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謝礼ではなく責任を

「帰ってきたようだの」


 老人が画面に現れた。


「イタリアの歴史はずいぶんと変わった。王国は存続しているし、自国が戦場とならなかった分、国内も安定している。そして、中欧でもソ連の影響が緩和された。『未回収のイタリア』を獲得したからバルカン問題に深く関わっているのが少々問題なぐらいか。そうそう、リビアもだったな」


 まあ、そんな政治的な事はどうでも良い。あのT34モドキは何だろうか?


「P40はおぬしが考えたものじゃないか、忘れたのか?」


 そう言われても思い出せないんだが


「戦艦の設計の合間に色々雑談していただろう。リビアの件でフランス戦車を撃破出来、しかも防御力があるものとしてスケッチを描いたではないか」


 そんなことが?


 あった、そういえばあった。M11とかM13しか知らなかったから傾斜装甲で防御を良くして火力を増す話をしたんだった。

 そうか、あんな雑談でも影響することがあるんだな。


「思い出したか。歴史では触れられておらんが、イタリアのジェットエンジンもそうじゃ。胴体内でプロペラを回す機構に笑い転げたおぬしがスケッチを渡しておる」


 老人はそこで深くため息をついた。


「その辺りは予想の範囲内じゃ。その修正くらいはなんでもない。だがな、歴史を変えるというのは構わんが、変え方というのがあると思うんじゃ。おかげで少々手間がかかったし、謝礼も考えておったが、おぬしには責任を負ってもらうほかないようじゃな」


 呆れたように老人がそう言ってくる。何の話だろうか。


「兄貴、引きこもりゲーマーでキモい軍事オタクで海戦ゲームにハマってるって話したら興味持っちゃってさぁ。イタリア戦艦の戦績がどうとか言ってたじゃん」


 妹よ、お前はどこかに兄を敬う気持ちはないのか?なんだその並べられた偏見と嫌味と蔑みは。


「いや、実際キモいし。ちょっとゲームやオタクな話せずに突っ立ってるだけなら連れて行っても良いけど、無理でしょ?」


 だから何だ、そこで断言したら終わりだろうが。

 コレは年の離れた妹だ。俺んところは家系的に美男美女が多い。と、思う。親父もちょい悪な感じのイケメンだし、親父の兄弟はみんなすげぇぞ。顔がな。みんな普通のリーマンで高学歴とは言う訳じゃないが。お袋もそれに引っかかった口だろうな。おかげで、ほら、妹も顔だけはきれいなんだよ。性格がちょっとアレだが。


「兄貴、今私の悪口言った」


 なぜわかるんだ。顔に出てすらいなかったろう?


「私は性格悪くないし、兄貴がアニメにハマりすぎてるだけ。この二次元が」


 と、性格の悪さを肯定している妹である。


「どうでもいいや、ゲームに関心があるって娘紹介してあげるんだから、感謝しなよ。どうせすぐ嫌われるだろうけど」


 そう言って妹が紹介してくれたのは金髪さんだった。何故に所々関西弁モドキなのかよく分からんが。

 ゲームは上手かった。イタリア艦は母国だから習熟してるとかって息巻いてたくらいだ。


 妹が横でげんなりして見ていたんだが、なんだか気にいられたっぽい。なんだか嵐のように帰って行ったよ。


 嵐が去った後、老人がまた画面に現れた。


「あれな、おぬしのひ孫だ」


 と、訳分らんことを言い出した。いや、おれ結婚どころか彼女も居ないんだが?


「イタリアでの話じゃよ。身に覚えがあるじゃろ?」


 身に覚えって言われても、そんなものは・・・・あるな。

 三度目の時だ、帰れるかどうか不安でたまたま知り合った女性とだな、うん。


「そうならんように日常生活から離脱させていたというのに、何を考えておるんじゃ。おかげでこっちは無駄に労力使ったわい」


 でも、そんなの子供が生まれなきゃよかっただけだし。俺じゃなくて憑依先の事じゃないか。神様なんだからそのくらい簡単なんじゃないの?


「いくら修正が出来ると言っても、人の生き死には歴史の結果じゃ、生まれてくるものを勝手に消したりは出来ん。居もしない愛人を認識させて野垂れ死なせなかったんじゃ、おぬしの気まぐれで変わった運命をわしが無かったことにはできん」


 なかったことには出来なくても、さぁ。俺が責任取る事じゃない気がする。


「そうじゃな。ナンパしたところまでは放置しようと思ったがの。おぬしが熱心に入れ込むものだから、ちょっと覗かせてもらった結果じゃ」


 いや、それはほら


「おぬしの過去の事はまあそれじゃ、だからと言ってイタリアで仕返しをたくらむことは無かろう?」


 確かに、やったことは酷かったよな。二股掛けられていた学生時代の失恋をぶつけたのは確かだ。妊娠させたのもナンパについてきた腹いせだしな。


「憑依先の相手が面倒見てくれんかったらどうなったか分らん。だがな、おぬしを捨てたという女性とおぬしが弄んだ女性は別人じゃ。あの娘のおかしな日本語も、おぬしが女性に聞かせた冗談を聞いて育ったからじゃ。自分の犯した過ちの責任くらいはちゃんと取ってもらわんと困るの。ゲームの時間も減るだろう。自由になる金銭も減るだろうが、おぬしの行いの結果だ」


 どこでそう繋がるのかはわからんが、どうにも納得いかない。






 そんなことがあって一週間が過ぎた。何だかんだと彼女はやってきている。妹は引き気味だ。ついでにあれだ、完全に大阪のおばちゃんだよ、コミュ力高すぎ。今では完全に我が家の一員である。


「兄貴、嫁が呼んでる。さっさとお昼食べなよ。良かったね、出来た嫁で」


 なんだその笑顔は。めっちゃ悪い顔してるぞお前。


 神を名乗る老人に責任取れと言われた。責任もなにも完全に居着いてるから色々確定事項だ。そういえば、あの時なんて言ったんだっけか?

 

 「ケンタ、昼やで、はよ食べてやください」


 そういえば、あの女性とこいつはものすごく似てる気がする。名前は確か、エレナだっけ?


「わかったよ、エレナ」


 名前まで同じ。まさかな・・・・


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