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レジナ・エレナの場合

 あれは昨日の事だった。 

 大晦日なのでのんびりゲームをやり、日付が変わる前にゲームを終わらせたはずなのだが、なぜかパソコンがシャットダウンせず、画面に老人が現れたのだった。目を疑ったね。何が起きているのかわからなかった。


「どうやら不満があるようだの」


 何の話か分からないが、老人は納得したようにそう言った。画面の中でだ。何だこれと故障を疑ったね。


「これこれ、故障なんぞしておらん。ゲームに不満があるのだろう?」


 再度そう言っている。ディスプレイの電源を切ってみた。


「だから、故障でもなければ幻覚でもないと言っておろうに」


 ますますわからない。これは一体?


「もっとイタリア戦艦で遊びたいのだろう?だったら、過去へ行って戦艦を作ってくればいい」


 何を言ってるのかわからない。過去へ行って作ってくるって、そんな事できる訳が無いだろう?


「なに、わしが過去へ送ってやろうというのだ、そうすれば可能だ」


 いやいや、そもそもだ、イタリア戦艦の歴史というのは片手で済む程度のバリエーションしかないんだ。それを10ランクを埋めるってまず無理だろう。


「そこは少々助けてやろう。少し歴史を弄ればできないことは無いぞ?」


 歴史を弄るって簡単に言って良いのかよ。そんなことをしたら色々と歴史が変わってしまいかねないと思うのだが。


「そこはわしの力で修正すべきところを修正してやればどうにでもなる。安心してもらっていい」


 安心しろと言われても、安心できる要素が何一つ見つからないんだが。


「習うより慣れろというではないか」








 おいおいと呆れていたら視界が暗転し、訳の分からない場所に飛ばされていた。

 目の前にはアルファベットが並び、外国語が飛び交っていた。そう思ったのもつかの間、その言葉が分かり、文章が読めるようになる。

 ここは1899年のイタリアらしい。そして、今行われているのは新戦艦の開発に関する会議だった。


「・・・このように、12インチ砲を単装で2門、8インチ砲を連装砲塔で6基12門装備できる艦を提案したい。どこの国の戦艦よりも高速で、どこの国の装甲巡洋艦にも負けない強力な艦だ」


 一人の男がそのように説明を行っている。その艦は8千トンという小型の船体にこの重装備を載せるというシロモノだった。

いくら地中海が外洋に比べて穏やかでもやりすぎだと思った。


「この案は少し小型に過ぎて実現が難しくはありませんか?そして、8インチ多数というのは確かに装甲艦には有効でしょう。しかし、オーストリアやフランスの戦艦とどう対峙します?戦艦から逃げながら装甲艦のみを相手にするのでは、相手が戦艦を拠点に構えさせれば我々は手出しができないという状況になるだけです」


 俺はその案に対して対案を出すことを伝えてその場を後にした。


 対案、ただ、今頭にあるのは二万トン近い艦だった、しかも、ドレッドノートにしか思えないデザイン。

 自身のデスクに帰ると家で見慣れたパソコンのディスプレイが鎮座していた。百年以上もギャップがあるその物体に吹いたが、周りの人間には見えていないらしい。

 これ幸いに席についてこの時代のイタリア戦艦について調べてみた。

 なるほど、さっき話が出たのが遅れてきた最強艦、主砲に近い口径の副砲を多数備た準ド級戦艦というやつだそうだ。しかも、建造に時間がかかりすぎるため、ドレッドノートより後の就役とか恥やわ・・・


 さて、俺の頭に浮かんだデザインはというと、どうやら1903年のジェーン軍艦年鑑に寄稿された単一巨砲艦の案だそうだ。これにインスピレーションを受けた英国がドレッドノートを作り出すのだそうだ。

 ただ、史実で完成した艦が1万3千トン程度、俺のデザインは1万7千トン。大きすぎたが為にボツとなり、海外流出という事態になっている。もう少し小型で単一砲にすればどうだろうか?


 そこで、前後に12インチ連装砲を装備し、単装砲を舷側に左右各2基配置する案にした。つまり中央の連装砲2基を排除して軽量化した形になる。これで副砲を持たずに対水雷艇用の小型砲のみを搭載すればよいのではないか。


 その提案には様々な異論が出た。しかし、確実に装甲艦を倒し、なおかつ戦艦に対しても少数で圧倒し得る火力があるという事で何とか承認を得ることが出来た。



レジナ・エレナ級

排水量  13200t

全長     145m

幅     22.4m

出力  20000馬力

速力    22ノット

兵装  12インチ連装砲2基、単装砲4基、3インチ単装砲12基他


 起工は1901年だったが、予定通りに工期は遅れて就役は見事にドレッドノートに先を越されてしまう。


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