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33 白兵戦最強の酔鬼隊

 大陸暦718年1月27日 1:00

 薄く輪郭を光らせるだけの暁月(ぎょうげつ)の夜。

 ()てつく寒さに覆われた真冬の海は、どす黒く、静寂の中で絶え間なく波音だけが繰り返されていた。

 闇に身を潜める兵たちは、一面の闇に沈む海に、引き込まれそうな感覚を覚えた。

 東西の湾の先端とその周辺には、篝火(かがりび)煌々(こうこう)()かれている。トネール砲のあった位置には、これを防御するための遮蔽物(しゃへいぶつ)が並べられていた。


 東の湾の先端

 湾の先端に灯る篝火が風に揺れる。その周辺の海面だけが、篝火の数だけ反射して波が輝く。静寂の中で、兵士たちの鼻からする呼吸音がスースーと夜陰に消えていく。

 篝火に照らされ、人影が写った。人影は闇から生れ出たように2つ3つと増えていく。手に持つ斧の刃が篝火を銀色に反射し、胸の鎧が黒光りしている。その人影は数を増して、ついに200を越した。その人影は息を殺して、トネール砲を隠している遮蔽物の前に来る。東の湾の先端も、西の先端も同様に人影に囲まれている。

 ドカンとその遮蔽物を蹴り倒すと、そこには何もなかった。

 「ウグガガー!」

人の言葉とは思えぬような不満の叫び声が、篝火に照らされる波に響いた。

 「撃てー!」

 人影から100m離れた場所から銃士隊1,000名による一斉射撃が行われた。その銃士隊の真上を砲弾が通過していく。

 幾多の砲弾が閃光と爆発音を上げ、薄暗い東の湾の先端をフラッシュのように照らした。その閃光が煌めくたびに、鎧に身を固めた人影が重力に逆らって宙に舞い、鎧が黒く鈍い輝きを放った。

 それに(ひる)むことなく、次々に湾の先端にアードラー帝国軍兵たちが上陸して来る。そこへポルト銃の2射目が撃たれた。兵士たちはバタバタと音を立てて倒れていく。第3射、第4射と続いた。

 トネール砲による2回目の斉射による砲弾が着弾した。

 「撃ち方、止め!」

ソレイユが指示を出した。

 「・・・・」

 「・・・・・・・・・・」

 銃撃と砲撃の止んだ東の湾の先端の地は、辺り一面に硝煙(しょうえん)の匂いに包まれている。時折、飛び散った篝火の残骸が、炭火のように橙の炎を出し、パチパチと爆ぜる音が静かに聞こえてきていた。

 「・・・・ふーっ」

凝視していたソレイユ軍の兵士たちは、安堵(あんど)の息を漏らした。

 篝火の残骸に照らされ、黒い鎧が光った。むくむくと起き上がる人影が無数に見える。ソレイユ軍の兵士たちは、この人影を声も出ず、信じられないという表情でただ見つめていた。

 起き上がった無数の人影が雄叫びを上げて突撃して来る。そこには、両腕がもげ、ただ獣のように口から唾液を垂らし、歯を()き出して向かって来る兵もいた。

 「撃てー!」

 ポルト銃が火を噴く。人影は倒れるが、また唸り声を上げて駆けだして来る。ソレイユ軍兵士の心を恐怖が支配する。

 「撃てー!」

 バタバタと倒れ、そこに立っている者はいなかった。

 「・・・・・・これで倒せたよな・・・」

 「たぶん・・・そうでないとすると、奴らは不死身だ」

 「・・・・・・・」

 ソレイユ軍兵士たちが静まり返った湾の先端で唾を飲み込み、倒れた人影を注視していると、突然ソレイユ軍の銃士隊は、新たな敵に側面から突撃された。恐怖に支配されていたソレイユ軍は、その側面攻撃に反応できず、痛撃を受ける。

