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第五話 女の子とボーリングをしてみる (妹遭遇)

 土曜日、瀬戸内さんとのデート当日。俺は待ち合わせ場所である学園前のバス停にいる。約束の時間より少し早めに着いてしまった。天気は生憎の雨。この時期だから仕方がないとは思うが、やはり初デートなので晴れてほしかった。

 

 学園にはこれから部活であろう生徒がちらほら入っていく。ちなみにダンス部は休日の部活はない。部長の意向で、大会前以外の休日は友達と遊ぶなり勉強するなり各自自由にすることとなっている。プライベートも充実させて高校生活を楽しく過ごす為の気遣いだろう。


「お、遼君! こんなところでどうしのた?」


 学園を眺めていた俺に声を掛けてきたのは詩織ちゃんだった。制服ってことは部活だろう。


「詩織ちゃん。今日はこの前話した子とデートの日なんだ。詩織ちゃんは部活?」


「これから部活だよ。来週クラブハウスで隣町の学校と対バンがあるからその練習」


 詩織ちゃんも部活頑張っているようだ。音痴でも楽器はなんとか弾けているみたいだ。


「遼君、初デートだからって浮かれすぎてお持ち帰りはダメだよ」


「だから君は俺をなんだと思っているんだ。そんなことはしません。今日は楽しんでくるよ」


「そうかそうか。では楽しんできてらっしゃーい!」


 そう言って詩織ちゃんは学園へ向かっていく。詩織ちゃんが学園に入ったのと入れ替わりで瀬戸内さんがやってきた。


「お待たせしました。遅くなってすいません」


 瀬戸内さんの服装は水色で胸元にリボンがあるシャツにショートパンツだった。初めて見る私服だったが、やはりかわいい。生足もいいね。


「まだ、時間前だしそんなに待ってないから大丈夫だよ。ちょうどバスも来たし行こうか」


 いいタイミングでバスが到着。バスに乗り込み空いている座席に二人で座る。


 ―――――――――――――――――――――


 いつもより瀬戸内さんが近い……。


 二人掛け様の座席なので、瀬戸内さんとの距離が肩がぶつかるぐらい近い。学園では前と後ろの席というだけでも近いのに今日はそれを遥かに凌駕している!


 今日もいい匂いだな。香水付けているのかな? それともシャンプー?


「今日はどこに行くのですか?」


 匂いを堪能していると、瀬戸内さんから質問が投げかけられた。変な顔になっていなかったかな?


「この街の複合型アミューズメント施設に行くことにしたんだ。あそこだと雨が降っていても退屈することはないと思ったんだけど……」


 そこだとボーリングやカラオケだけでなく、ショッピングモールも併設されているので、女の子が好きなウィンドウショッピングやカフェなどもたくさんある。雨が降っても晴れても楽しめると考えそこに行く事にしたのだ。


「そうなんですね。そちらはまだ行った事がないので楽しみです」


 よかった。行き過ぎて飽き飽きとかだったらどうしようかと思った。瀬戸内さんがこの街に来たのはここ最近だしまだ知らないところもあると思うから大丈夫と高を括ってたんだ。行った事がないならきっと楽しんでくれるに違いない。心の中でガッツポーズ。


「そういえば篠崎さん。先ほどお話されていた女性の方はどなたですか?」


 ん?詩織ちゃんのことかな? 話しているとこ見てたんだ。


「あーそれは……」


 と答えようと瀬戸内さんの顔を見ると笑っている。でもなんだろう、目が怖い。彼女のこんな顔見るのは初めてだ。


「えーとね、あの子は俺の幼馴染の彼女で詩織ちゃんって言うんだ。いつも俺をいじってくるんだよね」


 ありのままを伝えるのだが、まだ目が笑っていない。


「へぇー、下の名前で呼び合っているんですね。そうなんですね」


「あのー瀬戸内さん?」


 目が怖い。顔は笑っているけど目が怖い。前ゲームでこんな顔見たことある。そうあれだ、ヤンデレの顔だこれ。俺この後刺されるの?


