13 「白アゲハの羽化」城塞都市スノール
大陸暦717年7月13日 10:00 謁見の間
オーベルシュトルツたち重臣が、ソレイユの席の前に並び立っている。
奥の一段高い場所の椅子にソレイユが歩み座る。その脇にレンが直立する。
ソレイユは一同を見回し、落ち着いた口調で語り始める。
「ソレイユ隊の規模は2万を超えた。よって、我が隊はソレイユ軍と名称を変える」
ソレイユの前に控える一同が黙って頷いた。
「では、本題に入る。我は、リヤン・オロール王子より勅命を授かった。
それは、『アードラー帝国に奪われた我がオロール王国の領土を、速やかに奪還せよ』というものだ。
以後、オロール王国は、アードラー帝国軍とこの地の覇権を賭けて戦う。ソレイユ軍は常に先陣を切っての戦となろう」
一同が騒めく。
「いよいよアードラー帝国をこのオロール王国から追い出すのか」
「ああ、我々で」
「勅命をいただけるとは、心が躍るわ」
ソレイユが右手を僅かに上げて一同を制す。
「これよりレンが作戦を説明する」
「それでは、現在の状況から確認します。
オロール王国は北部一帯と西部一部、東部一部をアードラー帝国軍に占領されていましが、我がソレイユ隊によってその東部を奪還しました。
北部中央の奪われた旧首都パリリスには、皇子ジェルム及び摂政ガラメルがいます。
その西50㎞には軍事城塞コトーをアードラー帝国軍4大軍神の1人ギャレット将軍が守っています。
パリリスの東100㎞には、城塞都市フルーブがあり、西のコトーと共に旧首都パリリスの防御の要となっています。ご存じだと思いますが、このフルーブはオーベルシュトルツ殿が守っていたところです」
一同の視線がオーベルシュトルツに集まる。
「では、作戦を説明します。
城塞都市アルカディアに駐留しているルーレン・フォン・アルノー伯爵に、パリリス西の軍事城塞コトーを、オロール王国本土から北上して牽制してもらいます。これは攻略目的ではありません。牽制による陽動です。
我らは、その間に、ここから西北西100㎞にあるシューツ公爵領城塞都市フルーブを攻略します。同時に北北西のシューツ公爵領城塞都市スノールも攻略します。よって、二正面作戦となります」
ルリが発言する。
「フルーブを攻略し、旧首都パリリスの喉元に刃を突き付けるということですね」
レンが答える。
「その通りです。そして、それはもう一つの意味を持ちます。
フルーブとスノールの地は、真っ先にアードラー帝国へ寝返ったあのルーグ・フォン・シューツ公爵の領地。
この2つの城塞都市を攻略すれば、シューツ公爵のいる領都エフェールは裸同然になり、降伏するか、劣勢のまま交戦するかの判断を迫られることになるでしょう。
これは他の諸侯へ、裏切り者は許さないという明確なメッセージとなります」
一同は黙って深く頷いた。
白のベネチアンマスクをつけたソレイユが立ち上がった。
「この作戦が成功すれば、オロール王国は閉ざされた殻を打ち破り、羽ばたくことができる。
アードラー帝国皇帝には、北の海峡を渡りオロール王国に侵攻してきたことを、必ずや後悔させてやる。
城塞都市フルーブ攻略は、オーベルシュトルツ、ルリ、クロード、フレデリク。兵は1万1000。
城塞都市スノール攻略は、我とレン、レオン、ナナ、ジル。兵は6000。
遊軍は、デュラン、アベル。兵3000。
作戦名は、『白アゲハの羽化』」
大陸暦717年7月14日 9:00 オロール王国
ルーレン・フォン・アルノー伯爵が指揮をする北伐軍が北上をして、パリリス西の軍事城塞コトーを目指す。
「リヤン王子の勅命である。コトー南10kmを目指す」
