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第六話 女の子と映画を見てみる (姉遭遇)

 花とデートした翌日の日曜日、俺は隣町の映画館に来ていた。今日の天気は曇り、雨は降らない予報、時間は午後一時前。中田さんと待ち合わせしたのが一時なのでそろそろ来るかなと待っていたらスマホの着信音が鳴った。中田さんからだ。


『もう着いてる? ごめん! 少しトラブルがあって三十分遅れる!

 ごめんねぇ~。近くのカフェで待っててくれるかな?』


 トラブルか。怪我とかしてなければいいけど。俺は了解と返信しカフェに入る。カフェ独特のいい匂いだ。俺はアイスコーヒーを注文し席に着く。


 そういえば中田さんなんの映画が見たいのかな? 聞いとけばよかった。そう思いスマホで上映中の映画を確認。上映中の映画は四つ。一,ハリウッドの人気シリーズの続編、二,人気少女漫画原作のラブストーリー、三,ホラー映画、四,小さい子に大人気の魔法少女。個人的にはハリウッドの続編が気になるが中田さんは女の子だしラブストーリーかな。いや、もしかしてあの子供っぽい見た目もあるし魔法少女って可能性も否定できない。ん~どっちだろうか。


 コーヒーを味わいつつ少し失礼になるかもしれないことを考えているとカフェの入り口が開いた。入ってきたのは中田さんだ。今日はノースリーブのピンクのワンピースだ。うん、かわいい。この子はワンピースがよく似合う。


「ごめーん。お待たせー」


 急いできたのか疲れた声だ。少し汗もかいている。


「そんなに急がなくても大丈夫だったのに。ここで少し休んでいこうか」


「うーんー。そーすーるー」


 と俺の席の向かいに座る。俺は店員さんを呼びお水を頼んだ。店員さんがお水を中田さんに渡し彼女は一気に飲み干す。こらこら、ゆっくり飲みなさい。


「ぷはーっ! 生き返るー!」


「なんか仕事終わりの一杯を飲んだおっさんみたいだな」


 二人で笑いながら向かい合う。この子の笑顔はホントに天使のようだ。


「そういえば中田さんはなんの映画が見たいの?」


 先ほど考えていたことを聞いてみる。まさかホントに魔法少女じゃないよな?


「あ~言ってなってなかったね。てかそろそろ桜って呼んでくれないかな?」


 ここでも下の名前か。まぁ昨日のこともあるし問題はない。


「わかったよ桜。俺も遼で頼むよ。篠崎なんて呼びにくいだろ」


「了解でありますよ! で、見たい映画なんだけど、ホラー映画なんだ。遼はホラー大丈夫な人?」


 予想外な答えがきました。ホラー映画が見たい女の子なんて滅多にいないんじゃないか?少なくともうちの姉妹はホラーはアウト。俺は好きなんだがリビングでホラー映画を見ていると姉さんか藍がチャンネルを変えてくる。仲がよくないけどそういったところは似てるのね。


「ホラー映画は好きだけど家では姉さんと妹のせいであまり見れないんだ」


「そうなんだ。なら大丈夫だね。私も回復したしそろそろ行きましょうかー!」


 そういってカフェを後にし映画館に向かうのだった。


 ―――――――――――――――――――――


「うぅ~ごめんね遼。私が遅くなったから待ち時間が長くなって……」


 桜が見たかったホラー映画はちょうど桜がカフェに着いた時間に上映が始まり、次の上映は二時間後になるそうだ。チケットは持っていたので、とりあえず次の上映の席は確保しておいた。


「見れなくなったわけじゃないから時間までどこかで待っていようか」


 この辺りはなんでもある。ショッピングモールやゲームセンター、カラオケ、ボーリング場等様々だ。さらに桜は地元民だ。俺が知らない穴場を知っているかもしれない。次の上映までの時間を潰すことはどうということではない。


