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第9話 お姉様大好きなの~

 ☆☆☆第18修道院



 おかしい。お金が貯まりすぎだ。

 メアリー新聞に、本、貸本屋、これは落ち着いたがジワジワ売れていやがる。


 制服の特許料が寝ていても入ってくる。

 他国の商会からも問い合わせが来ているとな。


 お金が集まりすぎて怖い。帳簿を見たが明らかにおかしい収入がある。


 トーマスに聞いた。奴は勝手に信徒頭を名乗っている。


「何で、メアリー新聞がこんなに売れるの~」


「はい、信徒が自発的に進めているのです。支部を作ろうかと」


「ダメなの~、絶対に無理をしているの~!」



 調べたら、一家庭で5部取っているところがあった。一人一メアリー運動?


 お前らはナンミョー先生の新聞社か?奴、生きているのか?



「一家庭一部なの。他人に勧めるのは禁止なの~じゃなきゃ、第18教会から除籍なの~」

「ヒィ、それだけは・・・」


「宗教で人を苦しめたらいけないの~!宗教は生活を豊かにするためにあるの~!」


「メ、メアリー様」

「何て、素晴らしい」


「もお、ヤーなの」


 何を言っても曲解して感動される。

 そうだ。お金を捨てよう。


 この世界には銭湯はないだろう。

 いや、サウナとかはありそうだな。


「第18修道院の近所に、平民のための入浴場を作るの~!職のない人を雇うの~!インフラを整備するの~!アパートも作るの~!メアリーのお金を全部使っていいの~!」



「メアリー様、さすがにそれは儲かりません。お考え直しを」


 ペシペシペシ!


「やるの~!」

「ウウ、ペシペシ有難うございます。やらせてもらいます」



 トーマスは考えた。


 これはどう考えても失敗する。入浴場はビジネスとしては割に合わない。

 そうだ。失敗してまた怒ってもらおう。


 ニヤ!


「大々的に用地買収するぞ!場所はこの第18修道院の周りだ」

「「「はい!」」」



 ・・・・・


 カンコンカンコン!


 おお、いいぞ。工事の音が修道院まで聞こえて来た。

 これで、お金は減るだろう。


「トーマス、よくやったの~」


「え、そうですか・・・」


 貧困地区に工事などまるで金をドブに捨てるようだ。とトーマスは思っていたが、



 ・・・・




 ドッサリ!


「ヒャア、何で、こんなに金貨が増えるの~!」


「さすがです。このトーマス目から鱗です!浴場を中心にして地価があがり。アパートには役人や商会員が入っております。

 劇団や吟遊詩人も集まっております!彼らから興業の権利代も入って来ますぞ!

 用地も値が上がり続け・・・これは、来ますぞ」



「ダメなの~!お金貯まりすぎなの~!」


 ペシペシペシ!


「ヒィ、有難うございます!」


 いや、こいつは悪くないな。

 謝罪をするか?


 と謝罪する間も与えずに、次の策を言いやがる。


「投資しましょう。貯金も中々悪ですが、もっと、貯めてから貯金をすればデフレになり。物の価値があがりますぞ」



 貯金が悪とな?そうか、この世界は金本位制だ。貨幣の流通量は少ない。金を貯め込むと経済が回らないか。


 そう言えばあったな。お金を埋めて隠していたら、付喪神になって、使ってくれと化けて出てきた話が、そういうことか?


「投資するの~!スー商会なの~!」


「スー商会?あそこは勢いがありません」


「いいの~!」


 お姉様、私を断罪してくれたお姉様、今は誰も叱ってくれない孤独だ。

 せめてもの恩返しだ。


 お姉様、大好きだ。事業、上手くいって欲しい。




 一方、スー商会の業績はジワジワと下降していた。





 ☆☆☆スー商会



「あら、新人さん。ダイア侯爵夫人よ。娘のドレスの進捗状況はどうなっているのかしら。試着の時間日程に来たのわ」


「は、はい、少々、お待ち下さい!」


 ドタドタ~



 ☆10分後



「はあ、はあ、ありました」


「ちょっと、前の方、ルイドさんは?」


 ドレスの持ち方は素人ね。これ、金貨12枚のドレスよ。まず。進捗状況を聞いているのに・・・・出来ているのに連絡も寄越さない。


「貴方、前職は?」

「はい、八百屋の店員です。エヘヘ、ここで募集をしていたので応募しました」


「そう、これは、貴女のせいではないわね。商会長を呼びなさい」


「オリビア様は、学園です。16時くらいに店に来ます」


「そう、様付けね。・・・あら、貴方、何か紙を持っているわね。寄越しなさい」


「え、はい」


 ルイドさんが書いた申し送り事項ね。さすがといいたいが。

 あら、行き先も書いてあるわね。スージーのドレス店?


