第5話 聖女様が来たの~
☆☆☆第18修道院
ガヤガヤガヤ~~
「幼女に相談させて下さい」
「ワシも幼女に!」
「ヒィ、メアリーを指定しておる。掃除は良いから懺悔室に入れ」
「はいなの~」
何だ。こんな寂れた教会に人が集まるようになった。
何が起きた。
とりあえず懺悔を受けた。
「私は見ての通り不細工で・・女性にモテません。モテモテになりたいのです。どうしたらいいでしょうか?」
懺悔ですらないじゃん。さっさと帰らそう。経典だと、まあ、何だっけ。一人の相方を大事にしなさいって感じだ。
「フヌ、どんなモテモテでも、一生、添い遂げる異性は、一人なの。本当に大事に想ってくれる人は一人なの~、出会いを大事にして、もっと、良い異性が現れるとか思わないの~、一人のモテモテになればいいの~」
これは、あれだ。同級生でイケメンがいた。親が会社社長、話しも上手くて、女子に大人気だったが、意外だったのは、結婚の相手は、まあ、容姿は良くなかった。
話を聞いたら、
『俺が本当にキツい時に、彼女は支えてくれた・・人生のパートナーだ。俺の容姿と金につられてきた女は・・・親父の会社の事業が失敗したら、金回りの良い男になびいた。彼女、俺を支えるために簿記を勉強している』
『お幸せに・・・グスン』
本当のイケメンは、人生のパートナーを選ぶのだ。
あったな。スポーツ選手で、かなり年上の女性を選んだ漢、英語が出来て、旦那様を支えているそうだ。
「あ、有難うございます・・・」
チャリン♩
・・・・・
「トム、どうしただ?花さ、持って来て」
「結婚してくれ、君の献身に気がついた。幼なじみだから、今まで当たり前に思っていた」
「嬉しいだ。親に挨拶にいくべ!」
まあ、相談内容は、いろいろある。
恋とか、人間関係とか、中には、投資関係とか、
「私は実業家トーマスと申します。
実は、かなり利回りが良い投資話があるのです。紳士クラブで、外国の伯爵から紹介されました。
一月で2倍になるそうです。魔道通信の基地局を作る事業で、今、ここだけの話です。試しに金貨10枚を預けたら、翌月20枚になって返ってきました。
全財産を預けるべきでしょうか?伯爵は万が一があるから、やめておけと言うのですが、どうしてもやるなら、相談に乗ると言ってくれました。枠が後少しのようです」
そんなことあるわけがないが、相談に来るってことは乗りたいのだ。
「メアリー、昔話をするの~、ある日、山から、精霊がやってきたの。麦一樽を預けたら、魔術で2倍にして返すと言うの。農民は半信半疑で預けたけど、翌日、二樽になって返ってきたの~、次は倉庫ごと依頼したら、精霊は断ったの。他の農民も回らなければならない言うの~、ハンスは、熱心に精霊にお願いしたの~・・・」
「シスター様、それは、昔話、悪精霊に騙されたハンスでは・・・ハッ!」
ほお、何かに気がついたようだ。
しかし、似たような相談事が多い。ってか懺悔じゃないじゃん。
問答集みたいなのを作ろう。
名前はメアリー新聞でいいか。
一部銅貨1枚(100)円くらいにして、献金?いや、これは付随事業か?
恋の悩みとか、仕事の悩み。
「う~む」
「メアリー様、お悩みですね」
何だ。実業家トーマスさんだっけ。相談をしたら、
「分かりました。原稿を頂けたら小生が販売から税金の申請まで行います。まとまったら本にしようと思いますが、如何でしょうか?」
「よろしくなの~!」
「いえ、私は罪深いブタでございます。『やれ、ブタ』とお命じ下さい!」
「無理なの~」
何だ。実業家なのに自分を卑下している。実業家は自信満々だと思ったが違うのか?
そうか、小太りだから気にしているのか?太っているのは事実だ。
田舎者にここは都会ですね~と言ったら嫌みだろう。
「ブタさんは皆の役にたっているの~」
「ウウウウ、ブタ以下とのお言葉有難いです」
こいつ、人の話を曲解する癖があるな。
とその時は思っていたが、後に大騒動の布石であった。
とんでもないことになっていたと分かったのは、聖女様が訪問されたのがきっかけだ。
聖女アリス様、9歳、同学年で今年10歳になる方だ。
お付きの者と共に、
ドン!
と扉を元気よく開けて訪問された。
靴、服、ベール、全て手入れが行き届いている上等なものだ。
髪は銀髪、目は紺色、神秘的だ。開口一番、私への批判を言い放った。
「そこのシスター見習い!虚言を弄して、人々を惑わしてはいけないのです!」
ほお、分かってらっしゃる!
「そーなの。分かったの~」
「シスター見習いは修行に専念するのです!チヤホヤされていい気になってはいけないのです!」
「その通りなの~見識高いの~」
「ニャー!ニャー!」
あ、ニケちゃん。教会の裏に住み着いた猫ちゃんだ。
薄いオレンジと白の可愛い女の子だ。今、出てきてはダメだよ。
あれ、足を登ってくる。抱っこの要求か?
「もお、仕方ないの~」
「ニャー」
「ウ、グ」
聖女様はニケちゃんを抱っこしたがっているな。
「裏庭でお話を聞きたいの~!」
「フン、こってり、絞るのです!」
・・・・・
ニケちゃんをナデナデしながら、聖女様は悩みを打ち明けてくれた。
ナデナデ~
「皆、善い人ばかりなのです。だけど、アリスを子供扱いしているのです!今年、二桁なのです!」
「アリスちゃんはお姉さんなの~!おすまし顔が似合うの~」
「アリス様、お時間です」
「ええ、分かりましたの」
ツン!
「まあ、聖女様、お姉さん顔、お似合いですわ」
お付きのシスター様が、
「同じ年頃の女の子が教会にいないのです。どうか、聖女様のお話相手になって下さいね」
「はいなの~」
と言ってくれた。
ほお、20代前半なのに落ち着いた方だ。
☆☆☆数日後
「メアリー様、対談本が出来ました!」
トーマスがやってきた。
何だ?誰かと対談したのか?
本の題名を見て驚いた。
「何なの~、メアリー様、聖女様と世紀の会談!って、裏庭でお話をしていただけなの~!」
勝手に、聖女様との対談本が出来上がっていた。
この速さ。お前は宇宙神の生まれ変わり先生の出版社か?
内容は、
『メアリー様は素晴らしいのです』
『聖女様こそ素晴らしいの~~~~!』
『いえ、いえ、メアリー様こそ素晴らしいのですわ』
新興宗教の教祖か成金が偉い人と対談したときの本みたいだ。
ひたすら著名人と賞賛しまくっているだけの毒にも薬にもならない本。
バタンと閉じて、ポイッと投げた。
「はあ、はあ、はあ、却下なの~~~!」
「ヒィ!メアリー様、このトーマスを叱って下さい。さあ、ムチで打って下さいませ!」
さあ、どうする?斜め上に行ってしまった。
最後までお読み頂き有難うございました。