「桜、どこか行きたいところあったりする?」


「う~ん。映画見た後カラオケに行きたかったんだけど、見終わる頃には夕方になっているし……。遼がよかったらでいいんだけどショッピングモール行かない? ちょっと服を見てみたいの」


 さすがは女の子、ウィンドウショッピングってことですか。女の子の買い物に付き合うのは慣れている。姉さんはそうでもないが藍の買い物は長い。遼兄ぃどっちがいい?とひたすら聞くくせに結局自分が気に入った服を買う。さらに荷物は俺が持つというセット付きだ。まぁかわいい服を着た妹を見れるから嫌いではないんだけどね。


「仰せのままに、お嬢様」


 執事のように右手を胸に当ててお辞儀する。昨日からこれが板についてきた気がするぞ。


「じゃあ早速行きましょうか」


 くるりと半回転周り桜が歩き出す。そういう仕草は子供らしくてとてもかわいい。俺も桜の後を歩きショッピングモールへと向かう。


 ―――――――――――――――――――――


「ねぇ遼? どっちの服が似合うかな?」


 あんたもその口ですかい! これ嫌いじゃないとは言ったが疲れるんだよ。適当に答えたら怒られるし、真剣に考えると想像する為に頭使うし。姉さんが特殊なだけで女の子ってみんなこうなのか?


 そして提示された二つを見比べる。一つはフリフリがいっぱい付いたワンピース、ゴスロリってやつか。もう一つは胸の辺りにリボンが付いた服、昨日花が着ているのに似たやつか。


 桜はワンピースが似合うと思う。しかしそれ以外の服を着ているのを見てみたい。やっぱり試着してもらったほうがわかりやすいな。


「桜、試着……」


 そこまでいいかけて気が付く。桜は今日もワンピースだ。そのスカートの下ってパンツですよね。リボンの付いた服を着たところ見せてと言えばパンツをさらした姿を見れるんじゃないか?いや、そこは試着中に気が付くか。子供ではあるまいし。いや、子供っぽいところがあるからもしかしたらいけんじゃね?いやでも待て待て、そのスカートの下がショートパンツって可能性もある。パンツも見れないじゃないか!?


「遼?もしかしてスカートの中が気になるの?」


 きっ気づかれた!?目線がそこに行き過ぎてたか!?


「なっ何を言っているんだ!?そんなことある訳ないだろ!」


「ふぅーん、エッチ」


 天使が堕ちました。小悪魔的な笑みを浮かべる桜。桜は天使の笑顔が似合ってるよ!でもその表情もありかも。いただきました!


「そんなに気になるなら見てみる?」


「いいんですか!?」


 小悪魔桜はそう告げる。まさに悪魔の囁き。そして反応の早い俺。どんだけ見たいんだよ。でも思春期の男の子だし仕方ないよね!


 桜はスカートを握る。こんなに堂々としてるって事はやっぱりショートパンツだよね。でももしかしたら桜は露出狂かもしれない。それって履いてない!? いや、天使のような桜に限ってそんなことはあり得ない!


 桜がスカートをどんどん上げていく。小悪魔的な笑みのままで。


 どっちだ!? いや、ショートパンツだろ!? まさか履いてない!? でも、いや、ん~もう! パンツ、パンツ! パンツこい!


