【まだ見ぬクズどもシリーズ】ひゃっは〜!給料日だぜぇっ!!
給料日って!!ウッキウキ!!
澄んだ真冬の青空の下、太陽の日差しが暖かな今日。
家から歩いて5分のスーパーでありったけ酒を買い込んで、酒缶でたらふくになった袋を手に下げたまま坂下の温泉へ向かう途中、その中の一つを袋から取り出し、プルトップを起こす。
カシュッと景気のいい音に気分が一層高揚する。
もう50になる俺はそうしていつものように真っ昼間からビールを飲みながら、その坂道を歩いて下っていた。
「くぅ〜!! たまんねぇわぁ!! ははっ!!」
この暮らしを始めて10年、流石に腹も出てきたが、平日の昼間から酒を飲みながら、急ぎ足ですれ違うスーツを着た暗い顔のくたくたリーマンを拝むのがまじで最高でやめられねぇ!!
「普通のやつなら、朝早くから辛気臭い顔をしてスマホとにらめっこしながら電車に揺られ、今頃は会社で貧乏くせぇシケた弁当をつまらねぇ仲間と一緒に食ってる頃だろなぁ?」
そう、今日は給料日。
つっても俺は一切働いてねぇ。
鬱病と偽って生活保護を不正受給してるんだ。
「へへへ。」
おっと、文句を言われる筋合いはねぇぞ。
これだってテクニックがいるだぜ?
要領が良くなきゃできねぇのさ。
それに言っとくが、人生ってのはやったもん勝ち。
くだらねぇプライドなんか捨て去って、なりふり構わず生きてみりゃイージーだ。
リスクを負うか負わないか、掛けるか掛けないか、ただのそれだけだからな。
そのリスクに見合う対価を俺は手にしてるだけだ。
文句があんならお前もやればいい、ただそんだけのことよ。
ま、そんな度胸もねぇお前らには一生縁のない生活だろうよ?
せいぜい真面目に頑張んな!!
ところで……
「ガルルゥ……」
「ちっ……」
犬の散歩してる暇なクソ老害がさっきからジロジロ見てきやがる。バカ面のチワワが俺を見た途端に威嚇してきやがって、殊更ムカつくぜ!!
「みてんじゃねぇこのクズ!!」
俺が怒号と共に飲みかけの缶を投げつけると、ビビったクソジジイが慌てて早足に逃げていった。
俺はそのカサカサ老害ミイラの後姿にツバを吐いた。
「ぺっ!! たくっ!!
ケンカ買う度胸もねぇなら端から睨んでくんなハゲがっ!!」
はースッキリしたっ。
「さてと……。」
このあとは坂下の温泉で、人の少ないこの時間からまずはサウナに入って、その後源泉掛け流しの露天風呂で富士山を眺めながらのんびり寛ぐとすっかなっ。
週に4回はそうして温泉に入っているからか、肌もつるつる、身体も超健康だ。
ちなみに俺はパチンコはやらねぇ、あれはモノホンのバカでクズなゴミ野郎がやる遊びだからだ。
そんな無駄金があるなら俺は酒を飲んで家系ラーメン食って温泉に入る。
だが普段料理は当然自分でする、スーパーに買い出しに行く時はタマゴ一個のコスパにまで拘って、出来るだけ早朝と閉店間近の割引商品しか買わねぇ。
そうしてレジに並んでると、何も考えねぇで生きてるやつはカゴの中身を見りゃすぐわかる。
無駄にちいせぇパックジュースばっか買う主婦とかな、旦那が可哀想だぜほんとによ。
まぁそんな生活のお陰で冷蔵庫の中身だけで美味くて日持ちするオカズのレパートリーが豊富になった。
もう女もいらねぇ、あいつ等は荷物になるだけだからな。
「へへぇ!! 俺の人生!! まじ悠々自適ってか!!」
この時代は俺みたいな無趣味でインドアの独り身には最高だぜ。
ネッチョリフリックスもあるし、ヘックスボックスのゲーパスであれもこれもゲームは年中やり放題。
もう温泉とラーメン以外にわざわざ外に出る必要がねぇってわけよ。
日がな一日…いや毎日、寝て食ってゴロゴロして温泉入って酒のんで家系ラーメン食って。
それで金が貰えるなんて!!
「くぅ〜!!」
酒がドチャクソ最高にっ!
「ウメェ!!」
そうして缶ビールをグビッと景気よく飲みながら、陽気に坂道を下っていた時だった。
「うっ!! あっ!!」
ガン!!
ガラガラガシャガシャガシャガシャ!!!
突然石に躓きすっ転んだ俺は、大量の酒の缶が入ったビニールを思いっきり坂道にぶち撒けた。
「うっ! やっ! やべぇ!!」
ゴロゴロゴロゴロ!!!
まずい! この先は国道のデカい交差点だ!!
もしバイクがあの缶を踏んですっ転びでもしたら!!!
ブン!! ブーーーン!!!
「は!!」
バイクだーーーー!!!
「あ! おい! 危ねえぞーーーー!!!」
「ぐわぁぁああああああああ!!」
ガシャーーーーーーーンッッッ!!
最悪の、事態……。
一台のバイクが国道の交差点を勢いよく横切る瞬間、坂道を転がって行ったビールの缶を踏んで盛大に横転。
ライダーは歩道に投げ出され、うつ伏せになったまま動かない。
バイクは勢いをそのままに横滑りしながら反対車線へ飛び出した……
プーーー!!
ギョアァアアア!!
クラクションと同時に咄嗟のブレーキでタイヤがスリップする激しい音。
「は……は……。」
暴走し横滑りした無人のバイク。
それを避けようとしたワゴン車がコントロールを失い、80年代の峠の走り屋の如く横滑りしながら対向車にケツから激しくぶつかる。
ガーン!!
ドーーン!!
ガシャーーーン!!
プーーーーーー!!!
ガーーーーン!!!
ズガーーーーーン!!!
「……。」
そしてその波紋は広がり続け、次から次へと止まりきれなかった大型トラックや、主に2型のプリウスが交差点に鉄クズの山を築いた。
「事故だーー!! 事故だ事故ーーーー!!」
人が……。
「は…は…は…は……。」
集まってきた……。
「キャーーー!」
「大変だーーー! 救急車ーーー!! 救急車ーーー!!」
「誰か! 警察! 警察呼べーー!!」
「おい見ろ! ビールの缶だ! 一体だれがこんなイタズラを!!」
俺は膝をついたまま、眼前に広がる地獄絵図を見て呟いた。
「や…や…やべぇ……。
俺の人生…やべぇ……。」
なんか、書きたくなった。




