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第6章 猜疑  21 リヤン王子パリリス入城

 大陸暦717年10月5日 マーティン辺境伯領 領都エフェール

 ソレイユは、守備兵としてパリリスに5000、軍事城塞コトーに3000、自国領となった城塞都市フルーブとスノールには、パリリスの守備も兼ねて各3000の兵を配置した。

 ソレイユは、自国マーティン辺境伯領に主だった重臣たちと兵を伴い帰還すると、領内の経営に重きを置いた。農業と工業、商業、学問の振興を図った。

 また、前領主ルーグ・フォン・シューツ公爵が国家予算に匹敵する大量の金塊(きんかい)を隠し持っていた理由は、城塞都市スノールの西20㎞の山脈沿いに、隠し金山を所持していたからであった。ソレイユたちは既にその隠し金山の再開発にも着手していた。


 領都エフェール ソレイユの部屋 20:30

 「レン、隠し鉱山の人事は一新したか」

 「はい、工業長官と豪商2人、鉱山開発業者2人を巨額な額の贈収賄(ぞうしゅうわい)及び脱税によって、終身刑としました。

 また、新たに資源開発局をつくり、金の採掘体制も関係業者も一新しました」

 「レン、官民の癒着(ゆちゃく)は厳しく取り締まれ。

 金は、軍事費と領民の生活を豊かにする施策に使う」

 「工業を振興するために技術者の勧誘、商業都市と交通網の整備、学校の建設なども早急に計画して行きます」

 「ソレイユ軍の調練はどうだ」

 「次の戦では、4大軍神の内2人と戦うとも想定されますので、皆気合が入っております」

 「そうか。これで今日は終わりにしよう。レン、ウバがいいな」

 ソレイユは白いベネチアンマスクを外した。

 「承知しました。セイロン産のウバですね」

 「ウバは深い赤色と、花のような芳醇(ほうじゅん)な香りと渋み・・・まさに逸品(いっぴん)です」

 レンがティーの準備に部屋を出て行くと、リュミエールは壁に掛けた地図を(なが)めた。

 「最北部の港湾都市ガルーンと山岳軍事城塞モンターニュか。

 手が届くところまで歩んで来たと思ったら、今は遠く感じる。

 しかし、諦めはしない。この手で全ての民を開放する」

リュミエールは心の中でそう誓った。


 大陸暦717年10月21日 13:00 パリリス 

 ソレイユたちは、リヤン・オロール王子一行を城門前で出迎えた。

 ソレイユの後ろには、レン、オーベルシュトルツ、サージ、デュラン、リル、レオン、ナナ、クルーゲ、ジャン、ジルなどが直立していた。

 騎馬隊の後には、白と金の意匠のついた馬車が連なっていた。先頭の馬車の赤いカーテン越しから、リヤン王子がパリリスの城門を(のぞ)いていることが分かった。

 続く馬車の中には、フォンテーヌ内務大臣と参謀である父ビアージュの顔も見えた。

 「レン、ようやくリヤン王子をこのパリリスに迎えられたな」

 「はい、停戦とパリリス入城。リヤン王子念願の戴冠(たいかん)、そして遷都(せんと)へと続きます。

 リヤン王子の目標とするいくつかが達成されましたので、この後の言動によって、未だにアードラー帝国領となっているオロール王国民のことを、どのようにお考えになっているかが分ると思います」

