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フランチェスコ・カラッチョロの場合

 フランスが弾けたらしい。

 いや、経済が吹っ飛んだとか、軍がどうにかなったわけではない。

 大艦隊建造をぶち上げてきた。どうせすぐに第一次世界大戦で全て雲散霧消するが、現時点で総計22隻の巨艦建造をぶち上げている。

 そして、その主力は34㎝4連装砲塔装備とかいうアレだ。3基で12門、4基で16門というぶっ飛び具合。

 数は力、物量は神と言わんばかりの力技である。

 イタリアはそれを暢気に見ていればよいかって?

 そうしたいのはやまやまだが、どうやら油田は有望だと分かった。開発に入ればいやでもフランスに知れてしまう。

 そうなると、確実に海軍増強を迫られることになるだろう。


 かといって、正直なところ、すでにイタリア経済は限界である。これ以上、周りに付き合う訳にはいかないんだ。

 原油生産が軌道に乗る前に経済破綻が目に見えている。


 なのだが、計画だけなら金は掛からないとばかりに要求を突き付けられている。

 まあ、あれだ。高速戦艦を造れという要求だ。


 高速戦艦。以前説明したように、ボイラー技術が発達した時代であれば自然な発想なんだが、今の時点では高望みと言って良い。

 特に、イタリア程度の経済、技術レベルでそれを造れとは無謀な事を・・・


 まず、戦艦とは何かというと、巨砲とその砲撃に耐える防御力を持つ戦闘艦の事を指す。巨砲を多数備えるためボイラー数には制限があり、装甲の重さの分だけ要求出力も大きくなりがちだ。

 当然、妥協して20~22ノットに抑えるのがこの時代の世界の潮流だった。イタリアだけは少しでも速くという事で23ノットを出しているが、まあ、中途半端であることは否めない。


 そして、その鈍足に代わって海を駆け巡るのが巡洋艦という艦種である。

 巡洋艦は砲も装甲もそこそこだが、その分軽く、砲や装甲の制約が緩い分多数のボイラーを積み速力を出せる。

 その特性と巨砲を掛け合わせたのが巡洋戦艦、あるいは戦闘巡洋艦と呼ばれる艦種である。

 ただ、これは一般的な分類であり、英国のソレは本当に装甲が薄く、速力に特化しているが、ドイツの場合は防御にも重点を置いたものとなっている。


 この戦艦と巡洋艦双方の特徴を併せ持たせればそれが理想なのだが、その理想論を語るイタリア首脳部の要求に対し、かなりの無理があることを説くのは至難の業だった。

 技術力が伴わなければ実現しないし、まずは建造のために経済力をつける必要がある。


 しかし、経済力を守るためには相応の軍事力の担保が必要であり、技術の保護には軍事力が欠かせない。

なんともジレンマである。まるで、卵が先か鶏が先かの押し問答が延々と続いているような状態だ。


延々と続く押し問答の中で、出力8万馬力というこれまでの倍の出力によって25ノットを実現する15インチ連装砲を装備した戦艦。

 まあ、ほぼ、英国のクイーン・エリザベス級なのだが、そんな艦を提案した。

 幸いなことに技術的にも12インチ(305mm)の装甲板の製造が可能となったことからこれを採用することとなった。


フランチェスコ・カラッチョロ級

排水量   27800t

全長    195.6m

幅        28m

出力   80000馬力

速力     26ノット

武装 15インチ連装砲4基、6インチ3連装砲4基他


1914年に起工されたが、すぐさま第一次世界大戦がはじまってしまう。イタリアは中立を宣言していずれにも組みしない姿勢を貫いていたが、当時独墺との協約関係があり、また一方では英国との関係があった。

 墺からの参戦催促は懸案の領土問題に何らの譲歩もないことから拒否し、英国による催促と密約にものらりくらりと対応している。

 史実を見ると1915年には早々に参戦しているが、こちらではその時点での参戦はない。英国との条件闘争で様々な要求を飲ませている。その中には15インチ砲戦艦の技術供与や支援と言う項目もあった。

 1916年、まだ参戦せずにのらりくらりやっている。英国の支援があり、フランチェスコ・カラッチョロの建造はスムーズに行われている。もうすぐ進水、来年には就役できる見通しが立った。

 英国だけでなく、フランスも参戦を要求しているが、それがリビア侵攻という脅しを伴うものだったことで態度を硬化させ、参戦は遠のいている。フランスGJ。

  

 1917年、英国はフランスを宥めてさらに譲歩案を出して参戦を迫ってきた。方やオーストリアは武力をチラつかせている。それがどういう事か分かっているのかな?

 それが発端となった。

 期せずしてイタリアとオーストリア間で小競り合いが発生してしまう。こうなっては仕方がない。英国に支援を要請し、自動車や弾薬などの支援をふんだんに受け取りながらオーストリアへ宣戦布告がなされることとなった。

 その結果、2番艦、3番艦の建造は中止となり、1番艦のみが急ピッチで就役に向けた工事が行われている。

 伊土戦争の勝利に気をよくしているイタリア海軍は攻勢主義の下アドリア海を暴れ回ることになった。

本来、未成艦であるはずの戦艦ですが、これは架空の物語です。実在の未成戦艦とは関係ありません。


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