「アルノー伯爵、くれぐれもお忘れなく。我々北伐軍はコトーにいるギャレット将軍を牽制するだけです」
「ニコラ子爵、分かっておるわ。アードラー帝国軍4大軍神の1人、あのギャレット将軍に戦いを挑むわけがなかろう」
「それを聞いて安心しました。ギャレット将軍がコトーから出てきたら退き、コトーへ戻れば前進する。我が軍は、鼻先を飛ぶハエのような絶妙の距離感が大事です」
「ハエか。害はないが鬱陶しい・・・実に的を射た比喩だ。がははははっ」
アルノー伯爵も参謀ニコラ子爵も、自軍の任務をハエに例えて笑う不思議な人物たちであった。
大陸暦717年7月15日 11:00 軍事城塞コトー
軍事城塞コトーは、険しい丘を城塞化した天然の要害であった。コトーの周りは平原であったが、それより外側は深い森に囲まれていて外敵の侵攻を阻んでいた。また、東は大河に守られており、まさに難攻不落の軍事城塞であった。
「ギャレット将軍、報告です。
オロール王国軍4000がこのコトーに進軍して参ります。軍旗からアルノー伯爵隊のようです。
現在コトー南14km。あと4kmで第1監視砦に達します」
「4000程度で、このコトーを落とせると考えているのか・・・陽動か。
陽動だとすると、狙いはジェルム皇子のおられる首都パリリスか。
ジェルム皇子にお知らせしろ。また、ここから兵5000をパリリス増援に向けろ。更にパリリス南の国境まで索敵隊を派遣しろ。
我は兵6000を率いて第1監視砦に向かう」
「はっ」
アルノー伯爵隊は、コトー南の第1監視砦を攻撃していた。
「アルノー伯爵、この監視砦の兵は僅か400。あと2時間もあれば落とせます」
「ニコラ子爵、そろそろギャレット将軍が到着する。ここが引き際だ」
「はっ、予定通り4㎞退きます」
アルノー伯爵隊は、監視砦攻略を目前にして後退して行った。
ギャレット将軍率いる6000の兵が第1監視砦に到着した時には、アルノー伯爵隊の姿はなかった。
「やはり、陽動か」
ギャレットがそう呟いた時に、
「ギャレット将軍、南4㎞に敵4000が陣を敷いています」
と、斥候隊の兵士が報告した。
「追うぞ」
ギャレット軍が南へ駆けて行った。
「ギャレット軍が、監視砦を出て追撃して来ます。その数6000」
アルノー伯爵隊は、報告を聞くとニヤリとした。
「6000か、ギャレットは我らを見くびったな。このまま南へ4㎞転進する。退け!」
アルノー伯爵隊は、ギャレット軍から更に南4㎞まで後退し、森の前で陣を敷いた。
「あれが逃げ足だけは速いアルノー伯爵隊か。一気に揉み潰してやる」
ギャレットが全軍に突撃命令を発した。
その時、奥の森から1000人規模の隊が左右から出てきた。更にギャレット軍を挟むように左右から別の隊が走って来る。
これを見たギャレットが攻撃を中止した。
「伏兵・・・本体と合わせて8000はいる。それにあの奥の森を見てみろ。枝葉が揺れ、多数の鳥が飛び立っている。まだ伏兵が潜んでいるのだろう」
「ギャレット将軍、いかがしますか」
「首都パリリスも気になる。一旦、第1監視砦まで退くぞ」
ギャレット将軍は、4大軍神と称えられるに相応しい迅速な判断をした。
まだ森の中に多数の伏兵が潜んでいた場合、例え全てを打ち払ったとしても、自軍に大きな損害が生じる。そうなれば、オロール王国軍の狙いが、首都パリリスであった場合には、皇子ジェルムを守り切れなくなると判断したのだ。
「ふぅー、正直肝が冷えたわ。
ギャレットめ、退いたか・・・流石は軍神といわれる将軍だ。お陰でこちらは助かった。
あのギャレット軍6000にそのまま突撃されたら、我が隊8000は全滅していただろう」
