第8話 ペロペロキャンディー法論なの~
☆☆☆王都女神教会本部
「ルンルンなのです!メアリーちゃん。出世するのです」
「良かったですね。アリス様」
回廊を聖女アリスとお付きの者が歩いていた。護衛騎士、シスター2名である。
そこに、妙齢のシスターたちが突如、柱の後ろから姿を現し、アリスに話しかけた。
「あら、聖女アリス様、この前の儀式は個性的でしたわね」
個性的、つまり、失敗をあげつらっているのだ。聖女だから表だっての悪口は言えない。
「この前は、大変見苦しいものを見せたのです!次は頑張るのです!これから練習するからご指導ご鞭撻下さいなのです!」
いつもは、この言葉で縮こまっていたが、様子が違う。メアリーに励まされて心が強くなったのだ。
「何を!」
「マーゴット様、おかしいですね」
「おい、BBA!」
ガタン!
「ヒィ、グホ、ウゴ!」
「「「ヒィ」」」
「次、アリス様に何か言ったら、舌抜くよ。この無役が!」
「マーゴット様!」
「こちらは年上よ!」
「だから?」
メアリーをして落ち着いたシスターと表されたこの女性は法王勅命でアリスの護衛につく、戦闘シスターであった。
文字通り。マーゴットと呼ばれる妙齢の女性の口に手を入れ舌を引っ張った。
「ケリーさん。どうしたのですか?」
「は~い。アリス様、マーゴット無役シスター様に落とし物を拾って頂きました~今、参ります」
・・・気に食わないわ。アリスは一応聖女だ。なら、最近、ブイブイいわしている第18修道院の幼女に恥をかかせて、アリスを泣きっ面にしてやるわ。
「ウ、ゴ、皆様、第18修道院に行きますわ」
「「「はい!」」」
一方、メアリーの居城、第18修道院には使者が来訪していた。
☆☆☆第18修道院
「修道院シスター見習いメアリー、修道院長補佐及びシスター(仮)に任じる!」
「謹んで受けるの~」
なんやら、謹慎中の身でありながら、シスター(仮)に任命されてしまった。
でも、やることは変わらないな。
と言っても、老シスター様と二人の修道院だ。
でも、私、謹慎が解けたらどこに行くのだろう。
領地のお父様のところか?お姉様のところはないだろうな。
今のうちに、畑仕事を覚えておくか?
お、扉の外に人のざわめきが、そろそろ時間か?
ガヤガヤガヤ~
「メアリー様、懺悔を受けたいと来ておりますのじゃ」
「入れるの~!」
老シスター様は、私を様付けする。これも何とかしなければ、いや、今は目の前の懺悔という名の相談を片付けよう。
「懺悔するの~」
「夫は騎士でして、私、実家に数週間帰らなければならなくなりました。妹の婚約式です。だから、夫の食事が心配で、心配できちんと作れるかどうか・・・」
ほほー、うらやましいな。おい。
って、このような場合、ほとんどが、コミュニケーション不足だ。
「大丈夫なの~、独身男性のための定食屋あるの~、旦那様に聞くの~」
「はい、そう言えば、独身時代はどうしていたのかしら。そうですね!」
お気持ちに上限を決めた。金が集まって仕方ないのだ。
大銅貨2枚(二千円)、これでも10分二千円だ。占い師か?
しかし、女性が多くなったな。
と思っていたら、おば様たちがやってきた。
【ここね。入るわよ!】
おば様は10人近くいる。
あれ、シスター服か?いや、色が違うようだが。
「18修道院って」
「名前もないのね」
「最近、多くの女性が幼女の虚言にたぶらかされています。皆様、騙されてはいけませんよ」
おば様たちは
キョロキョロ見渡して、こうのたまわった。
「ちょっと、男性がいるじゃない」
「そうよ。女性が性的搾取にあうわ!」
「ここは、懺悔する所なの~!」
「貴方が噂の幼女ね。いい。懺悔はこうするの。代わりなさい!」
乱暴に、懺悔室に入った。
さきほどの女性に話を聞き。
「キー!女性は誰しも聖女の素質があるのよ!未聖女と呼ぶべき存在よ。旦那には草でも食わせておきなさい!」
「ヒィ、もう、いいです。メアリーちゃんの言うことを聞きます」
サーと逃げて行った。
老シスター様は、口を開けて、アワアワしていた。
「メアリー様、大変じゃ、王都女神教会付のマーゴットです。あちこちで法論をふっかけているのじゃ。逃げなされ!」
何だ。恐れられているのか?
