ダンテ・アリギエーリの場合
パレストロの建造が順調に遅延する中でオーストリアがド級戦艦を建造しているとの情報が入った。
オーストリアのド級戦艦と言えばテゲトフ級だが、どうやら違うらしい.12インチ連装砲を6基装備しているとのこと。配置は日本の河内型やドイツのナッサウ級の配置と同じ亀甲配置と呼ばれる配置方法だそうだ。
資料によるとオーストリアの準ド級戦艦ラジツキー級が12インチ連装砲2基と24㎝連装砲4基装備だったが、これの24cm砲を12インチに変更したようだ。艦の大きさ自体がかなり変わってくるので就役までには時間があるだろうという事だった。
ド級戦艦初期のこの時期には、準ド級戦艦と呼ばれる主砲より幾分小型の装甲巡洋艦の主砲である8~10インチ(20.3~25.4㎝)程度の砲を混載するラジツキー級のような戦艦が各国で建造されている。日本でいえば薩摩型戦艦がそれにあたる。
確かにこうすれば戦艦と装甲巡洋艦の双方の火力を具備できるのだが、それでは火力では12インチ連装砲2基の標準戦艦よりあるが、圧倒できるかというと、そこまででもない。装甲巡洋艦を火力で圧倒するが、所詮は足の遅い戦艦なので振り切られるという、コストが高いわりにイマイチだった。もちろん、ドックや港、造船技術の制約もあったわけだが、やはり、単一巨砲の方が有利な事には違いない。だからこそ、ドレッドノート以後、準ド級戦艦は時代遅れとされることとなったわけだ。
そして、もう一つ、背負い式と亀甲配置というのがある。背負い式が後の主流であるが、砲塔の旋回速度や海戦の様相からこの時期は必ずしも背負い式が良いとは思われていなかった。
背負い式にすれば全砲門を同一方向に向けることが可能だが、裏を返せば敵が左右から迫って来たり、激しく回頭を繰り返しながら砲撃をするような場合、全く主砲の発砲が出来ない時間が出来てしまう。亀甲配置ならば、左右いずれにも主砲が配置されているので少なくとも4門(ドレッドノートは2門)指向可能であった。
これは結局、背負い式を前提にした戦法の普及で亀甲配置は発砲できない砲塔が死重量として性能やコストの足かせとなることから一時的な流行りに終わる。
これ以外にも、中心線からオフセットさせて亀甲配置だが左右両方を志向可能な戦艦も過渡的には存在した。もちろん、そのような配置は死角が多く実用的ではなかったわけだが。
「オーストリアがパレストロと同等の戦艦を建造している!」
当然、そんな話が海軍内部で聞こえるようになってくると対抗策が必要な事は火を見るよりも明らかだった。
当時、英国資本の協力を得て開発中だった三連装砲塔の搭載を前提に、オーストリア戦艦を超える新戦艦の設計、建造が求められた。
そこで、背負い式による3連装砲塔4基という配置で提案したが、2万2千トンに達するとことからストップがかかった。
しかも、速度を求めるという要求までなされたことから出力と艦の幅を考慮した結果、3連装2基、連装2基の10門艦で妥協することになった。
ダンテ・アリギエーリ級
排水量 19500t
全長 168m
幅 27.1m
出力 32700馬力
速力 23ノット
武装 12インチ3連装砲2基、12インチ連装砲2基、5インチ連装砲6基他
1908年に1番艦が、1909年に2番艦プリンチペ・アメデオが起工されたが、時を同じくしてオーストリアがさらなる新型戦艦の建造を発表した事から2隻で打ち切りとなった。
それでも一応、イタリアが3連装砲塔を初採用したという栄誉は死守できた。それで良しとするほかないだろう。
建造を通して3連装砲の功罪というのも見えてきている。3連装とすることで艦をコンパクトにする効果があることは確かである。同じ10門でも、連装で達成するには5基の砲塔が必要で、ボイラー室を潰すか艦を大型化しなければいけない。
しかし、その反面、3連装砲塔は巨大なためその駆動力もまた高出力化が求められる。艦がコンパクトだから省コストかというと、そうならない。しかも、3門が一つの砲塔に収まるという事は、敵の攻撃で砲塔が破壊された場合、一挙にうしなう戦闘力が大きく、しかも、火災や爆発の危険まで増してしまう。
そして、今はまだあまり問題とされてはいないが、砲同士の間隔が狭いために発砲の際に砲弾同士が影響を受けて集弾性が悪化する事にもなる。
読んでいただきありがとうございます。
おいおい、何考えてんだお前は、こんな戦艦考えて何がしたいんだ?という方は下の評価や感想へお願いします。