アルノー伯爵は震える唇で呟いた。
「アルノー伯爵、お見事な策でした。
我が軍の伏兵は4000。本隊と合わせても8000。背後の森を利用して兵の数を倍に錯覚させることができましたね」
「もう2度と賭けはせぬぞ。
あと1時間したら、本隊4000を4㎞北へ前進させる。だが、兵に逃げる用意はさせておけ」
「はっ」
戦闘力では遥かに及ばないアルノー伯爵隊は、地の利を上手く利用した策によって、4大軍神の1人、ギャレット将軍を監視砦まで引っ張り出し、膠着状態へと持ち込むことに成功した。
大陸暦717年7月20日 7:00 シューツ公爵領城塞都市スノール
「ナナ」
ソレイユが城塞都市スノールの10㎞手前で軍を止め、声をかけた。
「未来の旦那様、スノールの偵察ね。任せて頂戴」
「頼んだぞ」
「はーい」
ナナは小さな樽を抱えると、カイとロキ、オーリ族10名を連れて北北西へと馬で駆けて行った。
翌日の夕方、幕舎にはソレイユとレン、レオン、ジルがいた。中央のテーブルの上には城塞都市スノールの地図が広げられていた。
「城塞都市には多くの民が住んでいる。砲005は使えない」
ソレイユが地図を前に話をしていた。
そこにナナとカイ、ロキが偵察を終えて戻って来た。
「ナナ、ご苦労だった」
「どういたしまして。スノールの報告をするわ」
ナナはテーブルの上の地図を見ながら、差し出された器の水を一気に飲み干して指さす。
「一言でいえば、難攻不落の城塞都市に造られているわ。
スノールはほぼこの地図通り、この河がぎゅっと曲がっていて、その内側に沿ってスノールの最外郭の城壁があるわ。河の水面から10mの高さに陸があって、そこに石の城壁が高さ5mで築かれているの。
その最外郭の城壁内に入るには、河に架かった石造りのアーチ型の橋を渡る必要がある。橋からつながる城門は北と東と南の3か所。
内側は石造りの家々が立ち並び、これ自体もちょっとした城壁ね。商店街や工場、農地まであったわ。人口は5万人というところかしら。
スノールの中心は小高い丘となっていて、ここが三重、こっちは二重の城壁、丘の上に城があったわ。守る兵士はおよそ5000」
初老のカイが補足する。
「河の水深は1.5~2m。水流はさほどない。
最外郭の城壁上の兵士の配置は200mおき、橋の入り口と城門に衛兵が10名ずつ。城門内には詰め所があり、そこに衛兵が各10名」
今度はロキが口を開く。
「最外郭の城壁内の街に兵士が4000弱、兵舎はこことここ、そっちとそこの4か所。
中央の丘の上の城内には兵士が1000」
「弱点はあるのか」
24歳の巨漢のジルがナナの眼を覗き込むようにして尋ねた。
「最初に言ったでしょう。スノールは難攻不落の城塞都市に造られていると」
ナナはそう言ってからニヤリとする。
「でも、攻略はできそうだわ。城塞都市の造りは見事でも、そこにいる兵士たちの士気は酷いものよ。弛んでいるのよ。民をからかったり、酒の匂いがしたりする奴もいた」
「夜襲か」
そう呟くレンの瞳が光った。
「その通りよ。夜は警備の兵士も酒を飲んでいたわ。ただ、流石に夜は城門を閉めていたから、それを開けなければならない」
「ナナ、できるか」
「未来の旦那様、勿論よ。既に仕込みはしてあるわ。今夜も行って来る。
あ、でも突入する門はここ」
ナナは地図の西を指した。
大陸暦717年7月23日 1:00 城塞都市スノール西門付近
ソレイユは馬の脇に立って手綱を持っている。同様に1000の騎兵隊も手綱を握り、息を殺して闇に潜んでいる。歩兵も闇に這う虫の様に、閉じられた西城門付近に伏していた。東の空から昇り始めた下弦の月は雲に隠され、兵士たちの白目だけが青白く異様に輝いて見えた。
