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14 紺地に銀の月の旗

 南北25km東西40kmのディエス湖の南東の湖畔にシューツ公爵領城塞都市フルーブは位置していた。城内の居住区だけで8万の民の住む大都市であった。周辺地域の街や村には広大な農地や牧場があり、シューツ公爵領の豊かな穀倉地帯となっていた。

 また、ディエス湖は天然の要害となるだけでなく、水運を使った大量輸送への利用や漁業なども盛んであった。

 作戦「白アゲハの羽化」により、オーベルシュトルツ軍1万1000が、城塞都市フルーブ目指して進軍していた。

 「オーベルシュトルツ様、元の居城であった城塞都市フルーブを攻略する任務とは、そこに住む民のことを思うと心が痛みます。

 正直、ソレイユ様にも、オーベルシュトルツ様のお心を()んでいただきたいところでした。」

副官クルーゲは、オーベルシュトルツに本心を打ち明けた。

 「クルーゲ、ソレイユ様は我の心を汲んで、この任を与えてくださったのだ。

 民を誰一人として犠牲にはせぬ。それができるのは、ここを居城としていた我だけだ」

 「確かにそれは何者にもできないことです。

 オーベルシュトルツ様が考案したこの策が(はま)れば、それは可能です。しかし、敵軍が上手くフルーブから出陣して来るでしょうか」

 「そのための兵4000と、軍旗を隠しての行軍だ」


 大陸暦717年7月23日 7:00 城塞都市フルーブ 首長室

 「ブーランジェ首長、ご報告があります。

 東南東より、この城塞都市フルーブに向けて進行する軍があります。その距離8km」

フルーブの警備長官をしている高身長で恰幅(かっぷく)の良いディエゴ・エメが、ゾーン・ブラウン将軍を伴い、城塞都市首長室にいるコンスタンタン・フォン・ブーランジェ首長に報告した。

 「エメ、その兵力は? どこの軍だ」

 「兵力は4000。軍旗がなく国籍不明です。方向から考えオロール王国軍とみられます」

 「ゾーン・ブラウン将軍、直ちに迎撃準備せよ」

 大柄で筋肉質、いかにも歴戦の猛者という雰囲気を(かも)し出しているブラウン将軍が敬礼をする。

 「はっ」

 ブラウン将軍は、城塞都市フルーブに駐留していたオーベルシュトルツ将軍がオロール王国に亡命したため、その後任としてアードラー帝国軍から急遽(きゅうきょ)この地に配置された将軍であった。

 ブラウン将軍が城壁に上がると、城門からフルーブ軍8000が出て行った。城塞から東南東1kmのところに布陣した。一方、国籍不明の軍4000は、フルーブ軍に正対して布陣した。

