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最弱の勇者候補は『理不尽』が少し楽しい  作者: 田中ヒロミチ
第一章 『幻想世界エメンガルド』へのプロローグとフリーター男
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第1話 圧倒的に不評

 目を覚ますと、見慣れたワンルームにごちゃごちゃと衣服を脱ぎ散らかした我が家のPCの前であった。厳密に言えば椅子の上。モニタの前で突っ伏している形で。


 落下していた時の痛いほどに打ちつけてくる風の感触や地面が迫ってくる恐怖感……それに地面に叩きつけられた時のショック。

 まあ最後のヤツは感じる前に死んでいたので何とも言えないが、ともあれ、生々しい程に記憶に残っていた。


 目の前のPCのモニタには、グチャっと死んでしまった自キャラと『GAME OVER』の血文字、それにその下に『高い位置からの落下ダメージを軽減するにはパラシュートが必要だよ』という先ほど目にしたヒントのようなものが映し出されている。


 さっきまで居た世界の景色ををゲーム画面にしてしまったような、そんな感じ。


 ところで、このPCゲーム『87人目の勇者候補』は、厳密に言えば正式名称ではない。

 珍しいことにこの何人目という表現がシリアルナンバーになっているというマニア心をくすぐる逸品である。

 

 ということは空前のブームにでもなっていれば「500,078人目の勇者候補」なんてものにもなっていたかもしれない。

 が、目の前にあるパッケージのソフトは87というシリアルナンバーが振られたものである。

 

 売上的には、まぁ……そういうことであろう。

 

 こんなにまで衝撃的な体験ができるのにも拘らず販売前には大して騒がれることもなく、ひっそりとリリースされ、販売後のユーザー評価は圧倒的に不評。レビューに『すぐに死ぬ』というものがあって、「一体なんのことか」と思ったものだが、今となればそれも何となくわかる気がした。


 説明書もあってないようなもので先ほど目にしたようなストーリーが載っているだけで、主人公の目的もクリア条件も何も記載がないので自由といえば自由が売りなオープンワールドなゲームなのであろう。

 

 もう一つの売り。衝撃的な体験の根源。これこそがこのゲームの持つ最大の目玉であるが『VR装置不要、圧倒的没入感』といううたい文句である。


 どれもこれも嘘はついていない。けれどもどうにもこうにも先ほどまでの物理的な衝撃が未だに手を震わせていた。実際に痛みは感じていないのだけれど。


 ゲーム画面では自キャラの死体の周りをカメラがグルグルと回り続け『GAME OVER』をいつまでも表示している。

 何も考えず、どのゲームでもやっているようにリスタートをすると……これが良くなかった。まあ気づいた時には遅かった訳ではあるが。


 床がパカッと開き、僕は再度、掴むところの見つからない宙に投げ出された。


 結果は……言うまでもなく轢かれたカエルのような物が出来上がっていた。

読了ありがとうございました。

話はまだまだ続きますので気軽にブクマや評価、感想など是非お聞かせくださいませ。

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