西城門がゆっくりと開いていく。
ソレイユは馬に乗ると、騎兵隊の一斉に騎乗する。
サーベルを抜いてゆっくりとサーベルの剣先を城門に向ける。闇の中でサーベルが白い光を放っていた。
「『白アゲハの羽化』作戦、スノール攻略を開始する」
ソレイユは、落ち着いた口調で命じた。
西城門に男女の人影が見える。腕を回して手招きをしている。
ソレイユは城門を潜ると、手招きをしていたナナの目を見て合図する。すると、オーリ族の者たちがソレイユ軍の先頭に立って案内役となった。ソレイユたちは、足音や息を殺しながらスノール城内の通りを、馬の轡を引いて行った。
大きな通りに出ると、先頭を案内するオーリ族が5方面に分かれた。ソレイユ軍も5分割して進む。目的地は兵舎4か所と中央の丘の城塞であった。
ソレイユ軍1000の兵士がスノール兵舎を取り囲み、兵舎に火を放つ。パチパチと火の粉を巻き上げ、辺りを橙に染める。
「火事だー!」
「敵襲か?」
「焼け死ぬぞ、外へ逃げろー!」
焼ける兵舎からスノール兵が飛び出して来る。
ソレイユ軍銃士隊の威嚇斉射によって、炎の反射とけたたましい銃声が夜の帳を破った。スノール兵は、そのまま地に伏せる。
「動くな。動けば撃つ」
地に伏した兵は身動きが許されない。兵舎から外へ避難しようとする兵士も出られない。
「助けてくれー。このままでは俺たちは焼け死ぬ」
「助けて」
「頭の上で手を組み、歩いて来い」
銃口を突き付けて兵士が命じた。
スノール軍兵舎の兵は全て捕虜となった。城塞都市スノール城内にあった4か所の兵舎も同様の結果となった。
ソレイユ軍の城塞都市スノール攻撃4時間前 スノール西城門前
「おい、いろは、今夜も酒持ってきたか」
城門を守る衛兵が少女に声をかけた。
「一昨日の夜と昨夜に試飲したでしょう。もう無いわよ。
その酒が上手かったら、金出して買ってよね。商売なんだから・・・」
「何だ。今夜は何もなしか」
「東方のみそ味の干し肉を持ってきたから試食してみる。
明日からはお代を貰うからね」
「お、これはいける。いろは、これは美味いぞ。何か酒が欲しくなるなー」
「もう、催促してもだめ。今夜はダメだって言ったでしょう」
「この地で珍しい酒を売りたいのだろう。まずは、俺たちが試飲して、美味けりゃ、お前が始める酒屋のお得意さんになるぜ。持って来い」
「嫌よ」
「いろは、持って来いって」
「もう、今夜が最後だからね」
3時間後
「だから、今夜はダメだって言ったのに。
警告通りでしょう。本当に今夜が最後になったわね」
メイクを落とし、遅効性睡眠薬を入れた酒樽に腰かけたナナが酒樽をポンと叩いた。酒樽の周りには、衛兵数十人が転がっていた。
城塞都市スノール中央の小高い丘に造られた城塞からスノール騎馬隊700が姿を現した。
「レン、あの騎馬隊の中央の青い胸当ての騎馬、かなりの強者のようだが」
「ソレイユ様、恐らくあれが騎馬隊の指揮官でしょう。
あの指揮官とやりあった騎兵は、それなりに倒されるでしょうね」
「それなら、我が引き受けよう」
「承知しました。私はその指揮官の脇にいる角兜の騎馬兵を引き受けます」
「あの角兜もかなりだな」
スノールの騎馬隊が丘の斜面を駆け降りて来た。
先頭のソレイユにレンが続き、1000の騎兵隊が斜面を駆け上がる。騎馬隊と騎兵隊が激しくぶつかる。
ソレイユは先頭の青い胸当ての騎馬が突き出す槍をサーベルで受け流し、そのまま槍の柄を滑らすようにしてサーベルの剣先を喉元に伸ばす。喉を突かれた騎馬兵はそのまま落馬した。
