第三十八話 こんなの見られたら本気でやばい
桜の作った朝食はご飯に焼き鮭、お味噌汁と和食で特に変わった味付けはされてはいないもののおいしかった。これぞ家庭の料理。ご飯を食べた後は特に用事もなかったので少し出かけるか聞いてみたが、やることがあるからと断られたので俺は一度自宅へ帰ることにした。忙しいって言ってたし仕方がない。
お兄さんの服は姉さんに渡せば大丈夫と言っていたのでそのまま着ている。サイズがかなりでかいが動くわけではなく家に帰るだけなので特に問題はない。学園前行きのバスに乗るためにバス停で立ち止まる。
さてと、帰ってもやることがない。先ほど一成と平、花に連絡をしたが今日に限ってみんな用事があるということだった。藍が暇そうなら遊びに行こうかと考えた俺はスマホを操作し、藍に連絡する。メッセージを送信しスマホのアプリでラノベを読んでいると学園前行きのバスが到着したので
乗り込み空いている席に座る。
バスに揺られながらラノベを読んでいると藍からの返信が来た。
『昨日疲れたから今日は家でゆっくりしたい』
これでやることはなくなった。課題も全部終わったし今日は日曜日だから部活もない。教習所は明日卒業検定なので行っても意味がない。
どうしようかと思っていると花からのメッセージが届いた。先ほど用事があるから今日は遊べないということだったのだが、何かあったのかな?
『用事が思ったより早く終わりそうです。
夕方前ぐらいには帰れますのでよかったらお食事でもどうですか?
私が作って差し上げます。』
夕食のお誘いか。今日は朝食も桜の料理をいただいたし、夕食で花の料理をいただけるなんてとんでもなく贅沢な日ではないのか?とりあえず返信しないとね。
『お誘いありがとう。花の手料理楽しみにしている。
部屋に来てもいい時間になったら教えてね。』
花の手料理を食べるのは二回目になるのかな。あのお店に出せるほどの料理を食べるのはすごく楽しみだ。この前はオムライスだったが今日は何を作ってくれるのかな?
バスが学園前に到着したので降りて、ここからは歩いて帰るのだが、この服装と夏の日差しのせいで汗が滝のように流れる。帰ったらまた風呂に入らないといけないな。
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「ただいまー」
家について玄関で靴を脱いでいるととことこと小走りする音が聞こえた。プリティマイリトルシスター藍が出迎えてくれるのだろう。
「遼兄ぃおかえりー」
出迎えてくれた藍はキャミソールにパンツというなんともエロい格好であった。このかわいい生き物が妹じゃなければ俺はきっと抱きしめていたに違いない。
「妹よ。暑いのは分かるがせめて下は何か履こうね。誰か来たらどうするつもりなんだ」
「暑くて動きたくないからさっきからインターホンがなっても無視してる」
ちゃんと出なさい。大事な用件だったらどうするんだ。
少し困った顔をしてみせるが、藍の目線は俺の顔の少ししたのほうを見ていた。首の辺りをじーっと見つめている。
「……遼兄ぃ、桜さんは気持ちよかった?」
「ん? 何を言っているんだ?」
「キスマーク……いっぱい付いてる」
今俺は汗をだらだら流している。外が暑くて流している汗ではなくこれは冷や汗だ。背筋が凍るような感覚が走っている。
ダッシュで洗面台に行き鏡を見てみると首元に小さな痣のようなものがいくつか付いていた。桜が俺の寝ている時につけたキスマーク。しかも結構目立つ。
あいつこんなのつけやがって! 今度会った時はお仕置きしてやる! てか夕方から花の家に行くんだぞ!? こんなの見られたら本気でやばい! 今度こそ監禁されてしまう!
