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白魔女ちゃんとパーティ組んだら、アタシの堅実冒険者ライフが大崩壊! え、ちょっと待って。世界を救うとか、そういうのはマジ勘弁して欲しいんスけど……!~記憶の魔導書を巡る百合冒険譚~  作者: 難波霞月
第1期 第3章 記憶の魔導書を巡る百合冒険譚。

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第49話 決戦!

ボス戦です!BGMにどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=oJgU63ONfPU

挿絵(By みてみん)


 ミーシャたちが祠から出て、眼下の巣の様子を見たとき、そこでは死闘が繰り広げられていた。

 

 身の丈はゆうに20尺(約6メートル)を超えるだろう、巨大なトロルである。頭部、背中、肘などからは、いびつに角のような突起がいくつも生えていた。ゴブリンの頭からは長い舌がだらりと伸び、よだれを垂らし続けている。

 

 腕は2本。これも長さ20尺はあるだろうか。太さは成人男性の胴回りほどある。かぎ爪はないが、岩のように固く分厚い皮膚に覆われている。これで軽くぶたれただけでも、人間には致命傷だ。何より、太いのは腹である。槍で刺したところで、固い皮と分厚い脂肪、そして筋肉により、わずかな傷しか与えることができないだろう。つまり、致命傷を与えることは困難だ。

 

 そして、そのトロルを相手に、騎士や冒険者たちが絶望的な戦いを強いられていた。


 見ると、騎士と冒険者をはじめ、ガマガエルのモリス、騎士のアンドレやリンドムートらが、死力を尽くして、トロル化したル・ガルゥに攻撃を仕掛けている。だが、ロングソードやポールアームなどでは、皮膚をひっかいた程度の傷しか与えられず、モリスの魔法もわずかな足止めや目くらまし程度しか効果がない。


 ぶん、とトロルが腕を振るうと、跳ね飛ばされた冒険者が、空高く舞い上がる。

 トロルはそれを乱雑にわしづかみにすると、がぶり、と一口で食いちぎる。


「げえっ!」


 ミーシャは思わず嫌悪に顔をしかめ、エリサは目を背けていた。


「遠巻きにしろ! 近づくとやられるぞ! 飛び道具で顔を狙え!」


 リンドムートが指揮して、全員が距離を取る。

 弓や投げ槍を飛ばすが、トロルは痒そうにそれを振り払う。


 「な、なんだあいつ……」

 

 「あの顔、魔法使いのゴブリンです……っ」

 

 2人は怖気を感じた。エリサは、【鑑定】の魔法を使って相手の性質を診る。


「……やっぱり! 魔法使いのゴブリンと、私たち戦ったトロルが融合して……強化してる!」


 エリサが、ぞっとした顔でミーシャを見た。


 敵が遠巻きになったのを見て、トロルは、腕を一本、下から上にすうっと上げる。


「やばい、あの動作は! みんな、逃げろっ!」


 ミーシャが叫んだ。

 その直後、トロルの周囲の岩石が浮かび上がり、四方八方に飛び散る。

 騎士の一人が、子どもほどの大きさの岩に跳ね飛ばされた。

 くるくると空中を待って地面に落ちた後、痙攣して動かなくなる。


「【石弾】の魔法!」


「くそっ! あいつ、魔法まで使いやがる!」


 崖の上から戦況を見て、2人は顔を見合わせる。

 怖い。はっきりいえば、いますぐ逃げ出したい。

 だが、騎士や冒険者たちが骸をさらし、また重傷を負って無力化した者も少なくないのを見て、

 (やるしかない)

 とミーシャは覚悟した。エリサと目が合う。エリサは、無言でうなずいた。


 「どうする?」

 

 「ここにある岩を、魔法でぶつけます!」

 

 エリサは祠の周囲に散らばる、人間大の岩たちを指さして言った。

 

 「そんなこと、できるの?」

 

 「今なら、できます!」

 

 エリサが凛とした表情で断言したので、ミーシャは、

 

 「わかった。みんなを安全なところに逃がして、アイツの注意を惹く。時間は?」

 

 「今すぐにでも!」

 

 そういうと、エリサは目を閉じ、強く集中し始める。

 

 わずかにエリサの体が白く発光し、ふわり、とローズゴールドの髪が宙に浮かぶ。

 

 岩がゴトゴトと唸り、わずかに浮かび始めた。

 

 ミーシャはそれを見て、崖上から眼下に向かって叫ぶ。

 

