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ルッジェーロ・ディ・ラウリアの場合

 英国との交渉は程なく纏まる事になる。やはり国外には14インチ砲を売りさばきたいらしい。製造をイタリアで行いたかったが、急ぐことでもあり、まずは英国からの輸入とし、後々その技術移転も行うという事で話がまとまった。


 ただ、この建造に際してイタリアではすでに艦艇が飽和状態となっており、レジナ・エレナ級より以前の前ド級戦艦の早期退役が行われようとしていた、レジナ・マルゲリータ級に至っては早々に第三国への売却が決定している。

 そこで上がった売却金まで突っ込んで何とか14インチ砲戦艦の建造に漕ぎつけるという情けない台所事情が今のイタリアの姿だった。


 さて、もう一つ驚いたことがある。昨日までの自分が目の前に居たらどう思う?


 何を言ってるのかわからないって?


 それは俺も分からない。


 だが、ありのままの事実としてそうなのだ。


 俺は俺から設計仕様書を受け取った。


 そして、昨日までの俺は俺ではなかった。


 心配するな。昨日までの俺に21世紀の記憶はないようだったので俺も安心した。別に分裂したわけではないようだ。だが、不思議なことに、俺が行った設計やそこに至る思考過程は何故かちゃんと理解していた。

 なんだ?これ。

 何が起きているのかよく分からない。よくよく考えてみれば俺の記憶自体が繋がっていない部分がある。俺はあくまで艦の設計には携わっているが、日常生活の記憶がない。昨日までの俺の家庭事情とかは実は風聞としてしか知らなかったりする。どうなってんの?これ。

 これも、あの老人の仕様なんだろう。なるほど。艦の設計にだけ携わり、変に歴史に干渉しなければ帰ることが可能という事か。たぶん・・・


 さて、そんなわけで14インチ砲戦艦の設計だが、非常に悩ましい問題が存在している。これまでイタリア戦艦の装甲は重要な舷側装甲でも10インチ相当。つまり250mm程度しかないのだが、これではどう考えても薄い。本来300mmほど欲しいのだが、困ったことにその製造能力はいまだに備わっていない。

 

 何とか鉄鋼業界が英国の資本を入れて技術向上に努めてはいるのだが、未だ実現はしていない。もう少し待てば可能だとは言うのだが、そこにはほかの問題も存在していた。


 ほかの問題。


 今回の14インチ砲戦艦はそもそも、コンテ・ディ・カブール級で余裕を持たせて設計した船体を流用して早期の14インチ砲戦艦実現が目的とされている。できればオーストリアやフランスを出し抜く事まで考慮しているという見栄の張りようだ。


 それはつまり、下手な改正は時間を食うのでダメという事。


 結局、英国の巡洋戦艦よりは装甲があるが、所詮は二流国の戦艦という状態になってしまうことが確定した。

 ただ、これは何もイタリアの工業力のみに起因するものではなく、戦艦に求める性能という面でも妥当とされた。

 列強諸国の戦艦というのは速力を殺してでも防御と火力を求めるのだが、イタリアの場合、装甲巡洋艦、あるいは巡洋戦艦を理想とした部分がある。速力と防御力をバランスさせるというのが当てはまるだろうか?


 これには技術的な部分もある、この時代は高出力を得るには大量のボイラーを搭載する必要があった。史実の話だが、コンテ・ディ・カブール級は新造時には20基ものボイラーを搭載して3万馬力強でしかなかったが1930年代の改装では僅か8基のボイラーで9万馬力に達する出力を獲得している。

 いくら一基が小さくとも、数を多く搭載すればかさばる訳で、装甲を厚くして重量が増したにもかかわらず速力まで得ようとすれば、船体の大型化を招き、ボイラーの増設が必要になって大型化という悪循環を招く。それはそのままコストに跳ね返るのだから、何かを妥協するのがこの時代には求められていた。


 1930年代であれば船体も大きくなるが、ボイラー性能も上がっているので重防御、大口径砲、高速力という理想的な戦艦が建造できた。それより20年さかのぼる現在の段階では、何かを得るには何かを妥協することでしか解決できない。


 そういう事情があり、今回は大口径砲搭載を最優先にして防御力は12インチ砲戦艦のまま、後に必要とされる水平装甲の強化をいくらか施した程度で妥協するしかなかった。

 ただ、砲塔が減った分、ボイラーの積み増しが行えたことで速力を23ノットに回復させている。


ルッジェーロ・ディ・ラウリア級

排水量   23500t

全長     176m

幅       28m

出力  43000馬力

速力    23ノット

武装 14インチ連装砲4基、5インチ連装砲6基他


 ちなみに艦名は起工と前後して退役したイタリア初の近代戦艦から受け継いでいる。

惜しむらくは14インチ砲の採用に予算を取られた結果、前級の3番艦が建造中止となり、資材と予算がこちらに回された結果、戦力としては史実と変わりないか前ド級艦の売却で低下しているような現状だった。


 これが現在のイタリアに出来る最大限の戦力強化策。ホントに良いのかな?これで・・・・


そんな艦はこの時代に存在しない?


そうお思いのあなた、通ですね。


これは架空の戦艦です。実在の戦艦とは関係がありません。


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