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白魔女ちゃんとパーティ組んだら、アタシの堅実冒険者ライフが大崩壊! え、ちょっと待って。世界を救うとか、そういうのはマジ勘弁して欲しいんスけど……!~記憶の魔導書を巡る百合冒険譚~  作者: 難波霞月
第1期 第2章 ゴブリンたちと森の秘密

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第36話 魔導書確保の作戦会議!

「食べながらでいいから、聞いてほしいんだけど。今日の午後……そうだね、今から5刻(約5時間)後ぐらいに、討伐隊が出発する。たぶん、アタシたちはそれよりも早く、場合によっちゃ3刻後ぐらいには、呼び出されることもあると思う。それまでの間に、色々と準備があれば、すませておかないといけない」


 エリサは、視線をこちらに向けてコクコクとうなずく。


「一番肝心なことは、どうやって、みんなに気づかれずに《魔導書》を回収するかの作戦を立てること、だよね」


 すると、エリサはさっきよりも大きくうなずいた。


「一応聞くけどさ、あの祠に、本当に《魔導書》があるの?」


 大事なことをミーシャはエリサに問う。エリサは「はい。昨日、見に行きました」とだしぬけに大変なことを言った。


「見に行ったって……どうやって?」


「えっと、うまく説明はできないんですけど、こう……体から魂だけ抜け出して……」


「それって危なくないの?」


「何かあると、死んじゃいます」


「……その魔法、今後は使用禁止。もうよっぽどの時しか、使っちゃダメ!」ミーシャは内心ヒヤヒヤしながら言う。

 だから昨日、あれだけゆさぶっても起きなかったのか。っていうか、ゆさぶっても死ななかったから、ホントよかった。


 ミーシャがそんなことを考えていると知ってか知らずか、「はぁい」とエリサは素直に返事をした。


 「で、どうだった?」


「祠の中に、確かにありました。あれは間違いないです。本物の《クロウテルの魔導書》です」


「じゃあ問題ないね。そこに、罠みたいなものはあるかわかったの?」


「いえ。侵入防止のための結界が張られていたみたいですけど、もうかなり前に機能しなくなっているみたいでした」


 ミーシャにとって、結界というのはよくわからないが、ともかくは安全らしい。


 「わかった。じゃあ目指すお宝は、ともかくそこに行きさえすればどうにかなりそうだね。あとは、ゴブリンたちがそれを持ち出さないようにすることと、討伐隊に見つからないようにすることだね」


「ゴブリンが持ちださないようにするのは分かりますけど、討伐隊に見つかるとどうなるんですか?」


「うーん。基本的には、山賊退治やゴブリンの巣の掃討のときは、見つけたお宝は早い者勝ちなんだけど……でも、中には持ち主から奪還依頼を受けていたりするものは引き渡さないといけない。それに場合によっては、今回の依頼人であるカンブレー伯爵の所有権になることがある。アタシたちは、伯爵にやとわれた冒険者だから、価値のあるものは依頼人に献納しないといけない。もちろん、それなりの特別報酬は出るけれども」


「それは困ります!」エリサが心底困った顔でいう。


「だろう。だから、どっちかというと、どうやって討伐隊の連中を出し抜くかが必要なんだ」


 「あー。困りましたね、どうしよう……」

 

 「まあ、道案内はしなきゃいけないから、現地についたら、戦闘のどさくさに紛れてまっすぐ祠に行こう。で、いち早く魔導書を確保して、後は戦闘が終わるまで隠れていればいいと思う」

 

 「そんな大まかな感じで、大丈夫なんですか?」

 

 「まあ、おおよそ大丈夫だと思うよ。細かく作戦を立てても、現地で予定通りにいくとは限らないでしょ。むしろ、変に細かくしたほうが、予定外のことが起きたときに混乱しちゃう。討伐隊は、巣にいるゴブリンを全滅させることが目的。アタシたちは、祠の中にある魔導書を手に入れるのが目的。目的が違うんなら、奪い合いにはならずに、うまくやれるでしょ」

 

 ミーシャはそういってから、頭の中で何か考える。そして、

 

 「ねえ。【認識阻害】の魔法って、生き物にしかかからないの?」


 とエリサに尋ねた。


 「どういうことですか?」

 

 「いや、討伐隊が近づかないように、祠に【認識阻害】をかけておけば、無視されるかなって思ったの」

 

 エリサはミーシャの言葉を聞いて、うーんと唸り、考え込み始めた。

 

 「……【認識阻害】は基本、手元での発動だから……【投射】の効果を付与して……それに範囲が大きいから【範囲拡大】も足して……ぶつぶつ……」

 

 エリサは、ミーシャそっちのけで顎に手を当て、何やら一人でぶつぶつ言いだす。

 どうも、何かしらの計算をしているようだ。

 

 (エリサって、こういうところがあるんだ)

 

 ミーシャは、エリサの意外な一面を見て少し驚いた。

 

 「ミーシャさん。いけます。並の魔法使いは無理ですが、わたしならできます!」

 

 ややあって、エリサはミーシャをまっすぐに見つめてそう言い切った。

 

 「……お、おう。エリサ、頼もしいね」

 

 ミーシャはエリサの自信たっぷりな言葉に少しのけぞりながら、

 

 「もし、現地についてアタシたちが単独で動けなさそうなときは、エリサが自分に【認識阻害】をかけてその場を離れて。その後、アタシも探しに行くふりをして抜け出す。道案内は、現地にさえつけば役目は終わりだから、何とかなると思う」

 

 と作戦を伝える。

 

 「了解です。ミーシャさんって、頭いいんですね! すごいです!」

 

 エリサは、さっき抱いた不安が消し飛んで、喜びを抑えきれずに、ミーシャの胸に飛び込んだ。

 

 (いや、【認識阻害】なんて超便利な魔法を使えるエリサの方がすごいんだけど)

 

 ミーシャはエリサの頭をなでながら、そう思った。


土日はお休みで次話は月曜日に更新します(月・水・金更新)


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