 「ジル、応戦だ! 銃士隊は退け。退いて砲撃隊を守れ!」

ソレイユの指示が飛んだ時には、銃士隊とアードラー帝国軍兵の間にジル隊が割って入って行った。激しい肉弾戦が開始された。

 時間と共に、上陸するアードラー帝国軍兵は数を増し、熾烈(しれつ)さを極めていく。

 ジル隊の兵士が、アードラー帝国軍兵の鎧の隙間を狙い、腹を槍で突く。槍で貫かれたアードラー帝国軍兵は、悲鳴を上げることもなく片手斧でジル隊の兵士の頭をかち割った。

 ジル隊の兵士の振り下ろした剣の一撃で、アードラー帝国軍兵の腕が切れ飛んだ。それにも苦痛の表情を浮かべることなくアードラー帝国軍兵は、片手斧で兵士へ斬撃を浴びせた。

 「ハア、ハァ、ソレイユ様、このアードラー帝国軍兵は妙です。不死のようです」

 「こっちも同じです・・・槍で突いても、何もなかったかのように反撃してきます」

 「・・・信じられん。手足を失っても、攻撃してくる。ぐがぁー」

 ソレイユ兵は白兵戦で押され続け、兵の数を減らしていく。

 ソレイユも敵兵の斧を(かわ)しながら、同様のことを感じていた。

 「確かに、不自然だ。防御をせずに斧を振るってくる。・・・此奴らに恐怖という本能はないのか」

 その時、強烈な異臭がソレイユの鼻を刺激した。

 「何だ、この刺激臭は」

 その刺激臭はアードラー帝国軍兵から放たれていた。星の(またた)きで僅かに照らされるアードラー帝国軍兵の顔を見て、ソレイユの頭にマリ村での兵士の「青い体の酔鬼(すいき)隊」という言葉が(よみがえ)って来た。

 「青い体の酔鬼隊・・・此奴らは、アードラー帝国軍最強の白兵戦部隊、酔鬼隊なのか!」


 酔鬼隊とは、アードラー帝国軍奴隷兵から選抜された白兵戦の精鋭部隊であった。

 ある植物の煮汁を飲用すると、数時間の間は、人としての理性と恐怖心をも失い、狂暴性と残忍性が極限にまで高まる。

 また、同時に痛覚が麻痺するため、脳や心肺に致命的な損傷を負う、或いは出血死するまで戦う狂戦士へと変貌(へんぼう)する。

 煮汁の飲用後数時間は、肌が青白くなりなり、酒に酔ったように呂律(ろれつ)が回らなくなるため、酔鬼兵と呼ばれていた。


 ソレイユは、酔鬼兵の鎧の隙間(すきま)を狙い、その脇をサーベルで突いた。サーベルは左脇から右脇へ貫通した。酔鬼兵は眼をぎょろりとさせてソレイユを(にら)み、

 「ウガロロレー」

と、意味の分からぬ言葉を発し、斧を振り下ろして来た。

 ソレイユは体を(ひね)り、この一撃を(かわ)した。サーベルを脇から引き抜くと、そのまま(のど)に突き刺した。酔鬼兵はそのまま仰向(あおむ)けに倒れた。しかし、起き上がろうと動き始める。