 スカートが上がる。中身は……ショートパンツだった。


「あっはははは! ちゃんとショーパン着けてるよー。遼のエッチ♪」


 で、ですよねー。俺は膝をついて愕然とした。パンツへの道は遠いな。


「そんなにパンツ見たかったの?でもダメー。そういうのはちゃんとした関係になってからじゃないとね」


 小悪魔桜がニタニタと笑う。まあそうですよね。スカートの中は未知なる、いや聖なる空間なのだ!そう簡単に見れたらダメだよね。


「とりあえずどっちも試着してみるからちょっと待ってて」


 膝を付いたままの俺をそっちのけで桜は試着室に入っていった。試着室から出てくるまでには立ち直らなければ。


「ん? 遼? お前なんでここにいるんだ」


 顔を上げるとそこにはスタイルのいい女性が立っていた。俺の姉さんがそこにいた。


「ねっ姉さん!? 姉さんこそなんでここにいるんだよ!?」


「私? 服を買いに来たからに決まっているだろ?」


 ですよね。ここ洋服屋さんですし。女性服専門のお店ですし。でも姉さんここにあるような服も着るんだ。ちょっとかわいい系の服が多いような……


 俺の姉、篠崎初(しのざきうい)は現在大学四年生で顔は藍を大人にした感じで長い茶髪のスレンダーな人だ。妹の藍がかわいい系なら姉の初はきれい系だ。そんな姉さんがなんでこの店に?


「そんなことより、お前なんでここにいる? ここは女性服の店だぞ? ……まさかお前、そっちの趣味に目覚めたのか?」


 姉よ。弟をそんなジト目で見ないでくれるか?


「じゃーん! 遼どうかな? 似合うかな?」


 そんな姉弟の邂逅の中、桜が試着室から出てきた。ゴスロリの服を着て。うん、似合っている。桜はやはりワンピースだな。


「あれ? 初さんじゃないですか!」


「ん? 桜か。久しぶりだな」


 え?どういうこと?二人とも知り合い?


「おい、遼。なんで桜と一緒にいるんだ」


 これは説明しないといけないですよね。逃げたら家に帰った時にボコられちゃうもん。


 ―――――――――――――――――――――


 俺は桜と出会ったきっかけと一緒に映画を見にきていることを話した。



 姉さんは桜が中学の頃の家庭教師だったそうだ。そういえば家庭教師のバイトもやっていたな。


 この人は無駄にスペックが高い。大学も県外の有名大学を狙えたものの引越しがめんどくさいからという理由で地元の大学の教育学部に通っている。さらに、高校時代は陸上の走り高跳びで全国一位の成績を収めている。そんな陸上も今はやっていない。なんでもそろそろ遊びたいという理由らしい。全国の選手に対する冒涜だよね。見た目もかなりよくうちの学園の文化祭で行われるミスコンに三年連続で一位に輝いているにも関わらず彼氏がいないらしい。モテるようだが本人の好みとは違う人からモテるそうだ。という説明を桜にしたんだが全部知ってると言われた。頑張ったのに、なんか悲しい。


「遼と初さんってあまり似ていないですね」


「当然だ。私は昔からスタイルを維持しているが、こいつはデブだったからな」


「おい、姉さん!」


 そこには触れないでください。もうデブじゃないし! 痩せててからはモテてるようです!


「で、姉さんはなんでこの店にいるの?ここにある服は姉さんが普段着ているような服じゃないでしょ」


 姉さんがここにいる最初の疑問に戻る。姉さんはスタイルがよくきれい系だ。ここにあるかわいい服は姉さんのイメージとは違う気がする。


「あぁ、これは藍の服だ。あいつは私が選んだ服を買ってあげると喜ぶのだ」


「え?姉さんと藍って仲が悪そうに見えるけど……」


 家での二人を見るとなかなか会話をしない。藍は俺にべったりだし、姉さんは昔から自分からしゃべらない。俺が席を外してる最中も全然話をしなから仲が悪いと思っていたのだが。


「何を言っているのだ?あいつはいつも眠くなるまで私の部屋でおしゃべりをいているぞ」


 知らなかった。年が離れているからあまり話が合わなくて話さないとかそんなこと考えていたのだが、俺の見えないところでは仲がいいのか。なんかホっとした。


「そういうことだ。私はこの服を買って帰るが、お前達も気をつけて遊ぶのだぞ。深夜徘徊はダメだからな」


 そう言いながらレジへ向かう姉さん。ん?一つ藍には大きいサイズの服を買っていったな。気のせいか?