 「レンには懸念事項(けねんじこう)があるのか」

 「・・・アン元王妃の情による判断が、不確定要素となります。

 何れにしろ、すべてはリヤン王子のお考えとご判断次第です」

 「フォンテーヌ内務大臣とリヤン王子の参謀となった父ビアージュ子爵に期待したい」

 「アードラー帝国皇子ジェルムのいる首都ガルーン、山岳軍事城塞モンターニュの動向も考慮しなければなりません」

 「そこに潜ませ内偵させているオーリ族の情報が大事となるな」

 「ソレイユ様、事後報告で申し訳ありませんが、サージ殿の意見もあり、リヤン王子の下にも・・・」

 「・・・オーリ族か」

 「はい、リヤン王子の護衛も兼ねております」

 「オーリ族に扇動(せんどう)や干渉はさせるな」

 「勿論です」

 ソレイユはリヤン王子を護衛する長い隊列を眺めていた。


 大陸暦717年10月22日 13:00 パリリス 謁見の間

 王の座に座るリヤン王子の右脇にはアン元王妃が座り、その階下には白のベネチアンマスクをつけたソレイユが片膝をつき頭を下げている。

 謁見(えっけん)の間には、フォンテーヌ内務大臣や王都担当大臣シモン・フォン・アレクサンドル侯爵、ソレイユの父ビアージュ子爵らの重臣たちも左右に並び立っていた。 

 リヤン王子がソレイユを見下ろして労いの言葉をかける。

 「ソレイユ・フォン・マーティン辺境伯、此度(こたび)の働きは誠に見事であった。

其方こそ、臣の中の臣。後日、その忠誠心に対して厚く報いるつもりである」

 「リヤン王子、そのご尊顔を拝し恐悦至極(きょうえつしごく)に存じ上げます。また、このパリリスへのご入城を心よりお喜び申し上げます」

 「むう、今後も励むがよい」

 リヤン王子の右に座っていたアン元王妃が、ソレイユに甲高い声で言葉を発した。

 「其方がソレイユ辺境伯ですか。

 リヤン王子への奉公には、目をみはる働きがありました。結果として、リヤン王子の戴冠を早めることに繋がりました」

 その場に控えるフォンテーヌ内務大臣やビアージュ子爵、その他の重臣たちも、アン元王妃の言葉に耳を疑った。ファージ・レクス・オロール国王が死ねば、ア―ドラー帝国の帝に王位を譲ると条約にサインした張本人から、リヤン王子の戴冠を早めるという言葉が出たからである。

