第12話 崩壊は突然やってきたの~
それは、突然、やってきた。
☆スー商会
「まあ、ドレスが何の脈絡もなく並んでいる・・・」
「でも、探すのが面白いかも」
「いらっしゃいませー」
「あの、店員さん。この張り紙は?」
「土地小口債権募集と書いているわ。ここ、ドレス屋さんよね」
「あ、お嬢様が土地に関連する取引をしているみたいで、難しい話なので無視して結構ですよ」
「お嬢様って商会長よね。どこにいらっしゃるのかしら」
「なんかー、最近は学園にもいかないで、喫茶店を借り切って難しい商売をしていますよ」
「今更、土地なんてね」
「「ねー」」
☆☆☆王都商業地区喫茶店「ゴールデンスー」
オリビアは買い取った喫茶店を拠点にし、ここで土地取引に専念をしていた。
「では、お集まりの皆様・・・あら、少ないわね。本日の目玉、王都商業地区4の辻の3番地の土地とその上物、三階建て商館の売買を行います。希望される方は?」
「「「「シーーーーーン」」」
こんな時もあるわ。
「・・・・次、王都北門地区の貯水池通りの空き地を希望の方は?」
「「「シーーーーーーン」」」
・・・・
「はあ、はあ、はあ、皆様!真面目に参加して下さいませ!」
「ワシら、いつも酒を飲みに来ている冷やかしだ。酒は無料だからな」
「ほら、いつも、手をあげている旦那衆は誰もきていないよ」
そんな。馬鹿な。何がおきた?王国が規制している?そんな話は大公家からもきていないわ!
バブルの崩壊は突然やってきた。
この日を、『暗黒のオリビアの日』と呼ぶ者もいる。
「はあ、はあ、はあ、負債はどれだけあるのよ」
「それが、分かりません」
「今月必要な支払いは?」
「金貨500枚ですね」
今、金庫には・・・
「金貨821枚しかないじゃない?!給料を払ったらあっという間だわ」
「お嬢様ー、織物ギルドの支払いもよろしくお願いしまーす」
「そうだわ。領地に早馬を出して至急資金援助をしてもらうわ」
☆☆☆領地
「緊急のお手紙です!」
「はい、どうも・・・と、オリビアからか」
受け取ったのは財産管理人補佐の父だ。
初めの三行を読むと破いた。
ビリビリビリ~~
「やっぱりな。ここは何もしない無能の方が良かった」
「フランツさん。手紙の集荷終わりましたか?管理人に届けて下さい」
「どうも」
一方、メアリーは・・・・
もっと、お馬鹿になろう。
そして、幻滅をしてもらおう。
と、奮闘していた。
☆☆☆王都第18修道院
☆メアリー集会
信者の二文字を合体させれば『儲』になる。
金は吐き出した。
次は信者を吐き出そう。
「メアリーは、お遊戯をするの~、皆に見てもらいたくて、練習をしたの~」
ドン!ドンドンドン!
♩魔族がすくう世の中を~♩
私は、扇を広げて、ヒラヒラ踊る。
女神教の進軍歌だ。
庶民でも歌えるのは、単調な軍歌ぐらいしかなかった。
メアリー合唱団が知らない内に結成されていた。
まるで、昭和のサラリーマンの宴会芸だ。
これで、引くだろう。
♩進め。我ら、女神の下僕~♩
パチパチパチパチ!
「メアリー様!」
「メアリー様、叱って!」
「女神様の御使者だ!」
何故、感動する・・・・何だ、この熱狂は・・・・
そして、更に、信者達がおかしくなった。
「「「「メアリー様!メアリー様!メアリー様!」」」
「何で、メアリーのお絵かきが金貨10枚で売れるの~!」
「はい、信徒が落札をしました。毎日、絵にお祈りを捧げています。小生は進行役なので参加できませんでした。小生なら金貨100枚出します!」
「高値販売は禁止なの~!祈るななの~~!」
教会らしくチャリティーを行った。私は手持ちの財産はないから絵を出したのに、
いや、チャリティーで集まったお金は全額孤児院や救貧院や負傷兵に渡すけどさ。
メアリーちゃんが100キロ走っていないのに、この金額が集まるなんてヤバくないか?お絵かきだぞ。
ニケちゃんを描いたのに・・・
「義援金に手をつけたらぬっころなの~!」
「「「はい!」」」
「一度でもそんなことをしたら、信用なくなるの~!」
「「「はい!」」」
「ヨシなの~!」
土地の価格が下落して、ようやく、金利を下げる政策が始まったと思ったら、これか。余剰資金が変な方向に流れやがった。
それから、王宮から使者がやってきた。
「徴用した資金を返還する。証書を確認されたし。金貨は王宮の金庫で保管されている」
あ、一時預かりだったな。
帳簿上、金貨はかなり少なくなっている。
いいぞ。
10分の1か。大金貨1000枚か。後は、どうやって減らそう。
と思ったら、机に書類を山のように積まれた。
ドッサリ!
「何なの~!」
「不動産の権利書です。今回の土地騒動で、かなりの破産者が出た。それで接収をした土地だ。地価下落で値が下がったので多くの土地、建物が手に入った。貴殿の資金で高利貸しにかなりの高利で資金を提供したから、最終的な権利者は貴殿になった」
「多過ぎなの~、いらないの~」
「だめだ。王命である」
もう、いくらあるか分からない。賃料も毎月入ってくる。真の金持ちは自分の資産を知らないとあったが、これか?
うん?
「あの、スー商会から接収した不動産あるけど、なんでしゅか?」
「ああ、これは」
お姉様が?破産した?
そんな。優秀なお姉様が?
「今は細々と服を売っている。それからも返済している」
「そんなのやーなの。お姉様は輝かなければならないの~!」
「・・・貴殿、姉に追放されたのよな」
私は提案をした。お姉様が輝く方法を・・・
☆スー商会
スー商会は、元八百屋の店員の発案により。
ドレス、庶民の服を乱雑に並べる陳列方法が一部受けていた。
「いらっしゃいませー」
「まあ、何故、焼き芋を売っているの?」
「串焼きだと煙が出て服に匂いがつきますから~」
「らっしゃい」
「オスカー商会の者だ。商会長と面会を希望する」
「上にいますよー」
・・・・・
「何ですって、スー商会を、オスカー商会の傘下に?嫌ですわ」
「いいや、もう、債権を肩代わりした。貴女はオスカー商会の支配人補佐になる」
「私は大公子の婚約者ですわ」
「大公家も破産した。家門は断絶したのは分かっているな。学費も払えなくて退学したと聞いたぞ」
「そんな。これから、頑張って・・」
「おって、沙汰を言う。しかし、面白い商法だ。勉強になる。日銭が入るから、使用人の給金は辛うじて払えている。期待しているぞ」
「クッ」
使者が置いて行った債権買い取り通知を見た。
信じられないことが分かった。
「メアリー!メアリーが!」
許せない。欲しがり妹のくせに。
調べたら、出るわ。出るわ。今評判の夢見の聖女?『投資家トーマスのシスターのお友達から聞いた話シリーズ』『トーマスのここだけの話』の仕掛け人。
そうか、M資金の時から私を狙っていたのね。
「オリビアどうした」
「いいえ。大公家の皆様、金のなる木がありますわ!」
私は、大公家の皆様をつれて、第18修道院に行くことにした。
最後までお読み頂き有難うございました。