「私のことは下の名前で呼んでくれないんですね。……りょ遼さん」


 うん、この子間違いなくヤンデレの素質持っていますね。これは選択肢を間違えるとバッドエンドコースですね。下の名前で呼んであげればいいのかな。えーっと確か……


「えーっと……じゃあ、花?」


「うふふ、遼さん♪」


 あ、満足したみたい。今度は下の名前で呼んであげないとさっきみたいな顔するのかな?あれは怖かったからもう勘弁だ。中学の頃、『ヤンデレ娘は選択肢を間違えなければハッピーエンド!』とか言ってるやつがいたが、それはゲームの話で現実はそうもいかないんだろうよ。それに付き合っているわけでもないし大丈夫だきっと。


 ―――――――――――――――――――――


 バスが目的地に到着し、二人で降りる。雨は降っているが土曜日だけあってそこそこ人が多い。


 俺達はアミューズメント施設のフロントで受付をし、二人で案内板を見る。いろいろあって迷うな。俺だけでは決めきれない。


「さてと……花は何かやりたいことあるかな?」


「そうですね。こういうところに来るの初めてなので、数が多くて迷っちゃいます」


 花も同じく迷っているみたいだ。ここは空いているとこから行くか。今空いているところは……


「ボーリングが空いてるみたいだからそっちに行ってみるか」


「ボーリングですね。私やってみたかったんです! 行きましょう!」


 ボーリングやったことないのか。もしかしてホントにお嬢様か?ここは俺が手取り足取り教えないとね。密着してあの柔らかそうな部分があたって……うへへ。


「遼さんどうしたのですか?早く行きましょう」


 妄想にふけっていた俺の手を取り花が駆け出す。楽しそうでなによりだ。


 ボーリング場に着き、靴とボールを用意する。


 ちなみに俺はボーリングが得意だ。ハウスボールでアベレージ180ぐらいだ。中学の野球部では俺に勝てるやつはいなかった。


「花、そっちボールは重たいからこっちのがいいよ」


「ありがとうございます。うーん……このボールにします」


 花もボールを選びコースに向かう。重たいから持ってあげようか? と聞いてみたが、自分が使うものだから大丈夫と断られた。かっこいいとこ見せるつもりだったのに失敗だ。


 コースに到着し、靴を履き替え投げる準備をする。花は初めてなので俺が投げ方を見せる。


 一投目からストライクを取ってかっこいいとこ見せるぞと意気込みボールを投げる。投げられたボールはレーンの外側から真ん中の1番ピンに吸い込まれるように曲線を描き、ピンが弾ける。ストライクだ。


「遼さん、ストライクです! すごいです!」


 席に戻ると花が興奮気味にピョコピョコ跳ねながら叫んだ。すごい勢いで上下に揺れてますね。パイタッチしていいかな? 間違えたハイタッチしていいかな?


 次は花の番。アドバイスしてたほうがいいかな?


「次は花の番だよ。初めてだし投げるときに……」


 真っ直ぐ投げるコツを花に伝え、近くで見てあげる。


 一投目はガーターに落ちなくてすんだ。二投目は端のピンを狙いすぎたのかレーンの中盤でガーターに落ちてしまった。でも、いい感じに投げれている。


「うん、いい感じだよ。今の感じで次はストライク取ろう!」


「はい!頑張ります!」


 楽しそうでよかった。あまりデートを意識しすぎて気まずい雰囲気なったらどうしようと思っていたがそんな心配は無用だったみたいだ。


 その後も二人楽しい雰囲気で1ゲーム目が終わった。花は途中からうまくなり、何度かストライクと取っていた。運動苦手って言ってたけど成長スピード速いな。


「もう1ゲームやっていく?」


 感覚を覚えてもらって次来たときもうまくいくようにもう1ゲーム提案してみた。


「やりましょう! あの、遼さん。よかったら勝負しませんか?」


 花からの勝負のお誘い。うまくなったと自信を持ち大きくでたな。もちろん受けてたつ。いい勝負になるくらいのハンデは与えるけどね。


「受けてたとう。もちろんハンデはあげるよ」


「では、負けた人は勝った人のお願いを何でも聞くというのはどうでしょう?」


 これは俺に有利すぎないか?俺が勝ったらおっぱい触らせてなんてお願いもできるんだぞ。もちろんあの塊には触りたい。何でも聞くお願いとはこういう時に使わないとね。これはなんとしても勝たなければな。うへへぇ。