 アン元王妃は涼しい顔をして更に続ける。

 「アードラー帝国ベルバーム・アードラー皇帝もリヤン王子の戴冠を認めるとおっしゃっております。これで、正式にリヤン王子は王位に付けます」

この発言にはフォンテーヌ内務大臣も黙ってはいなかった。

 「アン元王妃、リヤン王子は正当なオロール王国の血筋。誰に(はばか)ることなく王位に就くつくことができます」

 「フォンテーヌ、以前に結んだアードラー帝国の帝に王位を(ゆず)るという条約のことで、わらわを責めているのですか」

 「そうではありません。オロール王国の王位は、リヤン王子にこそあるという正当性を述べただけです」

 「臣下の身でありながら、王位を語るとは・・・フォンテーヌ、分をわきまえなさい」

アン元王妃の冷徹で鋭い視線が、階下に立つフォンテーヌを射抜いた。

 ビアージュ子爵が(たま)らずアン元王妃に声を上げる

 「・・・アン元王妃、フォンテーヌ内務大臣は、長き歴史のあるオロール王国の・・」

 そこに、王都担当大臣アレクサンドルが割って入る。

 「フォンテーヌ内務大臣の言葉は、リヤン王子への忠義ゆえのこと。

 また、アードラー帝国との停戦協定も締結され、リヤン王子のご威光で戴冠と遷都が目前となっためでたき時期です。

 アン元王妃もフォンテーヌをお許しください」

 アン元王妃の視線は、フォンテーヌからアレクサンドルに動く。

 「そうですね。戦のない時代の幕開けです。

 フォンテーヌのことは、今回は許しましょう。

 ところでソレイユ!・・・其方を解放の英雄と呼ぶ民もいると聞いたが」

アン元王妃の冷徹で鋭い視線が、階下に控えるソレイユに向けられた。

 「英雄などとは、とんでもございません。リヤン王子のご威光を(たた)える民の声であると考えております」

 「むう、ソレイユよ。臣下、民はリヤン国王をお守りするための城壁。このパリリスはリヤン国王の治世のための首都となる。

 其方も分をわきまえることを、常々忘れるでないぞ」

 「・・・はっ」

 「ソレイユ、もう一つその(きも)に銘じよ。

 リヤン王が治める新しきオロール王国では、其方は出番の終えた舞台役者。

 今後は、リヤン王子のご威光の賜物(たまもの)である停戦協定を維持すべく、舞台(そで)で励むがよい」

 「・・・はっ」

リヤン王子とアン元王妃に続き、王都担当大臣アレクサンドルが笑みを浮かべて謁見の間を退室して行った。

 謁見の間に残された重臣たちは、奥歯をぎゅっと噛みしめ、苦渋の表情を浮かべていた。

 フォンテーヌ内務大臣とソレイユの父ビアージュ参謀が、ソレイユに近づいて来た。

 フォンテーヌは、膝を着き、頭を下げたままのソレイユに声をかける。

 「ソレイユ辺境伯、此度の働きは見事でありました。

 オロール王国の国土回復だけではなく、リヤン王子の戴冠と遷都、そして民に希望を与えました。今後とも活躍を期待しておりますぞ」

 「フォンテーヌ殿、過日のお力添えがあってのことです。感謝しております。

 アードラー帝国との停戦協定は、長くはないと考えます。早くて1月まで」

 「・・・ソレイユ辺境伯、何を・・・」

フォンテーヌはソレイユの見解に、他者の眼を気にして辺りを見回した。

 謁見の間には、退出する重臣たちの後姿が見えるだけであった。

 「別の部屋でお話をしましょう」

フォンテーヌは、ソレイユとビアージュを別室へと誘った。


 3名はテーブルを囲んで座っている。

ソレイユが口を開く。

 「先ほどの話の続きとなりますが、アードラー帝国の増援軍本隊が皇子ジェルムのいる港湾都市ガルーンに到着しだい、侵攻してくると考えます」

 「ソレイユ、我も同じ見解だ」

ビアージュがソレイユの眼を見ながら答えた。

 「ここパリリスから北へ100㎞、港湾都市ガルーンから南へ70㎞の地点に、難攻不落と言われている山岳軍事城塞モンターニュがあります。

 現在、この城塞を支配しているアードラー帝国にとっては、パリリス攻略の最前線となります。まさに、我が国にとっては、首都パリリスの喉元に突き付けられた刃」

 ビアージュはソレイユに頷くと、一度唇を結んでから話しかける。

 「だからといって、山岳軍事城塞モンターニュを、今攻めるわけにいかぬ」

 「はい・・・だから、パリリスと山岳軍事城塞モンターニュの中間地点に、軍事城塞を建てるのはいかがでしょうか」

 フォンテーヌは、目を見開いてなるほどと手を叩き、ソレイユに意見を述べる。

 「首都パリリスの東は、ソレイユ殿のマーティン領城塞都市フルーブ、西を軍事城塞コトーで守り、北に新たな軍事城塞を建設して、そのトライアングルで守るというのだな」