「はい、お金よ。後で使用人に取りに来させます」

「毎度ありー」





 ☆☆☆スージのドレス店



 まあ、下町、古着屋さんの前にあるのね。


「いらっしゃい。こちらは型落ちだが、綺麗なドレスあるよー」


「「「「キャー!キャー!」」」


 盛況の古着屋を尻目に店に入る。


「いらっしゃいませ。ダイア侯爵夫人様」

「貴方、ここにいたのね」

「はい、ご注文でしょうか?商会長スマイリーを呼んで参ります」



 娘の入学に合わせて、制服を注文しに来た。



「商会長スマイリーでございます」

「娘が制服に夢中なのよ。制服って何かしら」


 丁寧に見本を持って来てくれた。



「まあ、膝下までしかスカートの裾がないわ。ふしだらではないかしら」

「はい、動きにくいとの要望があり短くしました。ソックスで隠すので問題はございません」

「いいわ。でも、これは地味ね」

「ご希望がございましたら、裾や胸などに刺繍をいれます。皆様、これで差別化を図っています」

「いいわ。娘を連れてくるわ」




 ☆☆☆スー商会



 オリビアは当主になってから、大幅なコストカットを行っていた。

 それ自体は間違っていない。しかし、



「この改革の効果が現れるのはもう少し先よ。多量出店で土地を抑えているけど、工事費の融資先を探しているわ」


「ほお、そうでございますか。実は、優秀な若手商会長を支援するプロジェクトがございます」



「まあ、まさか。交換条件は?」


 この美貌の花を手折る気かしら。と思わず身構える。

 このトーマスと言う男、あまり評判は良くない。


「いえ、これはM資金でございます。年利5パーセントで十分でございます。とりあえず金貨500枚です」


「嬉しいけど・・・」


「ええ、勿論、返済状況を見て、増資も可能でございます。我が主人の意向を聞かなければなりません」


「そうね。融資をお受けしますわ」


「はい、一応、根担保にしましょう。ご存じですか?」


「え、ええ、勿論、知っているわよ」


 増資や返済の時に、いちいち契約書を書き換えなくても良い形式ね。

 最近、出回っているわね。


「極度額金貨一万枚にしましょう」

「いいわ。それでお願いします」



 ・・・・・





「オリビア様、当商会が抑えていた土地を買いたいと申し出ている方がいます」


「放っておきなさい」

「それが、5倍で買うそうですよ」



 ・・・調べたら、地価が上がっている。理由は定かではないわ。


「大公家に連絡を、全資産を土地に投資するわ!」


「しかし、そんな資金は」


「大丈夫よ。良い考えがあるのよ」



 私は手付け金制度を利用した。10分の1の値段を入れておけば、土地を購入出来る権利を得る。

 土地を買える権利よ。その状態で土地を高値で買ってくれる人を探す。


 簡単に見つかるわ。

 先にお金をもらい。


 その金で土地を購入し、そのまま譲る。利ざやが儲けよ。


 地図だけでビジネス出来るわ。



「あのお嬢様、織物ギルドから来月の仕入れをどうするか問い合わせが来ています」


「もお、それどころじゃないのよ。10倍の収益があるのよ。貴方やりなさい」


「私、先月まで八百屋でしたわ」


「いいから、実戦で覚えなさい」




 王国は空前のバブルに見舞われた。


 土地が高騰をし続けている。


 そうだ。M資金からもっと融資してもらおう。



「ほお、よろしいのですかな?金貨一万枚になりますが」


「構いませんわ。もっと、願いたいですわ」

「主に聞いてみます」



 それでも足りないから、高利貸しから借りた。



「このアパートは月銀貨50枚の家賃収入ですが、金利は銀貨100枚になります。買う意味が分かりません」


「馬鹿ね。すぐに上がるわ」



 殿下も公爵令嬢も間抜け面をして学園で授業を受けているだけ。


 私が王妃になる日も来るわ。




 一方、姉は素晴らしいと前提条件で動いているメアリーは融資を断った。



「増資のお願いなの~?」

「はい、そうです」



 ・・・うむ。何かバブルが始まった。私のせいだ。

 どうしよう。


「今、バブルで、人件費や生地や土地代が上がって、お姉様苦しいの~?」

「バブル?は分かりませんが、恐らく」


「増資はダメなの~、これ以上借りたら、いくらスー商会でも経営が苦しくなるの~!」



「では、如何しますか?」


 バブルを封じ込める策はあるが、国王級の力が必要だ。

 無理だな。とにかく、訴えるか。



 メアリー劇団がいつの間にか出来上がっていた。

 こいつを使おう。

 バブルの危険性を訴えるぞ。



「とりあえず欲しがり令嬢の劇をやるの~!吟遊詩人や劇団に依頼なの~」




 ・・・・・・




 ☆☆☆メアリーお遊戯会



「欲し~の!欲し~の!欲し~の!土地欲し~の。土地を転売して儲けるの~!」

「お嬢様、欲張りでございます」



「ウワ~ン、損失を出したの~!」

「お嬢様、ざまぁでございます」



 ザワザワザワザワ~~~~


「土地投機から手を引けってことか」

「教訓か」

「しかし、簡単に儲かるぞ」



 信者は半信半疑であった。

 信仰を試されていると感じる者が多数いた。







最後までお読み頂き有難うございました。

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