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第八話 裸エプロン

 今日は学園創立記念日で休みになっている。そして花との約束の日でもある。

 

俺は花が借りているアパートの前に立っていた。時間はお昼前。天気は梅雨明けの夏日ということもあり蒸し暑い。昼食をご馳走になったあとで一緒に勉強することになっている。


 部屋の場所は前もって聞いている。姉妹以外の女の子の部屋に入るのなんて初めての俺は緊張してなかなか動けずにいた。約束の時間までもう間もなく。遅れることだけは絶対あり得ないが足が動かない。男と女が密室で二人きりなんてムフフな展開しか予想できない俺だが実際はヘタレだ。誰か一緒に来てくれたらよかった。そんな動けずにいるとスマホの着信音がなる。花からだった。


『こんにちは。遼さんうちの場所わかりましたか?

 よかったら近くまでお迎えに行きましょうか?』


 まだ時間前だがこのメッセージからするに花は待っている。近くまで来ているから大丈夫と返信。


 あまり待たせるのも悪いと思い、俺は足取り重く動き出し花の部屋の前に立つ。一度深呼吸、もう一度深呼吸、さらにもう一度深呼吸。インターホンを押す。すぐに扉が開く。


「こんにちは遼さん。お待ちしておりました。中へどうぞ」


「待たせてゴメン……ねぇ!? ……え? えぇ!?」


 部屋から出てきた花。だがこの格好は……裸エプロンではないか! 旦那の仕事帰りを待つ新妻にやってほしいこと個人的ナンバーワンの裸エプロン! 『食事にしますか?お風呂にしますか?それとも……』が一番似合う最高で至高のお姿!


 目を見開き口をパクパクさせながら愕然とする俺。そんな俺を見て花は不思議そうな顔をする。


「遼さんどうかしましたか? ささっ、どうぞお入りください」


 と体を半身にし案内する花。そこで気が付いた。花はタンクトップにショートパンツの上からエプロンを着ている。エプロンが大きくてそれらが見えなかっただけなのだ。


 うん、さすがに裸エプロンはないよね。俺達まだ学生だし。いや、学生じゃなくてもないか。だが花のタンクトップ姿もなかなかそそられるだろう。そのエプロンを取ったあとが楽しみだ。


 落ち着きを取り戻した俺は部屋に案内されるのであった。


 玄関から入ると台所があり、その先が六畳ほどの部屋となっていた。花の部屋は必要なものしか置いてなくかなりシンプルだった。藍の部屋がそうだが女の子の部屋ってもっとキラキラしているものだと思っていた。しかし部屋はいつもの花のいい匂いで満たされていた。なんか幸せな気持ちになる。物が少ないのは引っ越しの時服以外の荷物は実家に置いてきたからだそうだ。


「お茶を出しますので、そこで待っててください」


 とテーブルへ案内される。折りたたみ式の小さなテーブルだ。床に腰を下ろすと花がお茶を持ってきてくれた。


「ありがとう。今日は暑いね」


「そうですね。もう夏ですし。私も部屋では薄着になっちゃいます。すいません、お見苦しい姿で」


「この季節はしかたないよ。むしろありがとうございます!」


 花の格好は胸がかなり強調されている。エプロンを着ているがタンクトップ布一枚の下にはあの豊満なおっぱいがあるのかと考えてた俺はついお礼を口にしていた。


 なんでお礼を言われたかわからないという顔の花。この子天然なのか?無防備すぎるにもほどがある。


「もう少しでお料理をお持ちしますので、すいませんがもう少し待っててもらえますか?」


 そう言って台所へ向かう花。鼻歌を歌いながら台所に立つ姿が似合っている。


 花は間違いなくいいお嫁さんになる。部屋はきれいに片付いているし、料理もでき、さらによく気が回る。完全完璧パーフェクト。花がお嫁さんだと旦那はすごく気が楽になるだろう。(ヤンデレ気質を除く。)


 ―――――――――――――――――――――


「お待たせしました。何にするか迷ったのでオムライスを作ってみました。召し上がってください!」


 オムライス。女の子に作ってほしい手料理の上位ランカーだ。こいつにケチャップでハートを描かれる女の子のかわいさが際立つ。しかし出されたオムライスはすでにケチャップがよく見るあの波みたいな曲線が描かれていた。少し残念。


「では、いただきます」


 まずは真ん中から中を除く。抵抗なくスプーンが入り中が見える。


「チキンライスもちゃんと作ったんだ」


 オムライスを作るときめんどくさがる人はご飯にケチャップだけかけて炒めるという邪道を犯す。しかし花は具材を小さくしたチキンライスから作っていた。


 スプーンで一口分すくって口に入れる。卵のふわふわ感、チキンライスのケチャップとガーリックバターの風味が一つとなり口の中に幸せが広がる。うん、うまい。お店で出してもいいレベルじゃないか。


「花、おいしいよ。お金取れるレベルだよ」


 素直に褒めると花は笑顔になる。あの反則スマイルだ。これだけでもうお腹いっぱい。


「ありがとうございます! 嬉しいです! では私もいただきますね」


 俺の感想を待ってた花はスプーンを手に取りオムライスの端から食べる。自分でも満足なのかとても幸せそうな顔をしている。デートのときの食事もそうだったが、花はホントに幸せそうに料理を食べる。きっと食べることが好きなのだろう。


「この前もそうだったけど花は幸せそうに食べるよね」


 思ったことが口に出てしまった。女の子にこの質問はアウトだったか?


