第95話 無言の運営と金のガチャ券それに懸賞の街アイデネ
オンラインゲームを始めて、というかネット関連のゲームをプレイヤーとして参加するにあたっては個人情報というものを晒すことはあり得ない。と思っている。
この狭い日本、世界単位で見てもいいのではあるが、ネトゲ―経由でオフ会を通じて現実世界の知り合い友達となり彼氏彼女になり結婚までしてしまうというのであるから世も末だ
もっとも、ゲーム外でもメールのやり取り位なものであれば勿論プレイヤーネームのアドレスではあるが、あってもおかしくはない。
実際やっているし。この『87人目の勇者候補』にしたってそうだ。
攻略にあたっての情報交換の為であったり、ログインする時間帯を合わせたりするのにそういった物は大いに役に立つ。
しかしながら、このゲームに関してはメールを使ったことがない。
初期アバターの設定然りプレイヤーネームの登録然り、クドい程にはメールアドレスを聞いてきたものではあるが『登録完了しました』的な事務メールの一通すら運営からは『送られてはきていない』。
このゲームの為に準備したメールボックスは常にゼロ。からっぽ。
迷惑メールですら回避されている。
当の昔に卒業したオンゲーなど、未だにガチャ的な課金要素をデカデカと広告した射幸心を煽るだけ煽ったものが届くというのに、現実で進めているゲームでこれなのだからやはり運営の怠慢ではないか。
とは思う。
そもそも、こんなゲームをやっている僕が言うのもおかしな話ではあるが、このゲーム。
『87人目の勇者候補』をどこで手に入れたかも記憶にはない。
恐らくは新春大売り出しの熱気に充てられた僕が訳も分からないようなゲームショップの福袋で見事に当てたものであろう。
なんにせよ、今の今まで何の音沙汰も無かったその運営から本日メールが届いた。
酷く古臭い様式の広告メール。
中国かどこか経由の怪しいメールのように文字化けをしている訳ではなかったが、凄く質素な要件だけを簡潔に伝えるような文章。
『勇者候補の皆様』から始まるそれっぽい書き出しから始まる案内は、要するにガチャを回してレアアイテムをゲットしよう。
みたいな、やっぱりというか、ああ、というかそんなため息が漏れだすようなものではあった。
「貯金で生活している身でガチャ課金はなあ。今までもやってなかったしなあ」
などと誰も聞く者のいないワンルームの部屋で独り言を洩らす。
止めて欲しいのか、背中を押して欲しいのか。
今なら無料で一回。
その文字面も嫌という程見てきた。
そして踊らされる友人/(ゲーム内)を多数見てきた。
一回だけ、一回だけなら、もう一回、もう一回だけやってみようかな。
と思わせる辺りが何ともやり口が汚い。忍者じゃあないが汚い。
「ガチャチケットは『懸賞の街アイデネ』の景品交換店までお持ちください。ってまだ行っていない街だし。画面上で引けないのは不親切だなあ」
……というのも勿論独り言である。
ログイン直前のステータス画面を覗くとアイテムボックスに見慣れない物が入っていることに気が付いた『金のガチャ券』。
うーん、課金……うーむ。金だしなあ。うーん。
悩んだ。
会社辞める時と同じくらいには悩んだ。
会社なんてものは人生においてそんなものである。
読了ありがとうございました。
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