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2諦め

 たしかに、姉妹どちらと結婚しても、侯爵家は伯爵家の援助を変わらず受けられる。ただしそれは「オフィーリアと婚約する」という契約が不履行であった時に、伯爵側が受け入れればの話だ。

 父である伯爵ならどうするだろうか。

 

 ――怒りそう。


 娘2人を溺愛する父が爽やかに同意する姿は想像できなかった。


「お父様がお許しにならないかと……」

「そうだな。だから君にお願いしたい」


 嫌な予感というのは、当たってほしくない時ほど当たるものである。


「お願い……」

「伯爵に、怒らないでほしいと、許してほしいと君から言ってくれ」


 笑ってアドランは言った。

 

 ――いや、それ当人に頼む人普通いませんよ。


 ここまで阿呆な人だったろうか。恋は人を愚者に変えるらしい。恐ろしい。


「妹のためなら、そのくらいできるだろう?」


 アドランはそう言う。

 姉妹の仲が良いとどうして確信を持って言えるのか、甚だ疑問である。すくなくとも姉妹で仲が悪い貴族というのは知人に数人はいる。

 仲が異様にいいか、異様に悪いかのどちらかだ。

 オフィーリアとアイリーンもその一方に当てはまる。どちらに当てはまったところで、こうなってしまうと大概は良くない方向に進むものだとは思われるが。


 ――アイリーンのため、か……。


 アイリーンのためならできるだろう? その言葉、実はというと昔から耳がタコになるほど聞かされてきた。もう言われなくてもわかっていると言いたくなるほどには。

 今回のこともそうだ。

 アイリーンのためなら、オフィーリアは身をひく。

 それがオフィーリアであり、姉妹の形だからだ。

 今更、それにどうこう文句を言うつもりは毛頭ない。とっくに諦めていた。


 オフィーリアは嬉しそうなアドランを見て一抹の不安を感じていた。


 アイリーンは悪戯好きである。

 今回のことも悪戯程度に思っているかもしれない。アドランはそれがわかっているのだろうか。

 悪戯で姉のものを奪ってしまうアイリーンもアイリーンだが、たかが悪戯でオフィーリアを傷つける結論を出してしまうアドランもアドランである。


 最後に叩いてやろうか。そんな気持ちが起きたが、オフィーリアはそれを押さえつけた。

 

 ――まぁいいか。なるようになるわ。どうせアドラン様のこと好きじゃないし。


 何かと悩むのは向いてないのだ。

 オフィーリアは早々に説得するのをやめて、婚約破棄に同意した。

 投げやりな感情だった。




 


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