 「はい、そして、首都パリリスにも多くの兵を駐留させれば、その4点を結んだ地域は強固な1つの城塞都市になりましょう」

 「それは妙案だ。

 ・・・しかし、東の軍事城塞コトーは、アレクサンドル王都担当大臣が推したアレクシ・フォン・バイイ伯爵が守る予定だが、その実力の程は分からぬ。やや心許ない気がする」

 「兵力はいかほどですか」

 「国軍の兵力を加え3万」

 「例え、アードラー帝国軍が10万の兵で攻めてこようとも、それなりの将があの軍事城塞コトーに兵3万で(こも)るなら、1年は持ち(こた)えられると思います」

 フォンテーヌ内務大臣は腕を組んだまま、しばらく考え込んでいたが、渋い表情を浮かべてソレイユに話しかける。

 「・・・・・・ソレイユ辺境伯、軍事城塞のトライアングルで首都を守るというアイディアは誠によいものだが、それには2つ問題がある。

 1つは新たな軍事城塞が完成するまで、アードラー帝国は侵攻を待ってはくれぬだろう。

 いま1つは、アン元王妃のソレイユ殿への猜疑心(さいぎしん)と、並々ならぬリヤン王子への愛情だ。

 それと、アン元王妃は、ソレイユ殿に寄せる民の支持が大き過ぎる故に、王政への脅威と感じていることだろう。

 果たして、ソレイユ殿の存在を大きくするような軍事城塞建設を、お認めになられるだろうか。停戦協定を揺るがす暴挙と反対なされるかもしれない」

 「それでもパリリスを守るためには必要です」

 「・・・分かった。リヤン王子に進言してみよう」

 「是非、お願いします」


 大陸暦717年10月25日 首都パリリス

 リヤン・オロール王子は旧首都であるパリリスの地で戴冠し、リヤン・レクス・オロール国王となった。

 オロール王国旧首都であるパリリスの地で戴冠は、王位の正当性とその威光を示す上で、極めて重要であった。リヤン・レクス・オロール新国王は、その場でオロール王国の首都をパリリスに遷都することを宣言した。

 オロール王国の民は、アードラー帝国の支配から民と領土の多くを回復した、この若きリヤン国王の戴冠に歓喜していた。民の心には、オロール王国の全領土を回復し、全ての民を解放する期待が日に日に高まっていった。

 余談ではあるが、アン・オロール元王妃は、息子であるリヤンが国王となったため、アン・オロール母后となった。


 大陸暦717年10月30日

 ソレイユ・フォン・マーティン辺境伯は、オロール新国王リヤンから今回のパリリス奪還の恩賞として、マーティン辺境伯の転領前に領地となっていたザンリューグ元伯爵領を増領された。

 これによって、マーティン辺境伯領は、ルーグ・フォン・シューツ元公爵領とザンリューグ元伯爵領とを併せた諸侯最大の領地を持つ領主となった。

 ソレイユは、首都パリリスとその西50㎞にある軍事城塞コトーを、リヤン国王に引き渡すと、そのまま兵を伴い自領の領都エフェールに帰還した。


 大陸暦717年11月8日 領都エフェール ソレイユの部屋

 「ソレイユ様、それは断固拒否します」

 「レン、わがままを言うな」

 「ソレイユ様が新たに得た領地の大部分を、ソレイユ軍の重臣たちへ恩賞として分け与えることに異論はありません。新たな軍制も同様です。

 しかし、私に領地や階級など必要がありません」

 「ソレイユ・フォン・マーティンは領地も軍も拡大している。レンにもそれなりの役割を担ってもらいたい」

 「ソレイユ様の言葉とは思えません。(あき)れかえるばかりです」

 「レンは、私の執事と従者のままでよいのか」

 「当然です。ソレイユ様の至高の執事、至強の従者であることが私の務めであり、私の誇りです」

 「・・・(がんこ)固だな」

 「頑固でなければ、ソレイユ様の執事や従者は務まりません」

 「・・・そうなのか」

 「当然です。今までご自分をどう考えていたのですか」

 「・・・レン、分かった。では、こうする。

 新たに従者隊を編成し、その従者隊をレンの指揮下に入れる。これに異論は認めん」

 「・・・リュミエール様の従者が増えるということですか」

 「そうなる。執事はレンのみだ」

 レンは唇をぎゅっと閉じる。

 「・・・承知しました」

 「不服そうだな」

 「これで納得するしかありません」

 「レンが快諾したということで、従者隊の規模は2000名。

 その編成は、白アゲハ騎銃士隊1000。これはポルト銃を装備した騎兵隊だ。

 更に、白蝶騎兵隊1000とする。その兵の人選は任せる」

 「承知しました。

 その他の隊へのポルト銃の導入ですが、予定通りソレイユ隊は銃士隊500名、オーベルシュトルツ隊とルリ隊、パトリック隊、ジャン隊、フレデリク隊、リュカ隊、クロード隊、ジル隊の8隊には、銃士隊から100名を加配。

