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廊下に丸まってニャーニャーニャー

作者: 一色 良薬

 築45年ボロアパートの一室。

 ワンルームと洗濯機の間を繋ぐ廊下で響いている子猫の鳴き声に、タケシは頭を抱えながらため息をついた。

「またやっちまったよ」

 これ以上増やすつもりはなかったし、細心の注意をはらっていたはずなのに。

 いや責めるべきなのは生まれてしまった子猫の存在ではない。何事にも面倒臭がりで適当な自分が、招いたしまった悲劇だ。

(でもだったらもっとちゃんと説明してくれたっていいじゃねぇか)

 入居する前に管理会社と大家が「ここはちょっと奇妙なことが起こりやすいんで」と言葉を濁したのを思い出す。

 大学から通うための一人暮らしの家を安く抑えたいと、破格の値段で食いついた物件だ。

 どうせいわく付きの事故物件だろうと思っていたのだが──まさかの“猫”が湧いて現れる一室だったとは。

 既にタケシの借りた部屋には六匹の黒猫が住みついている。どれもタケシの“物臭”な生活のせいで誕生してしまった、奇妙な猫たちではある。が、普通の猫のように腹は減るし喉も乾く。

 折角家賃の出費を抑えられたと思ったら、その分を猫の世話代に充てている始末だ。

 流石に引き取ってもらわないと生活が回らなくなると思い、ネットで譲渡の応募をかけてみるも不発。

 どうやら説明書きからして“イタズラ”だと思われているらしい。しかし猫が発生した理由をこれ以上になんて説明したらいいのか。タケシには検討もつかなかった。

(とりあえず廊下で生まれた子猫の面倒を見ねぇと)

 例によってまた二匹仲良くひっついているのだろう。

 何度も自分の不注意で誕生させてしまったと納得させようとするが、どうしても不可解で理不尽な現象にタケシは叫びたい気持ちがあった。

「みゃあみゃあ」

「やっぱ二匹か」

 覗いた廊下の先にいた猫の存在に肩を落とす。丸まったままタケシに向かって鳴く子猫へそっと近づき、臭い物をつまむように首根っこを掴んだ。

「脱ぎっぱなしの靴下が子猫になるなんてどうかしてるよな」

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