「次!次!懺悔したいものは入れ!おっさんは気持悪い!」
滅茶苦茶言っているな。
そうだ。このおば様に叱られて、メアリーは手も足も出なかったと信者たちに幻滅をしてもらおう。
「メアリーと法論をするの~!勝ったら、ここで懺悔を受けてもいいの~」
「・・・・良い度胸ね。まさか、私に法論をふっかけるとは、泣かすわよ」
と始まった。女は度胸だ。違う愛想だっけ?
「問う!女神様の慈悲は、どこにある!」
私はあっかんべーをした。子供だ。ふざけている。叱ってもらおう。
「「「「!!!!!」」」」
(神聖の力は目にあり?)
(この幼女、女神様が聖なる光を目から出して照らしている。人族を見る。すなわち慈悲を与える。見則慈悲を知っている・・・)
(いや、教義を知っていても、こんなに簡潔に答えるなんて)
「・・・!無声式ね。良い度胸ね」
良い度胸おばさんか?まあ、いいわ。これで、負けだろう。
うん?
おば様は4本の指を指し示した。
(4職の意義を述べよ)
何だ。メアリーは、一日、ペロペロキャンディーを4本とな?ふざけている。
私は、午前と午後のおやつの二回だ。
私はVサインのように指を二本出した。
「「「「!!!!」」」
(二職で十分!勇者様と聖女様で事足りると?)
(あの幼女何者?マーゴット様の鉄板を破った?)
(聖女、勇者、魔道師、剣聖、あのガデムを倒したとき、聖女様と勇者の二職だけだった。無駄に増える勇者パーティーへの批判?)
いや、最近は相談で頭を使う。キャンディーは3本の日が多い。訂正しよう。
私は指を三本出した。一日ペロペロキャンディー三本ですという意味だ。
さあ、どうだ。
「「「!!!」」」
ヒソヒソヒソ~
「あの幼女、仕掛けてきたわよ」
「三界、天空、地上、地下の真理はどこにあるとマーゴット様に問いかけているのよ」
ついに、マーゴットは声を出した。メアリーが無声で答えれば勝ちである。
「どこにあるのよ。そんなもの・・・」
ハニャ、こいつ、ペロペロキャンディーの場所を聞いているのか?
まあ、いいや。寄越せと言ったら一本くらいくれてやろう。
最近、お金が余って仕方ないしな。
私はペロペロキャンディーをしまっている胸のポケットをポンッと叩いた。
「「「!!!」」」
「・・・胸に真理があるって言っているのね。何て覚悟!」
「女性至上主義の私達が否定したら、存在意義がなくなるわ」
「・・・初めて、負けたの?」
ガタンとマーゴットは膝を落とした。
ハニャ、どうしたの?
私は手を差し出した。さあ、これで、この教会の懺悔業務を請け負ってもらおう。
だが、こいつ、誰だ?
そうだ。まず人に聞く前に名乗ろう。
「シスター(仮)、修道院長補佐のメアリーなの~!貴方のお名前と役職をお聞かせ願いたいの~!」
チョコンとカーテシーをして問うた。
「「「!!!」」」
「末恐ろしい子・・・」
「傷に塩を塗るのね」
へ、何を言っている。
「ウグ、グスン、マーゴット、シスター、王都女神教会預かり・・・無役」
「「「ウワーーーーーーー」」」
パチパチパチパチパチ!
「さすが、メアリー様!」
「わしゃ、初めて見た。難癖のマーゴットが負けた姿を」
「あの年齢で無役だってさ!」
「へ、何なの~!」
話を聞いたら、未だに、無役?シスター服ピンクだったのはおしゃれ?
無役、ああ、役職がないのか?聞いちゃいけなかったのか?
「はあ、はあ、はあ、覚えておきなさい。メアリー!絶対に許さない」
おば様たちは去った。
その後
ドンドンドン!
【第18修道院には行ってはいけません!】
【そうです。滅茶苦茶なことを言われます!】
【あの幼女は女の仮面を被った男です!】
と王都を練り歩いたが、
ザワザワザワザワ~~
「何だ。あいつらが言うのだから」
「ああ、第18修道院は善い修道院だ」
「俺、聞いたよ。完璧に論破されて、あの年齢で『無役です』と言わされたんだってさ」
「「「「ギャハハハハハハハハ!」」」」
☆☆☆第18修道院
「ヒィ、何なの~!行列が出来ているの~」
更に、人が殺到するようになった。
そして、マーゴットたちは
☆☆☆王都女神教会本部
「支援金打ち切りです」
「ヒィ、何でよ」
「はあ、お前ら懺悔受け付けてないだろう?」
「活動実績、怪しいだろう。何だ、週二回とは?」
「この車輪代の経費の請求は?」
「告、マーゴット以下10名はシスター見習いとして、掃除業務に任じる」
「そ、そんなー」
シスター見習いに落ちたマーゴットたちであった。
最後までお読み頂き有難うございました。