第10話 メアリーバブル
☆☆☆貴族学園平民特待生クラス
『ちょっと、貴方たち、とても良い話があるの。利回り20パーセントの債権を買わないかしら。金貨一枚を預ければ、一年後に銀貨2枚もらえるわ。金貨10枚なら、銀貨20枚よ。お小遣いに困らなくなるわ』
『それは、ちょっと』
『金貨一枚でも私達にとっては大金です』
『考えておいてね。でも、枠は早い者勝ちよ。お父様に相談しなさい』
・・・・・
「・・・とまたもや、令嬢から言われて困っています」
「そうです。平民の中からも出資する者が出ています」
「そーなの~!大変なの~!」
この令嬢はメアリーの姉、オリビアであるが、メアリーの知るところではない。
まあ、いいか。平民の特待生たちの相談だ。こいつらの相談に乗ったらお金を増やしてきやがった。
今度こそ、金を減らしてもらおう。
「なら、平民の学校を作るの~!お金を出すから、年齢不問、読み書き計算検定ギルドを作るの~!」
「ええ、それとこの相談は何の関係がありますか?」
「貴方たちには、一コマ授業につき。大銅貨2枚払うの~、すると、一日一コマ、10日で、銀貨2枚になるの~!どっちがいいの?」
「はい、やらせてもらいます」
ということで、トーマスに命じた。
「ええ、また、そんな儲からないことを・・・」
「なの~!貧民層の教育は女神教の使命なの~!文字が読めなければ経典を読めないの~!」
「ヒィ、分かりました!」
カンコンカンコン!
と第18修道院の敷地内で工事をしてもらった。
仏を作って魂を入れず。何て言葉がある。
「教科書も貴方たちが作るの~!はい、お金なの~!」
ドサッ
「有難うございます」
教科書を作らせた。簡単な大陸共通語に、日本のかけ算九九。
履修期間は半年、平日の夕方や休日に行う。大人から子供、履修したら、試験を受けて、合格した者には検定書を渡す。
日本で言えば、漢字検定か?
しかし、評判は良くない。
私も教壇に立つが、教室は閑散としている。
生徒は集まらない。何故だ?無料にして、こんな可愛いメアリーちゃんが教壇に立っているのに。
今日は酔っ払いが一人だ。
「ヒック、おい、何故、俺よりも年下の子供が教師やっているんだよ。貴族学園の姉ちゃんを出せ!」
「知らないの~!簀巻きにして放り出すの~!」
「「「はい、メアリー様!」」」
「おい、何故脱がす!おい!」
「川で目を覚ませなの~!」
あ、そうか、無料だから価値のないものとして文句を言い始めているのか?
学生からもそんな話がきいた。
そうか、授業料を取ろう。今までは試運転だったことにすればいいや。
「不評につき。サービス提供おしまいのお知らせなの~~!」
「「「エエーーー!」」
「次からは、有料会員募集のお知らせなの~!一コマ大銅貨一枚なの~!」
そしたら、やる気のある生徒が来た。
子供達だ。
「「「先生よろしくお願いします」」」
「はいなの~!」
お針子ギルド、冒険者ギルドからも提携のお話がきた。
「うちに見習いに来る前に、貴校の履修を条件にしたい。いかがか?」
「ええ、お針子学校でも読み書き計算をやりますが、やはり、入学前に終わらせたいですわ」
「分かったの~」
と言ったら、
まあ、ぎょうさんやってくる。
皆、12才前の子供達だ。この国では12才から見習いとして働くことが出来るとの法令だ。
各ギルドは見習い専門の学校を作っている。また、平民学校もある。
中間平民層も来る。
「平民学校入学前に、ここでならいたい」
「分かったの~」
とやっていたら、
またもや。想定外な事がおきた。
ドサッ!
「何なの~、また、お金が増えているの~!」
「授業料と本の印税でございます」
「何で、本の印税がいっぱい入ってくるの~!お安くと言ったの~!」
ペシペシ!
「ペシペシ有難うございます。書店ギルドの規則に本は最低二割の利益を入れて価格を設定しなければならないと決まっております!」
「何故なの~!」
「はい、他修道院からも問い合わせがきております。つまり、買いたいとのことです」
アカン、アカン、もう、ダメだ。
しばらくは、お遊戯会と、懺悔業務に専念しようとふてくされた。
一方、王国では、この土地バブルが何なのか正体が分からなかった。
☆☆☆王宮謁見の間
「今まで、景気が良い悪いがありましたが、ここまでの記録はありません」
「商業都市連合で似たような事例がないか探しておりますが競争相手です。調査は難航しています」
「そうか・・」
「大公家、大公子殿下とその婚約者の権勢は留まることアクアドラゴンが天に昇るがごとしと、恐れながら、学園でも一大勢力を築いております。殿下とエリザベス様は・・・劣勢です」
「大公子とオリビア様を、次の王と王妃に相応しいと噂が流れております」
「殿下は経済には疎いです。側近の商会長の子息オスカー殿も、今までの事態は知らなくて防衛一辺倒です」
「フム」
「陛下・・・」
・・・あの幼女のところに行こう。
「うむ・・・クロイツよ、来い。お忍び用の服を着ろ。父と一緒に下町の修道院に行くぞ」
「はい、陛下」
「ダメだ。お忍びだ。陛下は無しだ」
「はい、父上!」
クロイツ、第2王子、12才、メアリーの2才年上である。
本が好きな温厚な性格だ。
メアリーとのファーストコンタクトは、少しもロマンチックではなかった。
☆☆☆第18修道院、第一五回メアリーお遊戯会
「欲し~の!土地が欲し~の!もっと、もっと、儲けたいの~!」
「ああ、我がお嬢様よ。まるで、ゴブリンのように足ることを知らず。身の破滅を招きましょうぞ」
「ウワ~ン、ウワ~ン」
メアリー劇団、当初、素人の集団であったが、演技力が上がっている。
「バーンって、バーンってはじけたの~!まるで泡のように、ウワ~ン!誰も買ってくれないの~!地価が下がったの~!」
「ああ、欲張りは身を滅ぼす。欲しがりお嬢様は、無一文に、いえ、借金でマイナスになりましたーーー」
パチパチパチパチ!
「父上、あの子がメアリー嬢ですか?」(ポッ)
「・・・・ああ、そうだ。多分」
ポッと顔を赤らめる第二王子であった。
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