第十五話 水着購入 (花・詩織編)
15,16,17部は一緒に読んでいただけるといいかもしれません。
海に遊びにいく二日前の昼前、詩織は花の部屋に来ていた。
「花ちゃん、水着持ってる?」
「去年のものを持ってきたのですが、太ったのか少しサイズが合わなくなっていたのです」
花ちゃん、それは私に対する嫌味なのかな?
自分の胸を触る詩織。ペタペタだ。
「あとは学園指定の水着ならありますが……」
花ちゃん、それは一部の男からは評価高いけど花ちゃんが海で着るようなものではないよ。
「じゃあ、今から水着を買いに行こう!」
「いいですね。ご一緒させていただきます」
早速準備する二人。向かう先はこの街のショッピングモールだ。
バスで移動中、詩織は花といろいろ話した。学園のこと、イギリスのこと、一成とのこと、そして遼のこと。
ヤンデレ気質があるって聞いていたけどそんな感じ全くしないんだよね。
そんなことを考えながらも会話が弾み、バスはショッピングモール前に着いた。
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夏休みということもありショッピングモール人で溢れていた。この辺りでは一番大きなところだ。種類が豊富なのだ。
「花ちゃん、先に水着見る? それとも他の買い物を先にする?」
「時間もありますし、水着は最後に見ましょう」
「よし、じゃあ花ちゃんの部屋に飾る小物とか見に行こう!」
詩織がそう言って二人は歩き出す。
まずは小物を見る。花の部屋はよく言うとシンプルで悪く言うと殺風景だ。必要な物しか置いていない。イギリスの実家にほとんどの物を置いてきたからだそうだ。かわいい小物があれば少しは部屋の雰囲気も変わるだろう。二人は雑貨屋でいろいろと物色する。
「これとかかわいいんじゃない?」
「それですとこちらと合わせたらよくなりそうですね」
そんなやり取りをしながら買い物かごに入れていく。結構な量だ。
「詩織さん、これは何かしら?」
「どれどれ~? ん? あ、あぁ~それねぇ。なんだろうねぇ?」
花が手に持っているのは夜のプロレスで男が着けるもの。中学生が水風船にして遊んだりするもの。いわゆるコンドウさんだ。
「これもおもしろい形をいていますね」
次に手にしたのはスイッチを入れるとブルブルふるえるもの。女の子のある部分をマッサージするやつだ。
なんでこんなものがあるかって? なんでもそろっている雑貨屋だからですよ。
この子は私を試しているのか!? いや本気で知らないのか!? 教えるべきだろうか? でも教えたら私が使ったことあると思われてしまう! 実際あるんだけどね!
「は、花ちゃん! ここでの買い物はそれぐらいにしてお会計しようか!」
これ以上この子とここにいたら自分のペースを取り戻せなくなる。そう判断した詩織は花の背中を押しレジへと誘導する。
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雑貨屋を出た二人は服を見ることにした。
「花ちゃんはいつもどんな服を買うの?」
「そうですね。あまりヒラヒラしすぎるのは好きではないのでスカートは履かないです。だいたいこの時期はTシャツにショートパンツが多いです」
花ちゃん、今日もそうなんだけどその格好は花ちゃんのエロエロボディをアピールしてるようなもんだよ。イギリス育ちだからそうなのかな?
先ほどから男の目線が花に行っているのは気づいていた。しかし普段からそんな服ばかりではいつ悪い男に捕まってもおかしくない。
「よし! 今日は私が花ちゃんの服を選んであげる!」
「いいのですか? ではお言葉に甘えて、よろしくお願いします」
…………
………………
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ちーん。
私胸が小さいから大きい人のファッションコーデがわからないんだった。
いろいろ選んで花に試着させてみたが、ぜんぜんダメだった。膝をついて口から魂がぬけそうなかっこうになる詩織。
「し、詩織さん大丈夫ですよ。私気にしてないですから」
花ちゃんは優しい。まるで女神様だ。
「そ、そろそろ水着を買いに行きませんか? もうこんな時間ですし」
思い出したように口を大きく開け愕然とする詩織。
最大のやつが残っていた! やっぱり女神じゃなくて鬼だ! やめて花ちゃん! 私のライフはもうゼロよ!
「さあ行きましょう」
花が詩織の手を引き水着コーナーへ向かう。
今日の目的を忘れていた詩織は生気のない顔をして歩くのであった。
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水着コーナーに着いた二人はそれぞれいろいろと手に取り試着するのだが、詩織が花の試着した姿を見るたびに心に甚大なダメージを与えた。結局詩織は桜がどんな水着を買ったかわからない。
心がもうズタズタだよ。オーバーキルだよ。
その後二人はレストランで夕食を取り、帰宅するためバス停に向かう。バスはすぐに来て乗り込む二人。バスの中で詩織はぐったりとしていた。
「詩織さんお疲れですか? 大丈夫ですか?」
「ウン、ダイジョウブダヨ」
今日だけで一生分疲れた気がする。今後この子と出かける時はもう一人以上連れて行かないと。次はもたない。
そんなことを考えながらバスに揺られる二人。空はもう暗い。夏でも夜になると冷え込むので薄着のままだと風邪を引いてしまう。そうなる前に帰らなければ。
バスが学園前に着き、降りる二人。ここで解散となる。
「今日はお付き合いいただきありがとうございます。あさってが楽しみですね」
「ウン、タノシミダネー」
それではと去って行く花。花を見送り歩き出す詩織。
はぁ~。海は楽しみだけど、なんだかみんなと行くのがすごく怖くなってきたよ。一成君に電話しよう。
帰り道、詩織は一成に電話し今日あったことを話しながら慰めてもらうのであった。




