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白魔女ちゃんとパーティ組んだら、アタシの堅実冒険者ライフが大崩壊! え、ちょっと待って。世界を救うとか、そういうのはマジ勘弁して欲しいんスけど……!~記憶の魔導書を巡る百合冒険譚~  作者: 難波霞月
第2期 第3章 記憶の魔導書を巡る百合合戦譚。

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第32話 決戦の日に向けて

 さらに2日後には、次の動きがあった。

 シャロンの街に残った同志からもたらされたのは、


「討伐部隊?!」


 凶悪犯のミーシャ一味がアルゴンヌの森に逃げ込んだとして、討伐部隊が派遣されるという話だった。

 なんでも、アルゴンヌの森に跋扈している盗賊団の客分として迎えられた、ということらしい。


「アルゴンヌの森に盗賊が出るという噂は、もともとゲオルグが流したデマらしいわ。架空の討伐部隊を自ら率いて出向いて行って、適当な革鎧や兜あたりをボロボロにしたやつを持ち帰って、自分の武功を偽装していたらしいのよ」


 ゲルダがそう吐き捨てた。だが、


「しかし、今度はどうなるか、だな。もしかしたら、ワシらがここにいると感づいたのかもしれない」


 元ギルマスが禿げ頭を撫でながら言う。


「ゲオルグはともかく、スコラ修道会の連中は、鼻が利きそうだ。しかし、それならもっと早く強襲するだろう」


 肉まんじゅう屋のおじさんも、たっぷり肉が付いた顎を撫でながらそう言った。


「あのー。ちょっといい?」


 会議の場、末席に座っていたミーシャが手を挙げる。


「どうしました?」


 一番前の席に座っていたソニアが、ミーシャの発言を許可した。


「ゲオルグ側って、結局、何人ぐらい戦力がいるんですかね?」


 すると、辺境伯家の中で下働きをしていたという、元文官が答える。


「歩兵は500人、騎士やお抱え魔術師は30名程度です。ただ、村落の巡回や国境警備などをしているのが半数以上ですから、動員できて兵士100名、騎士は10名程度でしょうか」


「それで、こちらの戦力は?」


「兵士が25名に、騎士が2名。あとはお2人です」


「えっと……じゃあ、だいたい4~5倍ぐらいの差があるわけだ」


「そうなりますね」


「勝てるの?」


 ミーシャの言葉に、場内はシーンとする。


「地の利を活かせば、2~3倍ぐらいの差は埋められますが」


「でも、あと2~3倍分足りないなあ」


 うーん、とミーシャは腕を組んで考える。


「それに、スコラ修道会の連中も来るんだろう?かなり厳しいというか、負け……」


 ミーシャは続きの言葉を飲み込んだ。厳しい視線があちこちから飛んできていたからだ。


「ま、まあとにかく、普通の戦い方じゃダメだってことだろ?」


 本当に、討伐部隊が来るとしたら、あと1,2日後には出発するだろう。

 シャロンの街からアルゴンヌの森までは6刻(6時間)程度。早朝に出発して、昼には森に到着。

 そこから手探りで戦って、数日過ごすぐらいだろうか。


「本当に、討伐部隊が来るのなら、今日明日中に、できることをやっておこう」


 土牙に草絡め。その他大小の罠などを仕掛けるくらいはできるだろう。

 それに、いざというときの逃走ルートも確保しておいた方がいい。

 思いつく限りを、ミーシャはその場で述べた。

 すべての提案が採用されたわけではないが、それでもかなりの準備は今からでも可能だった。

 とたんに、廃僧院は忙しくなった。


 みんながドタバタし始めると、ミーシャとエリサは、放っておかれてしまった。

 しかたなく、武器の手入れや、食料などの準備を手伝う。

 そんななか、エリサがきわどい話を切り出した。


「ミーシャさんは、人を殺したことがあるんですか?」


 この質問に、ミーシャはぐっと押し黙った。そして、少しの間をとり、


「……あるよ。生き延びるために、仕方がなかったから」


 ミーシャの答えに、エリサは無言で深くうなずいた。そして、


「……わたしもです」


 その言葉に、ミーシャは息を呑んだ。

 

「変なことを聞いてごめんなさい。でも、どうしても、話しておきたかったから」


 それからエリサは、「えへへ」とごまかし笑いをして、手元の作業に視線を落とした。



 シャロンの街からの情報は、逐次届いた。


「討伐部隊が編成されて、明日早朝にはこちらに向かって進軍するようだ」


「予想通り、正規兵は100名、騎士が10名。指揮は、辺境伯直々に執るらしい」


 「ゲオルグが指揮官か。なら、負ける方が難しいな」と誰かが言った。すると、会議の場にどっと笑いが起こった。


「罠はどれくらい仕掛けたんだい?」


 ミーシャが聞くと、土牙に草絡め、落とし穴に逆茂木など、相当量を仕掛けたという。

「ちょっとした罠なら、年寄りでも作れるからね」と、元乳母の老婆が腕まくりした。


「それに、ちょっとしたいたずらを、途中の集落でしておいた。もしゲオルグが本当の間抜けなら、引っかかるぞ」


 肉まんじゅうのおじさんも、そういって悪戯っぽく笑う。

 そういえば、元ギルマスと2人で、こそこそどこかへ行っていた。


「状況によっては、シャロンの街の中で、同志が蜂起することも視野に入れています。手筈は整えました」


 元文官も、自信たっぷりにそう言った。


 「……みんな、ありがとう。できることはすべて、力を尽くしてくれたのですね」


 それぞれの話を聞いたソニアは、席から立ち上がると、みんなに向かって頭を下げた。


「ひ、姫様。もったいない」


 庭師だったという老人が、おろおろしながら、ソニアの礼に応える。


「今、わたしができることはこれくらいしかないの。本当に、ありがとう」


 ソニアがなおも深々と頭を下げる。

 

 ミーシャはその様子を見て、家臣でもないのに、不意に胸が熱くなった。


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