角兜の騎馬は槍でソレイユを薙ぎ払おうとするが、その槍をレンが剣で弾き返し、そのまま首筋を一閃した。
ソレイユ軍騎兵隊とスノール騎馬隊がすれ違って行った。互いに距離を開け、振り返って確認すると、スノール騎馬兵は400騎ほどしか残っていなかった。日頃の調練の差が出ていた。
小高い丘の上から、ソレイユは眼下のスノール騎馬隊を見下ろしながら、レンに話しかける。
「ここは丘の上、地の利は我々にある・・・勝敗は決した。スノール騎馬隊は、まだ戦いをするつもりなのか」
「指揮官と恐らく副官も失ったスノール騎馬隊は、我々との力関係や状況を把握することができないのでしょう。それも仕方ありません。最早、全てを倒すしかないです」
「・・・無益だ」
スノール騎馬隊とソレイユ騎兵隊が互いに睨み合い、距離を詰めていく。
「我に続けー!」
ソレイユがサーベルを高々と上げて叫んだ。
先ほどと異なり、上下の位置関係が逆転している。ソレイユ隊が上からの逆さ落としとなっていた。馬の勢いに勝る騎兵隊が丘を駆け降りる。
ソレイユ軍騎兵隊と騎馬隊がすれ違うと、下に駆け降りるソレイユ軍騎兵隊しか残っていなかった。
ソレイユが、自軍の騎兵隊を振り返って損害を確認する。すると、事実上の初陣となった16歳のレオンが槍を固く握り、血走った眼をしたまま荒い息を繰り返していた。
ソレイユはレオンの脇に馬を進めて、肩に手をかける。
「レオン、・・・レオン・・・・」
「・・・ヴォ、グルル、・・・ヴォ、グルル」
レオンの視点は定まらず、荒い息を繰り返すだけだった。
「レオン、もう十分だ。騎馬戦は終わった・・・ゆっくり息を吐け」
レオンはハッとしてソレイユの瞳を覗くと、深く息を吐いた。
「・・・ふーーーっ、ヒューーゥ。・・・ソレイユ様・・・落ち着きました」
返り血を浴びたレオンの銀のフルアーマーの腰から垂れる橙の布が風に揺れていた。
大陸暦717年7月23日 2:30
ソレイユは、城塞都市スノール中央の小高い丘に造られた城塞を2000の兵で囲んだ。城塞の内では、スノール兵300が守備している。
城塞の周りには、騒ぎを聞きつけた民たちが、恐る恐る集まって来ていた。城塞を取り囲む兵がオロール王国軍だと分かると、民たちは歓喜した。
元々オロール王国民であったが、領主ルーグ・フォン・シューツ公爵がアードラー帝国に寝返ったため、奴隷のように扱われてきた。その苦しい生活から解放されようとしているのだ。民は左手に松明、右手に鎌や鍬を持って中央の城塞の周りに、続々と押し寄せて来る。その数1万。なおも、その数は時間と共に増えていく。
「ソレイユ様、ここは急ぎ攻略をして、兵の命を無駄にするよりも待ちましょう」
「待てば、スノールの城塞は攻略できるのか」
「恐らく」
「分かった。昼まで待とう」
朝4時になると、城塞を囲む民はついに4万を超えた。小さな子や老人、病人などを除くほぼ全ての民が集まっていた。
「アードラー帝国軍は出ていけー! 逆賊シューツ公爵軍は出ていけー!」
民は声を張り上げ、足で地面を何度も踏みつけた。
4万の民の叫び声は暁の天に響き、民の足踏みの度に丘の城塞はズズズーンと揺れた。
大陸暦717年7月23日 6:00
丘に築かれた城塞の門が開いた。
白旗を持った兵を先頭に、木箱を持った兵士が続いて出て来た。
木箱をもった兵士がソレイユ軍に跪く。巨漢のジルがその木箱を開けると、中には城塞都市首長フィルマン・フォン・ガルシアの首があった。
こうしてソレイユ軍作戦名『白アゲハの羽化』の二正面作戦のうち、一方の城塞都市スノール攻略は成功した。




