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白魔女ちゃんとパーティ組んだら、アタシの堅実冒険者ライフが大崩壊! え、ちょっと待って。世界を救うとか、そういうのはマジ勘弁して欲しいんスけど……!~記憶の魔導書を巡る百合冒険譚~  作者: 難波霞月
第2期 第3章 記憶の魔導書を巡る百合合戦譚。

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第31話 ブノア派は仕掛けが好きみたい

 それから、1日が経った。

 センイが殺害されたことと、ブノア修道会の火災は、すべて『鬼殺し』のミーシャ一味の犯行、とされた。

 火災によって、司祭のソニアは死亡または行方不明とされ、焼け跡は立ち入り禁止となったらしい。

 そうした情報は、シャロンの街の中に残っている同志からもたらされていた。

 ミーシャは濡れ衣の罪がまた1つ増えたことに腹を立て、エリサとモディラになだめられた。

 一方、ソニアは、忠臣であったセンイの死に心を痛めたようだが、つとめて明るく振舞っていた。


 そんな折、ミーシャとエリサは、魔法の羅針盤を見ていた。

 2人の旅の目的は、あくまでもクロウテルの魔導書探しだ。

 

「近いね」


「近いですね」


 そういえば、モディラからはヴァーダンの僧院の図書目録に、クロウテルの魔導書の名があったと聞いた。

 だとすれば、その一部がここに眠っていても、不思議ではない。


 2人はそう考え、この廃僧院内の図書室を探すことにした。

 あちこちの部屋は、旧フィルマール子爵家の反乱軍が武器庫などに使用しているようだった。

 僧院内を行違う人々や、それぞれの部屋にいる人など、見当をつけると50人もいないぐらいだろうか。


 途中、忙しく立ち働くモディラとすれ違った。


「モディラって、前から反乱軍のメンバーだったの?」


「いいえ。昨日の火事に巻き込まれてから、こんなのがあるなんて初めて知りました!」


「その割には、よく頑張ってるみたいだけど」


「だって、司祭様のお役に立てるんですよ!」


 そういって、モディラは荷物を抱えて、元気よくトコトコ走り去る。


「ふふっ。モディラさん、かわいいですね」


 エリサはモディラの様子を見ながら、ほほ笑んだ。


 ついで出会ったのはゲルダとギルマスの親子だ。


「何してるの?」


「武器の手入れ。ソニア様がこちらに来られたってことは、決起の時が近いってことだもの」


「あ、ギルマスのおじさま。肉まんじゅう屋さんのおじさまにはお世話になりました」


「ああ、弟の奴と会ったのかい。あいつの肉まんじゅう、うまいだろう」


「いやー。実は食べ損ねてました」


「なんだ。だったら、どこかで食わせてやるよ」


「はい、お願いします」


 そして奥の部屋では、ソニアが一人、祈りをささげていた。


(声はかけないようにしよう……)


 図書室は、礼拝堂の脇の廊下を、さらに奥へ行ったところにあった。

 鍵がかかっているが、それはミーシャの手わざで難なく開く。

 ドアを開けると、狭い小部屋だ。長い間誰も入っていない、ほこりっぽい匂いが鼻をついた。


 高いところに小さく開けられた窓ガラスから、細い光が差し込んでくる。


「エリサ、わかる? アタシ、文字読めないから何の役にも立ちそうにない」


 ミーシャがそういったので、エリサは本棚をくまなく探した。だが、特にこれと言って該当しそうなものはない。


「うーん。羅針盤の反応は、すぐ近くみたいなんだけどね」


 ミーシャが手にした羅針盤では、すぐ近くを指していた。


 「それにしても、みんなよくこんな狭い部屋で本なんか読めるなー」


 ミーシャは、大型の本を読むための書見台に手をついた。すると、変な手ごたえがあった。


「なんだ? 動くのか?」


 ミーシャが書見台をぐいっと押すと、古い木製の書見台が鈍い音をたてて横に動く。


「……?」


 すると、書見台があった床の石材に、妙な切れ込みがあった。


「エリサ、ちょっといい?」


 ミーシャはエリサを呼ぶと、その切れ込みに手を入れ、持ち上げる。


 すると、


「隠し棚かー」


 床下に掘られた、小さな収納スペースが姿を現した。

 中には、古い金貨が少しと宝石のついたカギ、シャロンの僧院で見たときと同じような、油紙で包まれた紙束。


「これだよね?」「これですね」


 2人は油紙の包みをほどくと、エリサが持っていた紙束と揃えてみる。

 すると、まるで吸い付くかのように、ぴたっと2つが重なって、離れなくなった。


「やった! 当たりだ!」「これなら、あとは表紙の部分だけですね!」


 エリサはくるくる回って喜びを表す。

 ミーシャは、同じ収納スペースに入っていた古い金貨とカギをさっさと収集した。


「あれ? おふたりとも、どこに行かれてたんですか?」


 図書室から戻ってきた2人を、モディラが目ざとく見つけて声をかけた。


「いや、別に」


「こんな時に、まさか、ふたりで、え、え、えっちなことしてたんじゃないですよね?」


 モディラが顔を赤くして言う。


「バカ! そんなことするわけないだろ!」


「えっちなことってなんですか?」


 エリサが首をかしげて聞いてくるので、ミーシャは「エリサは知らなくてもいいんだよ」といい、モディラの頭を小突いた。


「そんなことより、モディラこそ、どうしたんだよ?」


 話をそらそうと、ミーシャはモディラに尋ねる。


「ボク、このあと、ヴァーダンの僧院へお使いに行くことになりました」


「えっ! まさか一人で?」


「いいえ。ちゃんと道案内の人も一緒についてきてくれます」


 すると、ごく普通の農家のおばちゃんにしか見えない女性が、こっちの方をじっと見ていた。


「あの方と一緒に行ってきます。たぶん、数日もあれば戻ってくると思いますよ」


 そういうと、モディラは2人にぺこりと頭を下げる。


「それじゃ、行ってきます!」


 それからモディラは、おばちゃんと一緒に外へ出ていった。


 その様子を、近くで見ていた者がいた。ゲルダだった。


「うん。無事出発したか。よしよし」


「あ、そんなところにいたんだ。何がよしよしなの?」


「だって。あの子を戦争に巻き込むわけには、いかんでしょ」


「ああ、そういうことか……」


 ゲルダの言葉に、ミーシャは得心がいった。

 このままここにいれば、モディラは否応なしに戦に巻き込まれる。

 お使いと称して、この場から少しでも離れておくことが必要だ。

 

 ――あれ?


「あの、じゃあアタシたちは、どうなるのさ?!」


 するとゲルダは、ちょっと遠い目をして、


「いや、まあ、傭兵って位置づけで……ねぇ?」


 言葉を濁しつつ、2人の隙をついて、不意にどこかへ姿を消した。

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