俺は首をこすり痣を消そうとするが消えるわけがない。こんな状態で花に会えるはずがない。今日はもう断るしかないな。
「花に今日行けなくなったって連絡しよ。まだお昼前だし今なら断れるよな」
「遼兄ぃ、今日は花さんと会うの?」
気がつくと藍が後ろに立っていた。なんかニヤニヤしている。
「昨日は桜さんで楽しんだのに今日は花さんで楽しむんだ。遼兄ぃって絶倫だったんだね」
絶倫かどうかは知らないがそんな言葉女の子が言うものではありませんよ。あといろいろと誤解しているようだからちゃんと弁解しないとね。
「誤解しているようだが俺は昨日桜と一緒に寝ただけでそれ以上のことはしていないぞ」
「一緒に寝たのに何もないなんて遼兄ぃは女の子をいじめすぎ」
「……仰るとおりでございます」
藍は少し怒っているのか頬を膨らませ、腕を組んでいる。俺は今責められているはずなのだが、かわいい妹を見ているだけでなんだかご褒美をもらっている気分だ。
「何時に花さんと会うの?」
「夕方だからまだ時間はあるけどこれが消えないから今日はもう断るしかないよ」
藍は少し考えた後ちょっと来てと部屋まで連れて行かれる。何か策でもあるのだろうか。
藍は部屋に入ると化粧セットを取り出して俺を座らせた後向かい合うように立った。藍が用意したのはファンデーションだ。まだ中学三年だから化粧はしていないと思っていたが、そんなことはなかったようだ。妹が女になっていくが少し寂しく感じた。
「手出して」
言われるままに手を出しいくつかファンデーションを塗っていく。俺の肌に合う色を探しているようだ。
「……これかな。遼兄ぃ、少し上向いて動かないでね」
藍に言われた通りに上を向くと首元にファンデーションを塗っていく。化粧なんてしたことないからファンデーションを塗るなんてのももちろん初めてだ。果たして効果はあるのか。結構塗られている気がするけどこんなに塗るもんなのか?
「なかなか消えなかったから厚塗りしておいた。鏡見てみて」
終わったのか手を止めた藍は手鏡を差し出した。俺は先ほどまでキスマークだらけだった首元を確認する。あ、すごい。ちゃんと消えてる。ファンデーションを塗っているのもわからないぐらいだ。
「触りすぎると落ちちゃうし濡れたりしても落ちちゃうから気をつけてね」
「ありがとう藍。助かったよ」
俺は立ち上がり藍の頭を撫でてあげる。いつものような嬉しそうな顔ではなく今日は珍しくドヤ顔だ。達成感を感じているのかな。
「これで花さんと会うの断らなくていい?」
「これなら大丈夫だ。藍は花と桜どっちの味方なんだ?」
桜に懐いているのはわかるが最近は結構花にも懐いていた。藍なら桜の味方になっていると思ったけどそうでもないのかな?
「藍はどっちの味方でもないよ。桜さんには初姉ぇが付いてるし、花さんには詩織さんが付いているの。私がどっちかの味方をするとどっちかが悲しいし寂しいでしょ?」
「藍は優しいな」
俺が微笑みかけると少しばつの悪そうな顔をして顔を背けた。恥ずかしがっているのかな?
「ホントのことを言うと遼兄ぃを取り合う女の闘いのゲームバランスが悪くなるからなの」
おい、俺はいろいろ悩んでいるのにゲーム扱いかよ。そして俺はゲームの景品かよ。そんなこと聞いてないよ。今日は助けてもらったから今度お仕置きだな。それと何か忘れているきがする。
「あ」
「どうしたの?」
思い出した。藍には非常に申し訳ないことをしてしまう。
「藍、すまない。怒らないでくれるか?」
藍は頭にハテナを浮かべたような顔で首を少し傾げる。かわいいんだけどたぶんこれ言ったらすごい怒りそう。でも言わないといけないよな。
俺は意を決して言葉を放つ。ごめんよ藍。こんな兄を許してくれ。そしてまたお願いします。
「俺、汗かいたから風呂に入りたかったんだった」