 「此奴らは、本当に不死身なのか・・・」

とソレイユの背中にゾゾゾー恐怖が走った。

 起き始めた酔鬼兵は、そのまま崩れるように地に伏せると、絶命していた。

 「・・・皆の者、聞けー! 此奴(こやつ)らは、死ぬぞ。しぶといだけだ。脳と心臓、喉を狙え

 それでも、必ずカウンターが来る。それに備えよ!」

ソレイユが叫んだ。

 それを聞いた巨漢のジルが嬉しそうに、

 「聞いたかー! 吉報だぞー! 奴らはしぶといだけだ。

 死ぬのなら、倒せる。(ひる)むなー!」

と叫んだ。

 「「「「「うぉぉぉー!」」」」」

と、兵士たちが(うな)り声を上げた。

 ジルに励まされ、士気を高めた兵たちが、酔鬼兵に(おど)りかかって行った。

 その時、ソレイユ軍兵数人が、吹き飛ばされるように宙を舞った。巨躯(きょく)の酔鬼兵が、辺り構わずに大斧を振り回していた。

 「怯むなー! このでかい酔鬼兵を倒すぞー」

兵士たちが一斉に飛びかかるが、大斧で一蹴された。

 「ギャロロ、ブロロー!」

と、その酔鬼兵雄叫びを上げた。

 ソレイユがその巨躯の酔鬼兵を視界に捉えると、サーベルを手にしたまま斬りかかって行った。


 西の湾の先端

 オーベルシュトルツの副官クルーゲが叫ぶ。

 「頭や喉などの急所を狙え。それでも反撃に注意しろー!」

 「レン殿、此奴らは白兵戦最強の酔鬼兵。一撃で致命傷を負わさなければ、カウンターが返ってくる」

と、オーベルシュトルツが叫んだ。

 酔鬼兵の(しかばね)の山の中に立つレンは、

 「ハア、ハア・・・そのようです。既に反撃を受けました」

と、血の(したた)る左腕を押さえながら言った。

 レンは辺りを見回して、状況を把握すると、

 「銃士隊は、敵の頭を狙えー! 決して接近するな!

 歩兵は、複数で酔鬼兵1人と戦えー!」

と、指示を出した。

 レンの突き出す剣が、酔鬼兵の(あご)下から頭部へ貫通する。返す刀で背後に迫る酔鬼兵の喉を切り裂く。喉を切られた酔鬼兵は、血を吐き()き込みながらも斧を振り下ろした。レンはこれを剣で受け流す。

 オーベルシュトルツは、槍で顔や喉を的確に突いて(ほふ)っていく。その背後を副官クルーゲが守る。オーベルシュトルツは前方に捉えた酔鬼兵のみを全力で叩き潰していった。

 デュランはポルト銃で、酔鬼兵の眉間(みけん)狙撃(そげき)する。眉間を撃たれた酔鬼兵は、即死していた。もうどれほどの兵を倒したのか、デュランにも分からなくなっていた。

 「次」

 エメは、デュランに銃を渡し、受け取った銃に弾を込める。

 「次」


 レンの水平に()ぎ払われた剣が、酔鬼兵の首を飛ばした。その時、「レーン!」と叫ぶソレイユの声が頭の中に響いた。対岸にいて聞こえるはずもない声だったが、レンは振り返り、東の湾の先端に目をやった。

 抑えようのないざわざわとした胸騒(むなさわ)ぎを覚え、全身を鳥肌が包み込み、産毛(うぶげ)が逆立った。

 「ソレイユ様ーー!!」

レンは西の湾の先端から東に向かって叫んだが、その声は黒い海の波音に消された。


 東の湾の先端

 巨躯の酔鬼兵が、左手でソレイユの首を()めながら、宙づりにしていた。苦痛で両足を宙でばたつかせるソレイユの白のベネチアンマスクの右側がずれ落ち、目元を(さら)していた。

 「グロロロー、ガルルー」

 「うぐっ、・・ぐっ・・・」

ソレイユは左手で巨躯の酔鬼兵の手首を押さえ、(かす)む目でサーベルの先を(にら)んでいた。右手に握られたサーベルが、巨躯の酔鬼兵の首元に食い込んでいるがまだ浅い。

 巨躯の酔鬼兵は口から血を吐き捨てると、平然とした表情をしたまま、右手の大斧をソレイユの胴めがけて水平に振った。

 ソレイユは霞む視界で、体を持ち上げた。斧が空を切る。反動でソレイユの喉に激しい痛みが押し寄せる。「サーベルを動かせ! 動かせ!」ソレイユは薄れゆく意識の中で念じた。

