第2話 万能人物評なの~
☆☆☆第18修道院
何だ。この前来たメイドが令嬢を連れてきた。
美人だけど厳しそうだな。お嬢様か。
「ここね。私も懺悔したいの」
「シスターいないの~」
「貴女でいいわ」
「私の婚約者が、男爵令嬢に入れ込んでいるの。真実の愛に目覚めたと言ってうっとうしいわ。婚約者と言っても、もう姉弟みたいなもの。同年齢よ。引いてもいいけど、一応、面子があるわ。公式の場で婚約破棄を宣言されたら面倒くさいわ。もうね。どなたかアドバイスをして欲しくて、罪深くて困っているの」
もはや、懺悔は付け足しじゃん!これは、あれだ。婚約破棄ものだ。ここに相談に来るってことは、婚約者に、少しは未練があるのか?
「フニャ、なら、こうするの・・・」
私はアドバイスをした。
☆☆☆王宮
「ダンリー、好き、好き!・・・あら、どうしたの?平民の格好をしてぇ、お忍びで街にいくのね」
「キャサリン、実は、廃嫡になった。公爵令嬢との婚約を解消したい。君と結ばれたいと父上に言ったのだ。そうしたら、即、廃嫡で、市井で君と暮らせって命令された。共に頑張ろう」
「・・・私、お父様に相談をしなければ・・・」
「キャサリン・・・待て、何故、逃げる・・」
実は、これは、メアリーの助言により行った廃嫡エンドを演技したのだ。
真実の愛なら、たとえ、王子でなくても添い遂げるはずだ。と王子をたきつけた。
しかし、それっきり、男爵令嬢とは連絡が取れなくなった。
王子は、意気消沈とした。
「ダンリー・・・真実の愛じゃなかったわね」
「もう、女の気持ちが分からない・・・」
「そう、私との婚約は、今後の態度次第だわ。でも、しばらくは、様子を見てあげるわ」
「グスン、グスン、エリザベス」
「ちょっと、抱きつかないで・・・もおぅ、困った殿方ね。良い相談先を紹介するわ」
・・・・・・・
「懺悔するの~」
「実は、我は馬鹿かもしれないのです」
「ハニャ?」
何だ。今度はイケメンが来た。貴族だ。外に護衛がいるからかなりの高位だろう。
「我、学業は婚約者とガリバ、オスカーにかなわず。剣もマックにかなわない。どうしたらいいだろうか。この前も女にコロッと騙された」
高位貴族か。15、6歳か?若いな~、なら、何て言えばいいのかな。
この位の年齢の子に下手な事を言うと将来に悪い影響を与える。
馬鹿と分かっているうちは馬鹿じゃないと言うと、じゃあ、大丈夫だと危機感がなくなる。
これは、あれだ。一般的な大卒の幹部社員に求められていることを言えばいいのか?
まずはジャブだ。
「友人達は馬鹿にしているの~?」
「いいえ。それはない。我に地位があるからだと思う」
「女神様の元では平等だけど、生まれによって差があるの~、地位も貴方の個性なの~」
「そうなのか」
「貴族の当主は、浅く広い知識を求められるの~、全体を見通せる能力を求められるの~、するとやることが分かるの~、細かい専門知識は部下に任せるの~」
「しかし・・」
「当主になったら、更に頭の良い人達と経験のある年上の人たちがいるの~!今、悩んでいても仕方ないの~」
「具体的に我はどうすればいいのでしょうか?」
「お父様を真似るの~!!観察をするの~!!盗めるところは盗むの~!」
「父上は人格者で能力者だ。真似られない」
フム、面倒くさいな。
人事に入って分かった。人事資料のクレペリン曲線を見た。
効率を測る検査だ。単純な計算を出来もしない時間で、繰り返しやる検査だ。簡単な知能検査もある。
官公署や大企業で導入されている。
多く出来ても誤答率が高ければ悪い。少なくても正答率が高ければ良い。しかし、少なすぎても悪い。
これから見えることは、能力や行動、性格の特徴であり。
人の能力はあまり変わらない。ほんの少しの差しかないのだ。
サンプルも見た。
天才と言うものは人よりも少し集中力が高く、類推適応能力が高いのだ。
集中力が高いは、ゾーン状態に入れる。類推適応の高さはひらめきにつながる。
犯罪常習者は集中している時とそうでないときの差が激しい。
う~む。なら、万能人物評価を使おう。日本の偉人の評価だ。伊藤博文先生だ。
この貴公子に重なるか?
「貴方は、自分を、『才劣り、学幼し。質直にして華なし』と思っているのじゃないの~?」
「ウグ、そうかも」
「でも、その人は異国の宰相までになったの~、御用聞きに最適とか蔑まれたけど、調整能力に長けていたの~!」
「今は、学業と社交、与えられた貴族の家の仕事を一生懸命にやればいいの~!すると、いつか、これは、全てつながっていると思うときが来るの~!その時こそ貴方が輝ける時なの~!」
「そうか、分かった。やってみる!善は急げだ!」
「あの~、献金欲し~の!」
献金無しで行ってしまった。
しかし、この人物評価欠点もある。
才と人格は一致しない。テストが抱えている問題点でもある。
学業テストは学力、クレペリン検査は効率、面接は受け答え。知能検査は知能。
どのテストも、人格を測る事はできないのだ。
伊藤先生は、骨の髄まで下劣と言われた逸話があったな。
鹿鳴館で評判の美少女が亡くなった。訃報を聞いた伊藤公は、泣き叫んで、「やりたかった!」とおんおん泣いている話があったな。
多く相手にしたのはプロの芸者さんで・・・ホウキで掃くほどいて、あだ名がホウキだったとか。
日本初のカー〇ッ〇スをやったとも言われている。カーって、馬車の中だ。
でも、大丈夫だろう。多分、きっと。
☆☆☆王宮
「ガリバ、勉強を一緒にやろう!」
「殿下、勉強を皆でやるのは、出来ない子の常套手段かと」
「まあ、いいじゃない。それぞれ、足りない所をやるのよ。但し、分からない所を教えてはいけないわ。調べ方を教えてあげるわ。殿下は自信を持って、これでも一般試験で入学できたのだから」
「うむ!」
少しずつ殿下は変わっていくことになる。
馬鹿だから恐れずに人の心の垣根を越える能力を持っていた。だから、男爵令嬢とも本気で恋愛をしたのだ。
>天才と言うものは人よりも少し集中力が高く、類推適応能力が高いのだ。
作中の表現は私見です。
プロスポーツ選手と芸術家は同じ曲線を描いていました。一時の作業効率が平均よりも高いのです。
類推適応、これは知能検査の項目でありました。間違い探しみたいな試験があります。
これが高い方は、経験や過去の事例を当てはめて問題解決をする能力が高いのかな。
と判断しています。
最後までお読み頂き有難うございました。