表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白魔女ちゃんとパーティ組んだら、アタシの堅実冒険者ライフが大崩壊! え、ちょっと待って。世界を救うとか、そういうのはマジ勘弁して欲しいんスけど……!~記憶の魔導書を巡る百合冒険譚~  作者: 難波霞月
第1期 第1章 赤毛の冒険者、忘却の白魔女と出会う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/78

第8話 姫(?)騎士リンドムート様登場

 「ミーシャ。お前さん、あの娘をどこで拾ってきた?」


 「拾うって……猫じゃあるまいし」


「あの娘、ふつーじゃないよ。こんなこといったらなんだけど……ちょっと変わってるっていうか」


「ああ、うん。それはリリーの言うとおりだと思う」


「冗談じゃないぞえ。じゃが見たところ、庶民の出という感じはしない。貴族の子どものように高慢でもない。だが、世間ずれもしとらん。裕福な商家の娘なら、わざわざこんな危なっかしい稼業に身を投じるはずがない」

 

 「え? いや、家出娘をひっかけたわけじゃないよ」


 老人にじろりと見られて、ミーシャは慌てて否定した。


「だよね。ミーシャは、ナンパなんかしないもんね」


 リリーは何を思ったのか、見当はずれのことを言う。

 そんなリリーから、老人は、彼女が手にしていた羊皮紙を急にひったくった。

「きゃっ、なによおじいちゃん」リリーが抗議するが、老人はそれを無視して羊皮紙を食い入るように見つめる。

 心なしか、彼の手が震えていた。


「どうした、爺さん?」


 普段冷静な老人が、珍しく取り乱した様子でいるのを不審がり、ミーシャが声をかける。


「これを、見ろ」


 老人は、手にした羊皮紙をミーシャに見せる。


「なんだよ、爺さんまで。アタシ、字ぃ読めねえっつーの」


「そうじゃない。ほれ、ここじゃ、ここ」


 震える手で老人が指し示したのは、契印だった。

 エリサが縫い針を刺して指から出た血を擦り付けた場所である。


「きれいな青だね」


「ほんと、青いねー」


 ミーシャとリリーは、瑠璃色の契印をみて、思った通りのことを口にする。


「おい! 2人とも、阿呆(あほう)か!」


 周囲の者に聞こえないよう、老人が声を至極抑えて怒鳴った。


「な、なんだよ、急に」「そうよ! おじいちゃん。かわいい孫娘捕まえて、アホはないでしょ!」


 2人それぞれに反応を返すが、老人は気にも留めない。


「ふつう、人の血は、何色じゃ?」


「あ、爺さん、バカにしてるのか? そりゃあ赤に決まって――えっ?!」


 ミーシャが驚いて、契印を見ると、青い。確かにさっき、エリサはここに赤い血を擦り付けていた。


「どういうこと?」


 リリーはまだわかっていないようだ。


「この羊皮紙には、魔術刻印(セキュリティ)が織り込まれておるのは、知っておるな?」


「うんうん」2人は同時にうなづいた。


「魔術刻印の影響で、この契印は、色が変わることがある」


「え、そうなの?」ミーシャは懐から自分の身分証を取りだす。しかし自分の契印欄は、赤茶色の、血が乾いた色だった。


「その違いは、魔力の差だ。人が体内の保有しておる魔力……まあほとんどは微弱でしかないが、魔法使いや癒し手、家柄の古い貴族などは強い魔力を持っている。その場合、赤茶色が緑系に変化する。一般的な力量の者なら、暗いオリーブ色や黄緑色になる。賢者や宮廷魔導師など、ごく一握りの実力者は、青緑色になる」


「エリサのこれは、青だね」


 「《高貴なる血(ブルーブラッド)》……。わしは昔、一度だけこの色を見たことがある。今から数十年前、北の果てからやってきた古エルフの魔法剣士だ……」


「古エルフの、魔法剣士」


 ミーシャは、まるでおとぎ話のような展開に、ごくりとつばを飲む。


「あの娘、もしかしたらその魔法剣士の血脈なのかもしれん。古エルフの血が混じってないと、こうはいかんぞい」


「まさか」とミーシャは思わず口にした。


「あの娘、自分の生まれ故郷も両親のことを覚えとらんのだろう? あんなにおぼこい魔法使いもそうそうおらんからな。相当、人里離れたところで育ったに違いない。それに、ふざけた名前の師匠筋が、どこまで潜在的な力を伸ばしてやったのか」


「あの子、さっき魔女だって言ってたけど、本当に魔女だったりして」


 リリーが顎に手を当てながら、意味深な表情でミーシャに言った。


 ミーシャがそれを否定しようとしたとき、


「だれが、魔女だと?」


 ミーシャの背後から、凛とした女性の声が投げかけられた。

 その声の主を見た老人とリリーは、さっと威儀を正してかしこまる。


「えっ、だれ?」


 ミーシャが振り返ると、そこにはお付きの兵士を従え、甲冑に身を包んだ黒髪の女性がいた。

 年の頃は20代半ばだろうか。艶やかで豊かな黒髪をポニーテールにし、白皙の顔に優美な眉、意志の強さと貴族らしい余裕を兼ね備えた瞳。その顔に似つかわしくない、使い込まれた陣羽織(サーコート)と板金鎧。とはいえ仕立ては豪華で、一介の騎士ではない風情を漂わせている。


「これはこれは、リンドムート様。今日はもう騎士団の巡回はお済みなのですかな」


 老人が恭しく語り掛けると、ミーシャは(あ、これが例の姫騎士か)と思った。

 リンドムート・ド・カンブレー伯爵令嬢。通称、姫騎士。伯爵家の騎士団を率いる騎士団長である。

 「女が酔狂で騎士の真似事など」といわれることがあるが、「決闘で私に勝ったものとしか結婚しない」と公言しているうえに、本人は剣の達人のため、いまだに結婚できていない。


 当時、女性は遅くとも20歳を過ぎるまでには結婚するのが一般的であったため、近年は決闘の申込者も激減し、状況はもはや絶望的と言ってもよい。


「うむ。本日の巡回はつつがなく終えたぞ。ところで、さっき魔女がどうとか言っていたようだが……」


「ああ、いえいえ。なんでもございません。ところで、今日お越しになられたのは僥倖でしたな。ヨツデグマの新鮮な胆が手に入りましたぞ」


 老人は、リンドムートをあしらい、2階の方に視線を誘導しながら、手にした羊皮紙をさりげなくリリーに渡す。

 リリーも心得たもので、こっそりうまくそれを受け取ってしまいこむ。


「おお! それは素晴らしい。弟の養生に、熊の胆はなによりの良薬!」


「どれ、2階の部屋にて、実際にクマの胆を見ていただきましょうか」


 老人はリンドムートをそのまま2階に誘い、後ろ手にミーシャに(ついてこい)と手招きする。


(えー。アタシ、貴族嫌いなんだけどな……)


 そう思いながらも、ミーシャはしぶしぶ2人の後をついていくのだった。

もしよろしければ、評価、ブックマーク、感想などお寄せいただけるとありがたいです!

レビューやSNSでシェアしていただけると、とてもうれしいです。

では、また次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