 デュラン隊はポルト銃の銃士隊のみの編成で2000名。

 そして、レオンにはトネール砲兵10門、ソレイユ隊に3門でよろしいですか」

 「変更はない。軍事3拠点の内、城塞都市フルーブには、オーベルシュトルツ隊。

 城塞都市スノールはルリ隊を配置する。

 軍事城塞グリズリッシュには防御に固い元男爵のリュカ。

 領都エフェール防衛は引き続きパトリック隊とする。

 都市ロッシュの防衛は内政面で抜群の手腕を発揮するクロード。クロードは元子爵だけあって内政も軍事も任せられる。」

 「従者隊の副隊長に軍事城塞コトーを守備していたアベルを採用したいのですが」

 「あのアベルなら統率力も戦術眼、馬術も高い。申し分ない配属だ」

 「承知しました」

 「レン、そろそろアフタヌーンティーの時間だと思うが」

ソレイユは白のベネチアンマスクを外した。

 「リュミエール様、抹茶(まっちゃ)などいかがですか」

 「久しぶりになります。あの苦みは、心の痛みと重なり印象深いものです。今でも決して忘れてはならぬ教訓です。では、抹茶をいただきます」

 「承知しました」


 レンがワゴンの上に抹茶の準備をして、ソレイユの部屋に入って来た。

 ソレイユは、床に敷かれた赤い毛氈(もうせん)の上に慣れない正座をしている。

 「リュミエール様、本来は茶室と呼ばれる小屋に敷かれた畳の上で、茶を(たしな)むそうですが、畳はありませんでしたので、野外用の毛氈を用意しました」

 「抹茶は、小屋で嗜むものなのか」

 「わびさびといって、慎ましく質素なものの中に豊かさを感じる美意識を大事にする文化だそうです」

レンが茶筅(ちゃせん)で抹茶をたてながら静かな(おもむき)で話した。

 「茶にはマナーではなく、哲学的な意識にも結びついているのですか」

 「世界には、我々の理解を超える奥深き文化や習慣のあることに驚かされます」

 「奥深き文化ですか・・・文化に優劣をつけるべきものではないということですね」

 「その精神性を尊重すべきものだと考えます」

 ソレイユは座礼をしてから、レンから差し出された茶碗を両手で持ち上げ、鮮やかな深い緑色を楽しみながらレンに謎をかける。

 「レン、アードラー帝国は、我が国から奪うばかりですが、たった一つだけよい影響を与えました。何だと思いますか?」

 「平和への価値の再認識ですか」

 「・・・それもあるかも知れませんね。でも、私はアフタヌーンティーの習慣を挙げたいです」

 「なるほど、アフタヌーンティーは、人の生活に(うるお)いを与えてくれる文化です」

 「そうね。優雅なひと時は、心を豊かにしてくれるように感じます」

 リュミエールは左掌に茶碗を置き、右手を添えて抹茶をすーすーすーすっと三口半で飲み干した。

 「・・・苦い・・・はやり、抹茶は最後の一口が苦いですね」

 「それも、嗜みの一つです。東方では、甘い茶菓子を一緒に食べるそうです。

 次回はご用意しましょうか」

 「今は休戦とは言え、戦時下です。今まで通り、スィーツは(ひか)えます」

 「承知しました」

 「結構なお点前でした」

ソレイユはそう言って座礼をしてから、立ち上がろうとした。

 ふらっとしてよろけると、レンが片膝を着いたままリュミエールの腕を支えた。

 「リュミエール様、お疲れですか」

 「レン、違うの・・・そっと座らせて」

レンがゆっくりとリュミエールを座らせる。

 リュミエールは足の爪先を手で(さす)りながら、

「・・・あ、足が・・・痺れて・・・う、うぐ・・・」

と両足を()みだした。

 「うぐぐ・・・レンは大丈夫なの?」

 「当然です」

レンは、茶道具を手際よく片付け始めていた。


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