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あれから八年、季節は夏。
夏は嫌いだ。
暑いのが子供の時から苦手というのもあるが、あの日君と一緒に行けなかった弱々しい自分を思い出してしまうから。
まだ14歳だった自分には出来ることなんて無くて、せめて君の側に居たいと一緒に戦いたいとみっともなく騒いだ所でまわりの大人たちはもちろん君にも止められてしまった。
そして僕はそれを受け入れるしかできなかった、僕は物語の勇者ではなく、かと言って勇者と共に戦えるような戦士でもなかった。
僕は君の背中を見送るだけのただの子供だった。
あの日以来、弱かった自分が許せなくて僕は村の戦士団に入団し必死に鍛練している。
身体は見違えるように大きくなり、対モンスター様の2メートル近いバスターソードを背負っているなんて自分でも想像してなかった、もしかしたら今の僕を見ても君は僕に気づいてくれないかもしれない。
それくらい変わったと自分では思う。
現実は変わってはくれないみたいだけど。
雨風さえ凌げればいいとばかりの戦士団の詰所と言う名の粗末な家の一室、これが今の僕の部屋。まー、子供の頃の教会暮らしの時と比べたら個室なだけマシだ。ボロい学生寮みたいな感じだと思う。
「おーい!ユウヤいるかー?」
「…そんなでかい声出さなくても軽くノックでもしてくれればすぐに出るよ」
「へっ!ユウヤが俺のノックは扉が壊れそうだからするなって言ったんだろ!」
「じゃぁ次はそのでかい声で呼ぶのを止めろ」
まったく、騒々しい。このデリカシーを母親の腹の中に忘れてきたような男は一応戦士団のまとめ役で本来なら少しは畏まった態度で接するべき相手かもしれないが、粗野で大雑把細かいことは気にもかけない男で大なり小なりトラブルを起こし、その尻拭いをさせられたりと迷惑かけられているので自然とそういった態度を取らなくなった。
「…でゲイン団長殿、今度はいったい何をしでかしたんだ?」
「おいおい、いきなり心外だな!今回は別に俺のせいじゃねえよ。
まぁ厄介事と言えば厄介事だけどよ!」
案の定厄介事らしい。とは言え焦った様子は見られないし濃霧が発生したとか大型モンスターが出たなんて非常事態ではなさそうだ。
「今日は非番なんだ、出来れば自分でなんとかしてほしいね」
「そう言うな、お前も無関係ってわけじゃない」
そう言われても思い当たるような事はない。
どうせしょうもない事だろう。僕はため息を溢したくなるのをグッと押さえて…いや、盛大な溢しながら先を促した。
「異世界人が現れた」