「初さん一つだけ自分のサイズの服買っていったね」


 気のせいではありませんでした。姉さんがあの服を着ているところが気になる。


 ―――――――――――――――――――――


 姉さんが帰った後、桜は元の服に着替えゴスロリの服を購入した。もちろん先ほどの感想はしっかり伝えてある。天使の笑顔でお礼を言われた。


 映画上映の時間が近づいてきたので、映画館に移動。ちょうど真ん中の席を取った。前過ぎると首が痛くなるし後ろだと遠い気がするんだよんね。少し時間があったので、俺は飲み物とポップコーンの買出しへ行く。俺が烏龍茶で桜がオレンジジュースだ。買出しから戻るり席に着くとちょうど暗くなってきた。


「始まるよ。わくわくするね」


 女の子とホラー映画を見るなんて夢にも思っていなかった。きっとかわいい悲鳴を上げて抱きついてくるんだろうと思い期待にしていた。


 しかしそんなことは起こらなかった。てかこのホラー映画全然怖くいぞ。内容はいいのだが、ホラーって要素が弱すぎる。桜も同じ事を思っているのか、横目に見てみると首をかしげることが何度かあった。


 映画が終わり明るくなってくる。俺達が映画館の外に出ると外は暗くなっていたので夕食を取ることにした。今日は某ファーストフード店だ。


「内容はよかったけど、全然怖くなかったね」


 やはり桜も俺と同じ事を思っていたようだ。内容はかなりよかった。しかし怖いホラー映画のようにいきなり出てきてびっくりするようなことがなく、出てくる瞬間がわかるほど単純だったのだ。むしろ驚かそうと思っている手前ですでに出てきているのであまり驚くことはなかった。


「なんだか期待外れ。今日はごめんね。なんだか私が遼のこと振り回す感じになって」


「別に構わないさ。むしろ俺は楽しかったよ」


 桜に負い目を感じさせないように優しく柔らかく言ってあげる。確かに映画は物足りない気がしたが、桜の買い物に付き合うのは楽しかった。途中で姉さんと遭遇してしまったが。かわいい姿を見れただけで満足だ。


「ありがとう遼。あぁーでも消化不良って感じ!」


 ポテトを食べながらじたばたする。やっぱり子供っぽいな。


 あっそうだ。とじたばたするのをやめ、スマホを確認する桜。どうしたんだ?


「あのね。今月の最終土曜日空いてるかな?」


 その日は部活もないし今のところ予定もいれていないので空いてると伝える。


「その日うちの両親が二人とも出張とお兄ちゃんが部活の合宿で家に私ひとりなの。その日にこの消化不良分を一緒に解消しないかな?」


 おうちにお誘いですと。しかも少女漫画でよく聞く『今日家に誰もいないの』がきました。女の子からのお誘いだ。断る理由ない。


「断る理由がないよ。次はちゃんと怖いホラー映画を見よう」


「約束だよ! 楽しみだな」


 そう言ってニコニコして足をブラブラさせる。そして最後のポテトを口にする。食べ終わった俺達は解散することになった。俺はバスで帰るのでバス停まで一緒に向かう。桜は歩きだ。


「私のうちは初さんがわかるから当日は初さんに送ってもらってね。私からも初さんに連絡しておく」


「わかった。今日はありがとう。楽しかったよ」


「こちらこそ楽しかったよ。ありがとう! 約束忘れないでね」


 そう告げて桜は手を振りながら帰っていく。


 次に会えるのは夏休み明けかと思っていたが案外早く会えるんだな。さて、俺厳選のホラー映画を決めておかないとな。そんなことを考えているうちにバスが到着。俺も帰宅する為にバスに乗り込んだ。


 家に帰り姉さんに約束の日の送迎を依頼すべく姉さんの部屋に行った。部屋を空けると先ほど買ったあろう服を着ている姉さんと藍がいた。意外とかわいい系の服も似合っているな。


 顔を赤くした姉さんを見るのも珍しいと思った矢先に無表情になる。その場に正座させられる俺。説教をこっぴどくされた後約束の日の件を聞くと、すでに桜から連絡をもらっていたみたいで了承してくれた。藍がすごい不機嫌そうな顔をしているが、今日は姉さんに任せよう。

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