「作るのも好きですが、やっぱりおいしい料理を食べるとなんだか心が温かくなります」


 幸せそうな顔で答える花。こういった一面も素直にかわいいと思う。俺はそんな幸せそうな顔を見ながらお皿に残っている分をおいしくいただいた。


 ―――――――――――――――――――――


 全て食べ終わった後、花が洗い物をすると言い出したが、作ってくれたお礼ということで俺が引き受けることにした。台所で食べ終わった食器を洗う俺はなんだか新婚生活みたいだなと考えてしまう。こんな新婚生活なら毎日が充実して楽しい人生を送れるだろうと思い、食器を片付け部屋に戻る。


 部屋に戻ると花はエプロンを脱いでいた。タンクトップ姿だ。胸が強調される。入学時より成長していないか?なんだかムラムラしてきた。


「遼さんありがとうございます。少し休憩して勉強しましましょうか」


 この後は夕方まで勉強する予定だ。そんな無防備の格好の女の子を前に集中できるか不安だったが、期末テストも近い。しっかり勉強しなければと思い準備を始める。


 俺の得意科目は数学・理科(なかでも化学と物理)・英語、花は国語(なかでも古文と漢文)・社会科・英語なので、今日はお互いの苦手なところを教えあうこととなった。


 まずは古文からはじめることとした。俺は活用形が覚えられず「かりかりかり」と言いながらやっていたら花が笑った。


「活用形はリズムで覚えるといいですよ。遼さんがやっていたのは形容詞のク活用ですよね。リズムよく『く、く、し、き、けれ、かれ』、『から、かり、かり、かる、かれ、かれ』というように音で覚えると他の活用形も覚えられますよ」


 なるほど。音で覚えるのか。聞いているとなんだか呪文みたいだな。厨二心をくすぐられる。漢文は英語と同じ要領、アルファベットが漢字になっただけなのでできる。古文は活用形が覚えられずに苦労していたが呪文ならお手の物だ。


 花の助言を生かし俺は呪文を唱える。この呪文でなにが起こるかって?うまくいくば活用形が覚えられる。成績が上がる呪文だ。

 その後は花の指導の下、呪文を間違えることなく覚え俺は活用形をマスターした。


 ―――――――――――――――――――――


 古文の勉強を終え、休憩に入る。花がお茶を持ってくる。


「花の教え方のおかげで古文はなんとかなりそうだよ。それにしても教えかた上手だね」


「そんなことなんですよ。遼さんの頑張りの成果です」


 そう言って腰を下ろす花。先生の授業より全然理解できた。もしかしたら花は教員に向いているのかもしれない。将来は教員志望かな?


「花は将来の目標って決まっているの?」


「今のところは教育学部の大学に進学しようと考えています。昔から学校の先生に憧れているんですよ。人に教えることも結構好きですし」


 気になったので聞いてみたらやはり教員志望か。こんなかわいい先生だったら男子生徒のモチベーションはかなり上がるだろうな。花の授業なら俺は体調が悪かろうが絶対出席する。ふと姉さんが教育学部に通っていることを思い出す。


「そうなんだ。俺の姉さんも教育学部に通っているよ。たしか英語専攻だったよ。今年卒業だったと思う」


「ホントですか? 今度機会があればぜひお話を伺いたいです!」


 興奮気味に前のめりで反応する花。いい感じに谷間が見える。この角度ならもう少しで実も見えるんじゃないか? もう少し、もう少し!


「?? 遼さんどうかされましたか?」


 おっと、秘密の花園への入り口が閉ざされてしまう。熱くなりすぎたな。


「姉さんの都合がよければ聞いてみるね」


 俺は何もなかった風に返事をする。しかし今のは惜しかった。パンツと同じで簡単に見せてくれるものではないか。むしろパンツより難易度が高いんじゃないか?


「遼さんの将来の目標はどうされるのですか?」


 やっぱ聞かれますよね。実のところなにも考えていない。今が楽しければいいと思っていたが、そろそろ少しぐらい将来について考えないと。


「いや、まだやりたいことがわからないから決まってないんだ。とりあえず大学に進学しようとは考えているんだけど……」


 社会人になるまで時間はあるが、このままだと何がしたいかわからないまま社会人になりつまらない人生を歩みそうだ。


「高校生活もまだまだあります。一緒に考えましょう」


 優しく微笑み花。その微笑だけで俺は救われるよ。


 ―――――――――――――――――――――


 休憩後は数学に取り掛かる。ここからは俺の出番。ずっと俺のターン!!