 銀のフルアーマーに全身を包んでいるフルーブ軍第1隊隊長ジャン・ガルニエは、国籍不明群の統制と規律がとれた行動を見て驚嘆(きょうたん)した。

 隊長ジャン・ガルニエは騎馬に(またが)り、単騎で国籍不明軍の前に進み出た。

 「我はフルーブ軍ジャン・ガルニエ。

 其方たちは、いずこの国の軍であるのか、名乗られい」

 「ジャン。久しいな」

 「な、ま、まさか・・・その声は・・・」

 ジャンに姿は見えなかったが、聞き覚えのある声がした。聞き覚えどころではない。時には温かに励まされ、厳しく育ててくれた敬愛する人物の声だった。

 国籍不明軍から軍旗が一斉に上がった。オロール王国の旗と、深紅に白アゲハの旗、そしてもう1種の軍旗が風に(なび)いた。

 ジャンの馬が(いなな)き立ち上がった。

 「あ、あれは、(こん)地に銀の月・・・オーベルシュトルツ将軍の軍旗。

 俺が所属していた軍旗だ」

 紺地に銀の月の軍旗を見たフルーブ軍8000の兵士も動揺している。

 「あれは、オーベルシュトルツ将軍の軍旗」

 「俺たちの旗だ」

 紺地に銀の月の軍旗の間から、馬に乗った初老の偉丈夫(いじょうぶ)が進み出て来た。

 「皆の者、此度は苦労をかけた」

オーベルシュトルツは、包み込むような温かな口調で語った。

 「オーベルシュトルツ将軍・・・」

 「・・・将軍」

 「ご無事でいらして何よりです」

兵士たちは(ひざ)を着いた。

 「策に嵌められ、亡命をしたオーベルシュトルツ将軍の下へ駆けつけて行くことも叶わず、将軍の身を案じていたところです」

 反乱を恐れ、フルーブ城塞都市の一部兵士を入れ替えたものの、半数の兵士はオーベルシュトルツ元将軍直属の配下であった。

 ジャンが振り返り、フルーブ軍兵に向かい、

 「第1隊長ジャン・ガルニエにとって、オーベルシュトルツ将軍は人生の師。

 国家に刃を向けることになろうと、大恩ある師に向ける刃は持ち合わせてはいない」

そう叫ぶと、槍と剣を馬上から足元に投げ捨てた。

 (ひざまず)く兵士たちも次々に武器を投げ捨てた。

 「貴様らー、アードラー帝国を裏切るのかー、アードラー皇帝陛下に歯向かうというのか」

第2隊長ボロン・フォン・ガニメデが叫んだ。

 オーベルシュトルツが手を上げた。

 すると、クルーゲが叫ぶ。

 「騎兵前へ」

 騎兵隊が前面に出て来る。

 第2隊長ガニメデは気づいた。敵は騎神オーベルシュトルツ軍に率いられた精強4000。対するこちらは、第1隊隊長ジャンがオーベルシュトルツ軍に恭順(きょうじゅん)の意を示したため、アードラー帝国軍は4000に半減している。

 「退却!」

 「退却だ。退けー!」

 城塞都市フルーブに向けて逃げるアードラー帝国兵、それを追走するオーベルシュトルツ軍。武器を捨て恭順の意を示した兵たちの間を騎兵隊が駆けて行く。たちまち追い着き、アードラー帝国兵たちを()み込んで行った。

 オーベルシュトルツには1万1000の兵を与えられていたが、城塞都市フルーブから打って出させるために、4000で進軍して来た。野戦で対面することによって、オーベルシュトルツに投降しやすい環境をつくったのだ。

 目論見通りに、オーベルシュトルツを敬愛する兵士をそのまま吸収し、無益な戦闘を避けることに成功した。

 また、フルーブから打って出た兵士が投降したという事実は、城塞都市フルーブ内にいる兵士たちへも少なからず影響を与えるとの考えもあった。


 9:00 城塞都市フルーブ

 敵はオーベルシュトルツ軍で、投降兵を吸収しフルーブに進撃して来るとの報は、フルーブ軍の兵士に与えた衝撃は計り知れないものだった。

 「何たる体たらく。しかも、元このフルーブを拠点としていたオーベルシュトルツ将軍が進軍して来たとは言え、戦わずして寝返った兵までいるというではないか」

 城塞都市首長ブーランジェの声が部屋に響いた。

 「迎撃に出た兵士の半数がオーベルシュトルツ軍に投降しました。

 このフルーブに残る兵士4000のうち、何人がアードラー帝国兵として残ることやら」

警備長官エメは、捨て台詞とも思える不安をぶちまけて部屋を出て行った。

 城塞都市首長ブーランジェの心には、「何人がアードラー帝国兵として残ることやら」というエメの言葉が繰り返し響いていた。

 城壁の上では、ブラウン将軍が兵の配置を指示していた。

 城塞都市フルーブの東には、オーベルシュトルツ軍4000に投降兵4000を加えた8000が迫って来ている。南からは、伏せてあったルリ率いる7000の兵が進軍して来た。

 「ブラウン将軍、南からも敵兵が迫ってきます。およそ7000」

 ブラウン将軍は城壁から敵軍を眺め、冷静に判断する。

 「オーベルシュトルツ軍1万5000対我が軍4000。しかも、我が軍の兵士は、いつ寝返ってもおかしくない状況か・・・謀反(むほん)などの混乱が起きてからでは遅い。ブーランジェ首長へ相談に上がるか」