 「う・・ご・・か・・・・レ・・ン・・」

ソレイユはそう唇を動かすと、苦しさが薄れ、レンの顔が浮かび、すーっと意識が遠のいた。


 ソレイユは全身に激しい衝撃を受けて、薄れる意識のなかで(まぶた)を少し開けた。地に横たわるソレイユの目の前に、同じく横たわる人の顔が見えた。

 「我は地面に落下したのか・・・ん、レオン?」

ソレイユは手を伸ばし、レオンの体を揺する」

 「レオン・・・レオン」

 「うぅ、う・・・」

レオンが瞼を動かす。

 「・・・ソ、ソレイユ様・・・ご無事でなによりです。!! マスクが・・・」

 「レオンが私を助けてくれたのか」

 「・・ジ、ジルを、ジル殿を助けてください。ソレイユ様を助けようとして、私とジル殿であの化け物に切りかかりました」

レオンが震える指を上げる。

 その指がさし示す十数m先では、巨漢のジルと巨躯の酔鬼兵が戦っていた。その周りで数名のソレイユ兵が巨躯の酔鬼兵を囲んでいる。

 巨躯の酔鬼兵が大斧を力任せに振り回す。ソレイユ兵たちが、上半身と下半身に両断された。

 「あぁー! 何てことだ・・・」

ソレイユは悲痛な叫びを上げた。

 やがて、それが怒りへと変わって行った。ソレイユはサーベルを杖代わりにし、よろけながらも体を起こした。そして、巨躯の酔鬼兵の背中めがけて駆け出した。

 酔鬼兵の反対側にいるジルは、駆け迫って来るソレイユを視界に捉える。

 「ソレイユ様、ご無事でしたか。その素顔を初めて拝見しました。まるで、戦の女神のようだ」

ジルは右の口角を上げると、直ぐに巨躯の酔鬼兵を睨みつけた。

 「グガロロロ!」

 巨躯の酔鬼兵は、雄叫びを上げて大斧をジルに振り下ろした。

 ジルはこれを躱すと、巨躯の酔鬼兵の喉めがけて大剣を突いた。巨躯の酔鬼兵は左の二の腕でこの大剣を受け止める。ジルの剣先は、巨躯の酔鬼兵の左腕を貫通したが、喉元寸前で止まった。

