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コンテ・ディ・カブールの場合

 オーストリアが建造する戦艦が3連装4基であることが判明した。

 相手は12門艦である。現在イタリアが保有する戦艦の片舷へ指向可能な砲門数は、レジナ・エレナ級が6門、パレストロが8門、ダンテ・アリギエーリ級が10門、順序良く増えているのは良いが、オーストリアの新戦艦には敵わない。

 

 パソコンの資料によると、オーストリアの新戦艦、テゲトフ級は連装砲塔の揚弾機構のまま3連装にしつらえているという事で、斉射で支障が出るだろうというのが分かった。しかし、そんな未来知識を披歴する訳にもいかない。しかも、イタリアの歴史が変わっているのだからオーストリアの歴史も変わっているかもしれない。

 パソコンのデータはあくまで俺の居た現世の資料であって、ここで通用する保証はない。あの老人が何をやったかわからないのだから、資料も参考程度にしか扱えない。あくまで、戦艦史を学習するのに使えるだけであって、歴史の改変に使えるかというと、老人による改編で手元の資料には正確性という点で疑問符がつく。


 さて、ここは少し悩ましい。この解決手段は3通り存在している。

 

 まず第一に、前回ボツになった3連装4基案を復活させて建造する。

 速力は落ちるが12門艦となるので対抗策としては十分と言える。しかも、遅くなると言っても21.5ノット以上、上手くすれば22ノットに出来るのだから、せいせい20ノットそこそこのオーストリア戦艦に対し優位に姿勢を作れることになるだろう。

 それに、資料の通りならば、戦闘時の発砲頻度という点でもイタリアが優位に立てる。12門という同数の砲があるのだから、あえて無理をせずに既存の技術を伸ばしていく方向で発展させることが何よりも必要だとも思うのだが、やはり、目先のメンツという点で納得できないという意見が多くなるのはどこの国でも同じようだ。


 第二案は余裕のある13門艦。

 オーストリアより1門多い。しかし、技術的に可能な範囲で、3連装砲を既存の戦艦よりも一基多く積む必要がある。そのためには船体を大幅にストレッチして艦橋前か後櫓の後ろに砲塔を配置するのが適切だが、それでは200m近い巨艦になってしまう。そうなると、出力は最低4万馬力程度。技術的な難易度もコストも飛びぬけて高くなってしまう。そんなものが認められるとは思えない。


 そうなると、史実通りの第三案。

 13門艦は変わりないが第三の3連装砲塔を船体ど真ん中に配置してしまう。そうすることでストレッチは最小限に、ボイラーやタービンの配置を多少変えて最小限の出力減で収める方法。


 コンテ・ディ・カブール級

排水量    22900t

全長       176m

幅         28m

出力    31000馬力

速力    21.5ノット

武装 12インチ3連装砲3基、12インチ連装砲2基、5インチ単装砲14基


 これまで砲塔式副砲を採用してきたが、主砲塔5基を配置してしまうと副砲を砲塔で搭載するスペースがなく、防郭式にせざるを得ない。砲塔と違い船体の装甲面に取り付けるわけだから防御面にも影響するし、1門づつの旋回範囲も狭くなってしまう。のちの戦艦が砲塔式へと発展していくのとは逆にド級以前に回帰してしまうことになった。


 ただし、今後、12インチ同士で殴りあうのでは敵味方双方が殴り合ってどちらが先に沈むかという話になってしまう。どちらにも決定打がない消耗戦。

 12インチの巨弾で殴りあうとなると、生き残った方も被害は甚大になることだろう。相手を先にKOしようと思えば、さらなる威力を求めることになる。

 これが大艦巨砲主義の避けては通れない王道というやつだ。


 コンテ・ディ・カブール級が起工された1910年にはすでに英国でさらなる大口径砲が試作され、自国艦には13.5インチ砲が、そしてプライベートベンチャーとして14インチ砲すら試作されている。


 英国は口径拡大を1.5インチ刻みで進めており、史実においては本国向けの正規艦に14インチ砲搭載戦艦は存在しない。第一次大戦で保有した14インチ砲戦艦というのは、本来、輸出用に建造していたものを大戦勃発に伴う戦力強化のために買収し、英国海軍で運用していたに過ぎない。買収した艦の中には、戦後、本来の発注者に売却された例も存在する。

 

 閑話休題

 

 大艦巨砲主義にのっとって考えるならば、当然のように今後、13.5インチやⅠ4インチの導入を模索するのは自然な流れだと言える。

 砲口径が巨大になれば、防御のための装甲も厚くしなければいけない。厚い装甲を製造するには製鉄所の技術レベルをさらに向上させなければいけない。

 ここで鉄鋼業界の底上げが出来れば後の戦艦の装甲が信頼のおけるものへと変化させることも夢ではない。

 砲の大口径化という目的と、装甲の増厚化とい課題。


 それはいずれも英国との交渉次第となる訳だが、果たしてどうなるやら。

実在の戦艦名が続いていますが、仕様は史実と異なっております。


実在の戦艦とは一切関係のない架空艦ですので、思うところがある方は下の感想か評価へお願いします。

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