ブラウン将軍が城壁を歩いて行くと、北西にある湖上門からディエス湖へ1隻の小型軍船が出て行くのが見えた。

 船首には頭巾(ずきん)で顔を隠している男が見えた。その雰囲気からコンスタンタン・フォン・ブーランジェ首長だと分かった。

 「何たることだ。民や兵を置いて、真っ先に逃げ出すとは・・・」

 ブラウン将軍は、城壁を守る兵士から弓と矢筒をひったくる様に(つか)み取ると城壁を走った。北西の湖上門の上に立って弓を引き(しぼ)る。

 シュッ、シュルルルーッと矢が飛び、頭巾で顔を隠すブーランジェ首長の足元の甲板に刺さった。ブーランジェ首長は振り向いて、城塞都市フルーブを見つめた。頭巾の中で何事かをもごもごと呟いていたが、湖上の風に消えて行った。

 「ブーランジェ首長、何かおっしゃいましたか」

甲板で脇に立つ警備長官エメが言葉をかけたが、ブーランジェ首長は黙って首を横に振っただけだった。

 フルーブと民との惜別(せきべつ)の言葉なのか、自己の責任を転嫁(てんか)し吐き捨てた言葉であったのかは誰にも分からなかった。


 9:30

 城塞都市フルーブの城壁に白い布が風に舞った。

 フルーブを遠巻きに包囲していたオーベルシュトルツの下に降伏を伝える使者がやって来た。片膝をついて口上を述べる。

 「城塞都市フルーブは降伏します。ブラウン将軍からは、我の命をもって、民と兵士の命は救っていただけるようお願い申し上げますとのことです」

使者の口上を聞いた副官クルーゲは、オーベルシュトルツを黙って見た。

 「何人も無益な死を選んではならぬ。

 1つ、兵士は武装を解除して城門から出て来る。

 1つ、ブラウン将軍も共に生きたまま出て来る。

 この2つが条件だ。これを満たせば、全ての民には生命と安全を保証する。また、全ての兵士の命も保証する」

オーベルシュトルツがそう使者に告げると、先ほど投降しオーベルシュトルツの配下となることを希望した元第1隊長ジャン・ガルニエも、安心したように目を(つむ)って長く息を吐いた。

 オーベルシュトルツ軍は、シューツ公爵領城塞都市フルーブの投降兵2000を加えた。また、降将ブラウン将軍と捕虜2000の兵士は、リヤン・オロール王子の下へ護送した。