 二人でテスト範囲の問題を解いていく。正直なところ俺は一年でやるべき数学の範囲は自分で勉強して終わらせている。数学はかなり強いので授業のスピードでは満足しなかったのだ。大学受験の前倒しの意味合いで受験参考書の問題を解いている。これにも飽きてきたので、二学期からは二年で学ぶ範囲をやろうと思っている。だが今日の俺はそれどころではなかった。


「遼さん、この問題なのですが……」


 花が問題につまずいて質問してくる。俺の目線は問題じゃなくおっぱいだ。机におっぱいが乗ってる!あの柔らかそうな物体に俺の目線は釘付け。問題なんか見ていない。


「遼さん?わかりそうですか?」


 はっとし花を見ると疑問を浮かべた顔をしている。問題に困っていると思われたなら好都合。問題を見る俺。これは図形の問題か。


「ここに補助線を引くと……こことここの角度がわかるから、そこまでわかればできそうかな」


「なるほど! ありがとうございます。遼さんはすごいですね」


 いえいえ、君のおっぱいのほうがすごいよ。俺の右手で弾力係数がわかるなら触ってみたいよ。


 俺が微笑みながらそんなことを考えているとは知らずに花が問題を解いていく。少しは真面目にやってみるか。どれどれ。どうやら花は図形の問題が苦手なのか。たしかにそんな柔らかそうなおっぱいならどんな形をとればいいか……じゃなくて。見たところ間違えてはいないが考えるのに時間がかかっている。どこに補助線をひいていいかあまりわかってないな。


「花、補助線を引く場所なんだが、頂点や中間点からどこかの辺に平行または垂直になるよう引くと見えてくることが多いよ」


 一概にそうとは言えないが、基本の問題は大体それでできる。応用問題なると辺を伸ばした先から補助線を引くこともあるが、今の範囲ではそれで大丈夫だと思う。


 アドバイスをすると花はいろんなところに線を引き出した。ごちゃごちゃしすぎだ。思ったことをもう一つアドバイスするか。


「花、与えられた問題でわかっている角度や長さは図形に書き込むんだ。そこから補助線を引くとわからなかったところが求まるからまた書き込む。そんな感じでやってみて」


 花の問題集の図形を見るとあまり書き込みがない。この子は頭の中でやっているんだろうがそれだと早く解けない。試験には時間があるから早く答えを導くコツをつかまないとね。


 そこから要領を得たのか問題を解くスピードが速くなった。ここは大丈夫みたいだし他の問題も確認してみると答えは全部あっていた。あとはスピードを上げるだけだな。俺はまたおっぱい鑑賞に戻るのであった。


 ―――――――――――――――――――――


「今日はありがとう。食事ごちそうさま。また食べさせてね」


 夕方になったので帰宅の準備をする。花の料理はおいしかったからまた機会があれば作ってほしい。


「いえ、こちらこそ勉強を教えてくださりありがとうございます」


「それはお互い様だよ。俺はいいもの見れたから満足だし」


 花が微笑む。料理のことと思っているのかな?そのほうが都合がいい。


「じゃあ帰るね。また明日学園で」


 そう言って花の部屋から出る。アパートから離れようとすると花に呼び止められた。忘れ物でもあったかな?


「夕飯の買出しに行くので途中までご一緒してもよろしいですか?」


 そういうことか。それならと一緒に並んで歩き出す。花はタンクトップのままで出てきていた。この時間は冷える。そう思った俺は羽織っていた上着を花に掛けてあげる。


「この時間から寒くなるから、その格好だと風邪引くよ。返すのは今度でいいからさ」


「ありがとうございます。ちゃんと洗って返しますね」


 別にそのまま返してくれてもいいと言ったが花がそれはダメだと頑なになったので洗ってもらうことにした。俺の服に花のいい匂いがついたらいいな。


 二人で歩きながら花がダンスの話を聞いてくる。ヘッドスピンができるようになったと言ったら、ヘッドスピンのギネス記録保持者は日本人だということを教えてくれた。その他にもヘッドスピンのポーズの説明や繋ぎ技として使えるいろんなことを楽しそうに話してくれた。ホントにダンスが好きなんだね。


「じゃあ俺はこっちだから。また明日ね。帰り気をつけてね」


「はい! ホントに今日はありがとうございました!また明日」


 別れ道になったので、解散する。買出し手伝おうか聞いたのだが今日はそんなに買う物がないから大丈夫ということだった。


 にしても花の料理はうまかった。お嬢様かと思ったから料理は苦手だと勝手に思い込んでいた。毎日あの手料理が食べられたら幸せだよな。やっぱりお嫁さんにするならは料理がうまい子に限るね。そんなことを考えながら帰宅するのであった。


 帰宅途中、姉さんからメッセージがあった。


『ハーゲンダッツのバニラとストロベリー』


 それだけのメッセージ。人遣い荒いなと思ったが今度送迎してくれるしその前金ってことにしておこう。

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