表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶の魔導書を巡る百合冒険譚!  作者: 難波霞月
第2章 ゴブリンたちと森の秘密。
18/30

第18話 壊れたギルドで朝食を

「おっ、昨日の王子様とお姫様のお出ましだぜ」

 

「ミーシャ。昨日はいいもん見せてくれたな。格好良かったぜ」


 ミーシャとエリサが、トレイに乗った朝食セットを手に、何とか座れそうなスペースを探していると、おっさんたちがはやし立てた。


「爺さんにたっぷり請求されたから、おかげさまで、もうアタシたち破産寸前よ」


 ミーシャは、おっさんたちの近くに座る。椅子はないから、そのまま床にあぐらをかいた。エリサはその横に、ちょこんと正座する。

 朝食のメニューは、パンがゆとチーズ、こんがり焼いたソーセージに干した杏、ハーブをひたしてさっぱりした香りのする冷たい水。

 パンがゆは、焼いて何日も経って固くなったパンをスープでふやかしたものだ。味がよくしみて、意外とおいしい。


 「しかしよ、爺さんから聞いたぜ。ヨツデグマだなんて、よく仕留めたな」

 

 「今の時期のあいつはよ、騎士団連中が10人束になってやれるかどうかだぜ?」

 

 「あれは、まぁ、たまたま運がよかったから」

 

 ミーシャはそういってごまかした。エリサはというと、もくもくとパンがゆを口にしている。もくもくと食べている割には、とてもゆっくりしている。

 『早寝早飯芸のうち』などといわれ、どこでもすぐに寝られること、食事はとにかく早く終えることを美徳とする冒険者稼業としては、エリサの食事はまさに『お姫様』である。

 

 「でもよぉ、お前も、ゴブリンの巣探しの仕事、受けてるんだろ?あの仕事、先に見つけた者の早い者勝ちだからなぁ。あんまりのんびりしていていいのか?」

 

 「おっさんたちは、集落探しじゃないの?」

 

 「いやいや、俺らは掃討の方をやるからよ。そういうのは、若い奴らの仕事さ。駆け出しの連中、みんなだいぶ前に張り切って飛び出してったぞ。場所を特定して金貨5枚。掃討に参加して金貨5枚。だったら、あくせく動き回らずに、のんびり待ってた方が楽だわな」

 

 そういって中の一人は、タンブラーをあおった。

 

 「あ、おっさん。朝から飲んでるのかよ」

 

 ミーシャが突っ込むと、その一人は「えへへ」と笑う。

 

 「しかしよ、お前を含めて6~7組がこの依頼を受けてるみたいなんだ。でさ、森の街道沿いからそう深い階層ではないはずなんだけどな、なぜか10日たっても、まだ誰も見つけられてないんだよな。ゴブリンの巣なら、大抵3日もあれば、最低でも手がかりぐらいは見つけるんだけどな。おっかしいよな」

 

「アタシも2日探したけど、ほんと、何もないんだ。時々、うろついてるやつらに出くわしたり、いろいろやらかした後の痕跡は見つけたりしたんだけどさ。一度、後をつけていったんだけれど、いつの間にかいなくなっちゃうんだ」

 

 「お前ほどのスカウトが、後を見失うなんておかしいよな。どうしたんだろうなぁ、まあ、せいぜい頑張ってくれよ。俺たちおっさんは暴力が仕事だからよ」

 

 そういうと、冒険者たちは皆「がはは」と笑う。

 

 「そういやお嬢ちゃん、魔法使いなんだろう?魔法でばーっと、探せないのかい?」

 

 甘くて軽い酸味がある干し杏を、大切そうに両手で持って、むっちむっちと食べていたエリサに、冒険者の一人が声をかけた。

 

 「探索魔法を使えば、できるとは思います。でも、おおよその方向ぐらいしかわからなかったり、必ず集落をピンポイントで見つけたり……みたいなことは難しいです」

 

 「ふーん。魔法っても、万能じゃないんだなぁ」

 

 「まあ、魔法使い自体、この辺じゃあんまりいないだろ?ほら、あいつ、ガマガエルのモリス。あいつはこの辺で依頼を受けるパーティのメンバーだけど、もっぱら土系・水系の攻撃魔法が主体らしい」

 

 ガマガエルのモリスと聞いて、エリサがびくっと肩を震わせた。

 

 「冒険者になる魔法使いは、遠距離攻撃役か回復役だろうな。探索系は、スカウトがいればたいてい賄えるし」

 

 「でもよぅ、モリスのヤツ、ああ見えて結構いい学院出てるらしいぜ?王都のそれなりに名の通ったところで修業したらしい」

 

 「だったら、なんで冒険者なんかに。それなら、宮廷魔導士とか、貴族のお抱えとかあるだろう?」

 

 「いやな……アイツ、探知魔法で同僚の女の子の、風呂やら用足しやら覗いてたらしい。それで、ぷふっ……それがバレて、探知魔法を師匠に封印されたらしい」

 

 男たちの話を聞いて、ミーシャとエリサは一様に(うわ、気持ち悪い)と眉をしかめた。

 

 「ところで、お嬢ちゃんは回復魔法も使えるんだろ?だったらよ、掃討の方も手伝ってくんねえかな。集落を見つけたら、だいたい10人ぐらいのメンバーで行くんだけど、回復魔法を使えるやつが1人しかいねえんだ」

 

 「えっと……どうしましょう」

 

 あんまりおいしそうに食べてるから、と壮年の剣士からもらった2つ目の干し杏を食べながら、エリサはミーシャの方を見た。

 

 「まぁ、ゴブリンの巣掃討ぐらいなら、大丈夫だと思う。そのかわり、アタシもついていく」

 

 「ミーシャさんが一緒じゃないと、わたし行きませんから!」

 

 「仲のよろしいこったねえ」といいつつ、男たちがゲラゲラ笑った。中の一人がミーシャに向かって言う。

 

 「じゃあよ。さっさと集落見つけてきてくんな。爺さんの方には、俺から話通しておくからさ」

土日はお休みで次話は月曜日に更新します(月・水・金更新)


もしよろしければ、評価、ブックマーク、感想などお寄せいただけるとありがたいです!

レビューやSNSでシェアしていただけると、とてもうれしいです。

では、また次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