 大陸暦717年7月26日 10:00 シューツ公爵領 領都エフェール

 シューツ公爵領城塞都市スノール陥落(かんらく)の報に続き、城塞都市フルーブ陥落の報が、領都エフェールのルーグ・フォン・シューツ公爵の下に届いた。

 「スノールに続きフルーブまで陥落とは・・・最早この領都エフェールは丸裸も同然」

シューツ公爵は急報を告げる使者の言葉を聞いて、握り拳が震えていた。

 「シューツ公爵、領都エフェールには屈強な精鋭が5000名います。ソレイユ辺境伯軍ごときに後れをとりません」

領内務長官ロベールが声を張り上げた。

 領軍務長官モランが軍人らしく冷静に述べる。

 「残念ながら我が軍では勝ち目はありません。

 ソレイユ軍はこれまでの戦闘で実戦経験が豊富、そして何よりここを攻める大義名分がある」

シューツ公爵が顔を真っ赤にして声を上げる。

 「モラン、何が言いたいのだ。ソレイユ軍の大儀とは、アードラー帝国を選んだ我を倒すことだとでも言いたいのか」

 「公爵がそのようにお感じになられるのなら、それもその内の1つと言えましょう」

 「な、なにー! モラン、今すぐここから出て行け!」

 「・・・・」

モランは公爵室から出て行った。

 「ロベール、我らはここから脱出するぞ」

 「公爵、領都エフェールから出てどこへ行くおつもりなのですか。シューツ公爵領内で逃げる場所など、もうどこにもありません」

 「アードラー帝国ジェルム皇子のおられる首都パリリスじゃ」

 「ジェルム皇子は受け入れてくれるでしょうか」

 「・・・そのための金塊(きんかい)だ。時間がなくて、僅かしか持ち出せないのがしゃくだが。

 幸いソレイユ軍は、未だに城塞都市スノールとフルーブいる。ここを急ぎ出発すれば逃げ切れる」

 「分かりました。速度を重視し、騎馬兵と馬車で参りましょう。私も同伴します。よろしいですね」

 「構わん。直ぐに妻と子へ極秘に連絡しろ」

 その日の正午に裏門から、500の騎馬兵に守られた10台の馬車が、夏の日差しの中に消えて行った。


 大陸暦717年7月27日 9:00 シューツ公爵領 領都エフェール近郊

 ソレイユは2つの城塞都市攻略から離れ、遊軍を指揮するデュランからのある報告によって、塞都市スノールから急ぎエフェール近郊まで来ていた。

 深紅に白アゲハの家紋のついた陣幕内で、ソレイユは陣床几(じんちょうぎ)に座っている。

 「ソレイユ様、我が遊軍が哨戒(しょうかい)中に不審な男を捕られましたのでお調べください」

デュランが片膝をついてソレイユに告げた。

 「ふっ、其方が自分を(たな)に上げ、他者を不審な男と表現するとは愉快だ。

 それに其方は、これを予測して密かにエフェール周辺に網を張っていたのであろうが」

 「アードラー帝国が支配する旧首都パリリスからの援軍に備えていただけです。たまたま、ほんと偶然に、旧首都パリリスに向かう妙な一団に遭遇(そうぐう)し、捕らえただけです。

 その一団の中に、キラキラ、ピカピカの服を着た不審な男がいてびっくり? どっきりです。それから10台の馬車の内5台には金塊がぎっしりと、こちらもピカピカ、どっきりでした」

 「あははは、・・・デュラン、()めの鋭さは群を抜いているな。

 さて、その偶然に捕縛(ほばく)したキラキラ男とやらをここに連れてこい」

 ソレイユの前に派手な衣装を着た一人の男が引立てられて来た。

 ソレイユはその男に蔑みの視線を向ける。

 「名を名乗れ」

 「・・・我に無礼は許さぬぞ。縄を解かぬか」

 「名を名乗れ」

 「・・・貴様ごときに名乗る名などない」

 「名はないのか。無駄な時間を過ごした。この名もない男を斬首しろ」

ソレイユが兵士に命じた。

 兵士が後ろ手に縛られた男の脇に立って剣を抜いた。男は背後から肩を押され、その首が前に出る。兵士が剣を大上段に構える。

 「ひーい、ま、待て! 待ってくれ。我はシューツ。ルーグ・フォン・シューツ公爵だ! 命だけは助けてくれ」

 「待て!」

ソレイユが剣を振り下ろす寸前の兵士を止めた。

 今度はレンが刺すような視線でシューツ公爵を叱責(しっせき)する。

 「名もなき男が、その命欲しさにあのシューツ公爵を名乗るとは何事だ」

 「我は本物のシューツ公爵だ。証拠もある。指輪だ」

 後ろ手に縛られた手の指には、シューツ家の紋章、灰色狼を刻んだ指輪が輝いていた。


 デュランは首枷(くびかせ)()めたシューツ公爵を、領都エフェール城門から30mの距離まで連れて行き、両膝を着かせた。

 シューツ公爵が捕虜となったことを知った兵士が驚いて声を上げる。

 「見ろー! シューツ公爵様ではないか」

 「軍務長官モラン様をお呼びしろ」

 モランは城壁の上を駆けて来ると、下を(のぞ)き込んで声を上げる。

 「シューツ公爵! なぜ捕虜に・・・くっ、まさか、ご自分だけお逃げに・・・」

 デュランは二角帽子をとって、オーバーゼスチャーでお辞儀(じぎ)をする。そして、小指を立ててツートンカラーのベネチアンマスクを揺らし、ツンツンと胸を指さして語りかける。

 「俺はデュラン。そう、右半分が(だいだい)、左半分が黄のベネチアンマスクのテオ・デュラン」

 城壁の兵士たちはポカンとしてデュランの話に聞き入る。

 「シューツ公爵は保身と私欲のため、大恩ある亡きファージ・レクス・オロール国王を裏切り、オロール国王をアードラー帝国に売った。そして、このエフェールを混乱させ、つい先ほどまで、思想統制と重税で民を苦しめていた。

 ・・・そのシューツ公爵が、なぜここにいるのかを聞きたい? 聞きたくない?