 「みんな! そいつから離れて、物陰に逃げろ!」

 

 全力で叫んだ。一瞬、ル・ガルゥも動きを止め、ミーシャの方を見る。


 「わかった!」


 リンドムートが叫んで返す。

 

 それから、人間たちは直後、クモの子を散らしたようにル・ガルゥから逃げだした。

 

 ル・ガルゥはどの人間を追おうか少し迷った挙句、崖の上のミーシャに狙いをつけて動き始める。

 

 「エリサ!」

 

 「はい!」

 

 エリサが【念動】の魔法を発動させ、無数の岩々を空高く浮かびあがらせた。

 そして、まるで雨のようにル・ガルゥに向かって降り注がせる。

 

 それは攻城兵器の投石機を、何十台も動員したかのような猛攻撃であった。

 ル・ガルゥは1つ、2つ程度の岩は、腕を掲げてはじいていたが、やがて十、二十と降り注ぐにつれ、腕、頭、胴と激しく打ちのめされ、やがて頭を抱えて丸くなった。

 

 「効いてる!」

 

 ミーシャはル・ガルゥが弱り果てているのを見て、エリサに向かって叫ぶ。

 

 「ミーシャさん、行ってください!」

 

 「えっ!?」

 

 「大丈夫です。行けます。ミーシャさんの剣で、斬ってください! さぁ、ここから飛んで!」

 

 エリサの言葉に、ミーシャは崖下を覗き込んでたじろいだ。ここから飛び降りれば、普通に死ぬ。

 

 「いや、それは無茶だって……」

 

 「いいから!」

 

 エリサのすごい剣幕に、ミーシャは(ええい、ままよ!)と覚悟を決めた。

 そのとき、ミーシャの瞳がすぅ、と赤い光を宿す。

 ミーシャはショートソードを抜きはらうと、

 

 「でやあああああああっ!!」

 

 一声叫び、崖下にいるル・ガルゥ目がけて飛んだ。

 

 飛んだ直後。

 

 (え……行ける?!)

 

 ミーシャは不可思議な確信を抱いた。体の動きが全てコントロールできている。

 力の入れ加減、視覚、聴覚などの五感、すべてがクリアになっていた。

 ミーシャは落下しながら、ショートソードを突き立てる体勢になる。

 

 だが、相手もやすやすと殺されはしない。


 ぶうん! とうなりをあげて、巨木のような腕がミーシャを払いのける。


「ぐわっ!」


 ミーシャは避けることもできず、その一撃に薙ぎ払われた。

 普通の人間なら、この一撃でぐしゃぐしゃになるだろう。

 戦いを見守っていた誰もが、そう覚悟した。

 だが、ミーシャは払い飛ばされながらも、空中で体勢を整え、崖を足場にして、あきらめずにル・ガルゥに飛びかかる。


「グガアアッ!」


 再び、ミーシャを払いのけようとする剛腕。だが、ミーシャは、迫りくる腕を一刀のもとに切り捨てた。


 切り飛ばされた腕は宙を舞い、やがて、どう……という地響きとともに、もうもうと土煙が上がる。


「ギャアアオウ!」


 ル・ガルゥは苦悶の表情を浮かべたが、3本の手の1つで落ちた腕をつかみ上げ、残りの2本でミーシャに打撃を仕掛ける。その間にも、彼は拾った腕をバリバリと食らう。


 ミーシャはその間に着地して、剣を構える。


 「ミーシャさん!援護します!」


 エリサは錫杖を振るって、【雷陣】! と電撃を飛ばす。

 すると、杖の先から激しい稲妻が巻き起こり、ビシャン! とル・ガルゥを打った。


「ギャアアアアアア!」


 ル・ガルゥは、強烈な電撃を受けて倒れ伏した。頭を抱えて守ろうとするが、体がしびれてあまりうまく動かない。


「今だ!」

 

 ミーシャは、電撃により痺れを起こした隙を見逃さなかった。

 跳躍し、剣を一閃。

 頭をかばうようにしていた腕と腕の隙間、わずかにさらしていた頸部に、一撃を加える。

 一瞬の間、そして、吹き出す鮮血。わずかな間の後、ル・ガルゥの首が、どん、と地に落ちた。

 

 切断した頸部から、おびただしい血が噴出する。

 

 さらに少しの間があり、頭部を失ったル・ガルゥの巨体が、激しい地響きを立てて地に倒れ伏した。

 

 「……勝った」


 ミーシャの記憶は、そこで途切れた。

明日21時半更新です!


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