「それでいいよ。ハンデは100ピン差あげよう」


「うふふ。負けませんよ」


 少しはうまくなっていたけどそれぐらいのハンデなら俺は負けない。最初のゲームの結果は俺が190で花が70だった。これぐらいのハンデがちょうどいいだろう。


「今度は私から投げますね」


 そういって花は投げる準備をする。花の一投目はストライク。やはりうまくなっている。だが、俺も負けられない。次の俺の投球もストライクだった。


 ゲームは順調に進んでいき第8フレームまで来て俺は焦っていた。


 このままだとまずい。現在の差は80。そして花の投球はスペアを取った。俺がしくじるとここで勝ちが見えなくなる。先ほどのフレームではスペアを取るのに失敗したので、かなりピンチだ。落ち着け、落ち着け。


「遼さんは勝ったら何を私にお願いするのですか?」


 レーンから戻ってきた花がにこやかな顔で聞いてきた。


 そんなの言えるわけがない。おっぱい触らせてなんて公共の場所では言えることではない。


「ん~秘密か、な」


 花に答えてレーンに向かう。


 なんか焦ってきた。これ失敗する。ダメだ。失敗したら負ける。ヤバイヤバイヤバイ。とりあえず投げるぞ。ふぅー落ち着け。大丈夫、大丈夫。よし!行くぞ! あ、指が滑った!?


 ボールはガーターに吸い込まれた。これで俺の負けは確定したもんだ。続く二投目でスペアを取ることができず、俺はハンデをつけたとはいえ負けを確信した。


 ゲーム終了後片づけをする前に結果を確認。結果は俺が180で花が110だった。花の勝ちである。


「私の勝ちですね。楽しかったです」


 楽しめたなら何よりだ。では勝者の願いを聞くとするか。


「俺の負けだよ。なんなりとお申し付けください。お嬢様」


 俺は少し嫌味っぽく言ってみたが、花は笑顔だ。


「でしたら、今日のお礼として今度お食事をご馳走させてください」


「ん?それって俺がこの前お願いしたやつじゃないか?」


 部活の話になった時、花の手料理をご馳走してもらう約束をした。あれから約二ヶ月たったがまだそれは実現していない。俺が部活に明け暮れていたからという理由でだ。


「はい。ですので、今月末の学園創立記念日に私の家でご馳走になっていってください」


 創立記念日は学園が休みなのだ。まあその日ならまだ予定も入れてないし、学園が休みなので部活もない。断る理由がないな。


「そういうことなら、承りました。お嬢様」


 アニメで見る執事がやるに右手を胸にあててお辞儀をする。


「はい! 約束です♪」


 花は満足そうだ。時間はまだある。今日はとことん楽しませよう。


「よし、まだ時間はあるし行こう! 次はどこで遊ぼうか?」


 ―――――――――――――――――――――


 ボーリングの後はスポーツ施設で遊びんだ。いろんなスポーツができたので楽しく過ごせた。花が飛んだり跳ねたりすると大きなおっぱいが揺れるのでそ見蕩れてしまうことがかなりあった。いやー眼福眼福。


 いい汗を流し、お腹が空いてきたので夕食にする。ショッピングモール内にある庶民向けのイタリアンレストランに入りピザとパスタを食べる。庶民向けとはいえ結構おいしかった。料理を食べているときの花の顔はなんだか幸せに溢れていた。


 食事を食べ終わり、そろそろ帰るかとレストランから出てみると、


「あー遼兄ぃ! なんでここにいるの!?」


 妹がいた。こいつにだけはデート現場を見られたくなかったんだよ。


 左腕を掴み胸を押し付けてくるように抱いてくる。まだまだ成長期だが柔らかい感触を感じる。


「りょ遼さん。こちらの方はどなたですか?」


 まずい!ヤンデレ気質所持者にこの現場を見られたら俺は間違いなくデッドエンドだ。


 そう思い花を見るとやはりあの顔だ。むしろさっきよりはヤバイ。完全に笑ってない。オワタ。さようなら俺の人生。やり残したは多いけど悔いはない。待て待て、諦める前にまずは弁解しなければ。俺は左腕に抱きついている妹を引き剥がそうと試みる。