 んー、俺は話したい。聞いてくれ。

 このシューツ公爵は、自らの領都エフェールの民と兵を見捨て、家族と共に逃亡を図った。そして、我らに捕縛(ほばく)された。

 シューツ公爵の身柄は、裏切られた亡きファージ・レクス・オロール国王の息子リヤン・オロール王子の下に引き渡す」

デュランはそう言うと、シューツ公爵を立たせ、くるりと回り城壁の兵たちに背を見せた。

 そのまま2、3歩、戻りかけたが不意に立ち止まって振り返る。

 両(てのひら)を見せ、小指を立て、親指と人差し指の指先をつけながら城壁の兵士たちを見上げ声をかける。

 「そうそう、あんたらに聞きたい。あんたとー、あんた!・・・うーん、あんたらもだ・・・そこも、そっちもだ。

 領都エフェールには、あるのかなー? ひょっとしてない? 

 ・・・んー、なんの事だっけ?・・・あっ、あぁ、そう、あれだ、あれ。この城塞都市を守る理由? それから・・・そう大儀だ。

 民のためか? 俺たちは皆同じオロール国民だ・・・あんたらは、ここの民の命を守る。

 そして、俺らは、抑圧(よくあつ)されているここの民の心と体を開放するために来た。

 ・・・ん? んんー? そこのぉ、あんたとあんた、・・・こっちとそこ、そっちも、一体、その剣で誰と戦うつもりなの? 敵は誰? 教えてくれー!」

 城壁の上で剣を持った兵士たちが顔を見合わせる。そして、モランの顔を一斉に見た。

 モランは剣を抜くと、銀に輝く剣先でシューツ公爵を指す。

 「敵はそいつだけだ」

と吐き捨てると、城壁から剣を投げ捨てた。

 それを見た兵士たちも次々に槍や剣を捨てていく。

 「おかえりー! オロール王国へ」

デュランの言葉に、城壁の兵士たちは互いに顔を見合わせ、笑顔になって息を噴き出す。

 「「「「「ただいまー!」」」」」

と一斉に答えた。

 そして、領都エフェールの城門が開かれた。兵士の歓喜の中をソレイユと兵士たちが領都エフェールへと入城していくと、その民たちが歓声をもって迎えた。

 「ありがとう。ありがとうございます。解放の英雄ソレイユ様」

 「解放の英雄ソレイユ様」

 「我らの心は、オロール王国へと戻れました。ありがとうございます」

 こうしてソレイユ軍は、城塞都市フルーブに続き、城塞都市フルーブ。そして、領都エフェールの兵と民の心をも陥落させ、旧シューツ公爵領を掌握(しょうあく)した。

これによって、ソレイユ軍の作戦「白アゲハの羽化」は完遂(かんすい)した。


 大陸暦717年7月29日 2:00 首都パリリス 皇子寝室

 「皇子、ジェルム皇子。緊急事態でございます。ソレイユ軍によって、シューツ公爵領が完全に奪われました」

 5歳のジェルムは目を(こす)りながら尋ねる。

 「・・・ガラメル、この首都パリリスも危ないのか」

 「この首都パリリスとソレイユ軍に奪取された城塞都市フルーブの距離は100km、途中に強力な軍事要塞はありません。

 城塞都市フルーブは、首都パリリスの喉元(のどもと)に延びた剣先となります。

 それに首都パリリスへの侵攻は、何もソレイユ軍に限ったこととは限りません」

 ジェルムはきょとんとした表情で尋ねる。

 「・・・ガラメル、この首都パリリスは危ないのか」

 「それは否定できません。少し北にお下がりになられることがよろしいかと」

 「・・・・」

 「・・・ジェルム皇子、ここは危ないです」

 「分かった。ここは危ないのだな」

 「時間がありません。明日にでも攻め上って来るやもしれません。北の都市ガルーンへ遷都(せんと)しかありません」

 「・・・遷都とは?・・・」


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