 「くっ・・・押し切れない」

 巨躯の酔鬼兵はジルを充血した瞳に映すと、ニターッとして、

 「グヘヘッ、ロレロン、ガガー!」

と叫び声を上げた。

 巨躯の酔鬼兵は、大斧を渾身(こんしん)の力で振り回した。

 ソレイユは背後から跳躍すると、巨躯の酔鬼兵の首の裏をめがけてサーベルを突き下ろす。

 ジルの左脇に大斧がメキメキと音を立てて食い込む。ジルは両腕で大剣を渾身の力で押し、巨躯の酔鬼兵の喉に食い込ませる。

 「ジルー!」

ソレイユの絶叫が深い夜空へと吸い込まれていく。

 巨躯の酔鬼兵の振る大斧の刃は、ジルの左脇から右脇までを両断した。

 ソレイユのサーベルが、巨躯の酔鬼兵の首の裏から背骨に食い込んだ。巨躯の酔鬼兵は白目を剝きだしたまま、崩れるようにして倒れた。

 「ジル・・・まて・・・いくな」

ソレイユは狼狽し、ジルの上半身と下半身を必死にくっつけようとしている。

 「ジル、死ぬな、死ぬなー!」

ソレイユが叫び、声をかけるが、ジルは既にこと切れていた。

 ソレイユはジルの両断された上半身を、その両腕で抱きかかえて座り込む。

 「ジルー! いゃぁぁぁぁー!」

ソレイユの悲鳴とも、絶叫とも分らぬ音が、空の闇を切り裂いた。

 巨躯の酔鬼兵の背中に隠され状況が分からなかったレオンは、その叫びを聞き、ジルの死を理解した。

 「ジ、ジル・・殿・・・」

地を()いながらソレイユの背中に近づく。

 レオンはソレイユの背に、震える手を伸ばす。レオンは肩にしがみつき、ソレイユの背中越しに、抱きかかえられたジルの上半身を見る。

 「・・ジ、ジル殿・・・まさか・・・」

 「ジル、すまぬ・・・我のために・・・ジル・・・」

 「・・・ソ、ソレイユ様、私もジルの死を(いた)みます。

 ・・・ですが、それは、今ではありません。

 ソレイユ様、今は全軍の指揮をお願いします」

 「・・・・・・・」

 「ソレイユ様!」

レオンがソレイユの顔を覗き込み、肩を揺すった。

 「・・・・そうだな。レオンの言う通りだ。悲しむこと、悼むことは後でもよい。

 我は我の務めを果たさなければならぬ」

 ソレイユは、ジルの上半身と下半身を丁寧につけ、両手を胸の前に組ませた。そして、白のベネチアンマスクを着けると、飛び散った篝火の明りで(ほの)かに照らされている湾の先端へ、ソレイユは走った。

 そこから暗闇の湾中腹に向かって手を振った。その途端、ガルーン湾の内側に騎兵隊2,000の馬蹄(ばてい)が響く。ソレイユも繋いであった白馬雪風に乗った。白馬に跨るソレイユの下に、ソレイユ直属の精鋭の騎兵隊が集まって来る。

 ソレイユが雪風で駆け出すと、それに合わせて騎兵隊が脇を固める。

 「敵は酔鬼隊、致命傷を与える敵の額、首を狙え。奴らはしぶとい。反撃に注意しろ」

 「「「「「はっ」」」」」

 ソレイユがサーベルで2時の方向を指すと、騎兵隊が馬体を斜めにして曲がり、土煙を上げ、酔鬼隊を目指して突進する。

 恐れを知らぬ酔鬼隊に、ソレイユ軍の精鋭である本体騎兵隊が激突した。ソレイユのサーベルが酔鬼兵の喉を切り裂く。片手斧の1振りを躱して、眉間を刺す。

 後続の騎兵隊の槍が酔鬼兵の頭や顔、喉を的確に貫いていく。酔鬼兵による片手斧の反撃を受け、後ろに吹き飛ぶ騎兵もいた。

 騎兵隊の槍に貫かれて倒れた酔鬼兵を、後続の騎兵の馬蹄が踏み潰していく。


 大陸暦718年1月27日 4:00

 消えかかる篝火の中で、レンが呟く。

 「これで、夜襲隊は撃退できましたね・・・」

 「あぁ、レン殿、アードラー帝国軍白兵戦精鋭部隊の酔鬼隊に勝ったな」

オーベルシュトルツは、下馬しながら言った。

 「オーベルシュトルツ殿、この隊のダメージコントロールと、これからの指示をお願いします。私は東の湾の先端を見てきます」

 「レン殿、この馬を使ってくれ」

 「ありがとうございます」

レンはオーベルシュトルツの差し出す馬に跨ると、ガルーン湾をぐるっと回り込んで、東の湾の先端に向かった。


 東の湾の先端を守っていたソレイユ軍は、兵の損耗(そんもう)が激しかった。また、隊長ジルの戦死は、兵士たちの心に深い悲しみをもたらした。

 「ソレイユ様、ご無事で何よりです」

 「レン、西の様子はどうだ」

 「守り切りましたが、死傷者については、現在オーベルシュトルツ殿が確認中です」

 「東はかなりの死傷者が出ている。ジルも戦死した」

 「ジルが! ・・・まさか・・・。

 ジルは、気の良い男でした。有能な隊長に急成長し、隊の兵からも厚い信頼を寄せられていました。

 ソレイユ様、・・・第2次の夜襲や日の出を待った総攻撃に備えましょう」

レンはそう言って、ソレイユを見ると、首には大きな手の後があった。

 「ソレイユ様、お怪我はありませんか」

 「大丈夫だ。我よりも兵の怪我の手当だ」

ソレイユは、(うつ)ろな目をしたまま、レンに指示を出した。

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