時は、全員容赦なく成敗する!)


「どうします?」エリサがいたずらっぽく聞く。「投降、してみます?」


「それも面白いかもね」ミーシャは、犬歯を見せて、にやりと笑った。


 だが、隣にいたエリサに、突如、ぎゅっと抱きしめられる。


「……ミーシャさん、怖いんですか?」


 自分の手が震えていたことを、エリサが気づいたらしい。


「うん。怖いよ。エリサも、怖い?」


 エリサは、無言で小さくうなずく。

 するとミーシャは、自分の震える手を二度三度握ったり開いたりしてから、エリサの腰に手を回す。


「だいじょうぶ。アタシたちは、絶対、生き延びる」


 やがて、ひょうひょうと空に異音が走った。ゲオルグ軍が放った鏑矢だ。戦闘開始の合図である。

 どこまでもカッコつける奴だな、とミーシャは毒づいた。


 人の動く気配が、遠くでした。

 ざくざくと枯葉を踏み分ける音。金属鎧のこすれあうガチャガチャという音。馬のいななき。

 鳥たちが驚いてバサバサと飛び立つ羽音。


 ミーシャたちのほか、数名の兵士が、息をひそめて待つ。緊張が高まる。


 やがて、


(ぎゃっ! くそっ……罠か! こっちはダメだ、迂回しろ!)


 巧みに仕掛けた罠の効果が出始めたようだ。

 森の中に仕掛けた罠が、ゲオルグ軍の兵士たちの士気をくじき、部隊を分散させ、森の奥へと誘いこんでいく。


 ゲオルグ軍本隊の見張りをしていたゲルダやってきた。

 今、森に入ってきたのは全体の約3分の1、50名程度だと告げて、またどこかへ去っていく。


 やがて、遠くの方で喚声が上がった。戦闘がはじまったのだ。


(始まった!)


 ミーシャがそう思った時、こちらにも、ゲオルグ軍の部隊が姿を現した。

 罠でさんざん緊張させた挙句、見えないところで戦闘が始まる。

 見えない敵を探す兵士たちの顔はすでに疲れ切っていた。


(エリサ…………いまだ!)


 十分に引き付け、一方的に相手の姿だけが見える場所。


(【液状化】!)


 エリサは、ミーシャの号令で、地面をぬかるみに変える魔法を放った。たちまち、敵軍は膝まで泥に埋まった。


「う、うわっ! なんだこりゃ!」「足がはまった!」敵部隊が驚きの声を上げる。


「――弓隊、放てっ!」


 そこでミーシャは、仲間たちが構えた弓を一斉に射掛けさせた。

 物陰から飛来した弓に、敵兵が何人も倒れる。

 剣を抜いて飛んでくる弓を打ち落とそうとする者もいるが、姿を隠しながら放たれる矢になすすべもない。

 やがてミーシャは、小剣を抜いて敵部隊に突入した。


「敵襲!」驚いて叫んだ兵士をまず、一撃で切り伏せる。

 ぬかるんだ大地を避けるため、ミーシャは倒れた敵兵を足場にして、踊っているかのように剣をふるった。

 ただでさえ身動きが取れずにもがいていた敵部隊はすぐに数を減らし、やがて小隊長もミーシャに討ち取られる。

 

「よし、移動だ!」


 十数人を全滅させ、味方に一切の被害がなかったのを確認したミーシャは、近くにいる仲間の元へ向かった。

 罠の効果もあってか、緒戦は優勢。負傷者はいたものの死者はなし。

 けが人は速やかにエリサの回復魔法で治療を受ける。


 すると、森の入り口から大音声が聞こえてきた。


「賊の拠点を発見! 至急、増援求む!!」「領主様! どうぞ突撃命令を! お味方圧倒的優勢です!」


 それから少しして、大人数がガヤガヤと動く気配がした。

 ミーシャが、するすると木に登って様子を見る。バラバラと全軍で突撃を仕掛けてくるゲオルグ軍の姿があった。


「あいつ……やりやがった。本当に、バカだ!」

 

 金ぴかの鎧を身にまとったゲオルグが、本陣すら空にして、剣を振り振り、馬で森へ駆けてくる。


「みんなに伝令。偽報作戦は成功! 敵をもっと奥まで誘い込め!」


 木から降りつつ、ミーシャはそう叫んだ。

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