「はっ花。こいつは俺の妹の藍だ。ほら、お前も離れて挨拶しろ!」


 そう言いながら引き剥がそうとしているがなかなか離れてくれない。


「あんた誰? 遼兄ぃのなんなの?」


「おい、藍! ちゃんと挨拶しろ!」


「うっ……。篠崎藍(しのざきあい)。中学三年。遼兄ぃの妹」


 腕に抱きついたまま花から目をそらしながら自己紹介する。


 篠崎藍(しのざきあい)。俺の妹でブラコンだ。同姓の姉さんより俺に懐いている。むしろ姉さんと仲がよくない。花よりは少し身長が低めで髪型はツインテール。兄である俺から見ても妹はかわいいのだが・・・俺以外の人に懐こうとはしない。友達はいるみたいなのだが将来が不安な妹だ。


「いっ妹さんでしたか。初めまして。私は瀬戸内花。遼さんのクラスメイトです。関係は……まだ友達です」


 今まだってい言った? ねぇまだって言ったよね!? しかも顔赤くして俯いてるよ! 絶対告ったらOKですよね!?


「ふぅ~ん。あんたも遼兄ぃに群がる虫なのね」


 ん?あんた『も』ってどういうことだ? 今まで彼女はできたことないし女友達も数えるぐらいしかいないぞ。


「中学では遼兄ぃがかっこいいからって群がる虫を藍が退治してきたのに、藍離れるとすぐ群がる。やっぱり遼兄ぃは藍と一緒にいるべきだよ!」


「おい藍! なんてこと言うんだ!」


 少し強めに言うと藍ビクッと体を震わせ強く腕に抱きついてくる。こいつそんなことやってきてたのか。


『お前に関係するけどお前自身のことじゃないから伝えても無駄だな。』


 前に一成が言ってたことはおそらくこいつのことだろう。俺は深いため息をついた。


 そんな時藍を呼ぶ声が聞こえた。藍の友達だろう。これでこいつは離れてくれそうだ。


「藍、友達が探しに来たぞ。早く行ってこい」


「いやっ」


「はぁぁ。あとでハーゲンダッツのストロベリー買って帰るからさ。友達と来ているんだろ?あまり心配かけるな」


「ん、わかった。遼兄ぃ、ちゃんと帰ってきてね。お泊りなんかダメだからね」


 ようやく離れてくれたか。友達と合流し去って行く藍。


 あいつもそろそろ兄離れしてほしいんだが。いや、俺が甘やかしているのが原因なのか?花には謝らないと。


「花、ごめんね。俺の妹が変なこと言って」


「いえ、お気になさらないでください。かわいい妹さんですね」


「いや、かわいいのは見た目だけだろ?あんな性格じゃ将来が不安だよ」


「うふふ。優しいお兄さんですね」


 花は優しいな。あんな態度を取られても気にしていないんだ。


 藍は中学三年で今年受験だ。うちの学園を受験すると言ってた。あいつの学力だと間違いなく受かる。 もっと上を目指すべきではないかと聞いたことがあるが、『遼兄ぃと同じ学園がいい』となかなか引かない。去年までは気づかなかったことを今さっき気づいてしまった。来年から大変だな。


「じゃあ帰ろうか」


 俺達は帰りのバス停へと向かった。


 バスの中では花が藍のことをいろいろ聞いてきた。花は一人っ子のようで妹がいる俺が羨ましいそうだ。あまりいいもんじゃないと思うだけどね。一人っ子は何かと寂しい思いをすることが多く同姓の姉妹がほしかったと花が言った。確かに一人っ子だとそういったこともあるだろうから納得した。バスが学園前に着くまで花は藍や姉さんのことを聞いてきた。前に一人で夕飯を食べるのが寂しいとも言ってたし俺はこの子が寂しがり屋なんだろうなと思った。


「今日はありがとうございます。とっても楽しかったです。約束忘れないでくださいね♪」


「かしこまりました、お嬢様。こちらこそありがとう。じゃあまた月曜日」


 学園前のバス停に到着した俺達はそのまま解散となった。遅いから送ろうか?と申し出たものの妹さんの為に早く帰ってあげてくださいと断られた。送り狼なんてするつもりはなかったんだけどね・・・


 帰宅途中にあるコンビニによってハーゲンダッツのストロベリーとバニラを買って帰る。バニラは姉さんの分。藍だけに買ってきたと知られたらまたコンビニに行かされるのでその対策だ。


 明日は中田さんとのデートだ。帰ったら連絡しておこう。その前に藍をなだめるのが先になりそうだ。

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