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そして始まる新たな夢の物語

 朝目が覚めるとずいぶん懐かしい光景が広がっているという不思議な感覚に襲われた。

 夢の中で数十年過ごしてきたという、なんとも不思議な感覚が確かにあった。それはそれはちょっとした物語が書けてしまうような面白い話だった。いや、歴史を作り替えたと言った方がいい様な記憶だった。しかし、どう考えてもそんなはずはない、年末年始の休暇に入ってやることもなくゲームをやっていた。記憶はそのように主張している。

 そのはずなのだが、そうではないと、どこかでそう思っても居た。


 昨日の続きをやろうとPCの電源を入れる。いつものようにゲームを起動。ゲームのOPが流れる。

ここで流れるのは大抵日米の艦艇、たまに他国艦が混じるがごく稀である。俺が現在使っているイタリア戦艦など出てくることは無い。


 海戦ゲームと聞いて誰もが思い浮かべるのは日米、あるいは英独だろう。それは間違っていない。充実したラインアップがあるのは確かにそれらの国だ。

 そして、実際、華々しくぶつかったのもそれらの国であって、それ以外の登場国となると、駆逐艦や巡洋艦はともかく、10あるランク全てを埋めるほどの戦艦や空母が存在しない。イタリアもそのような国だ。戦艦は僅かに3種しか存在せず、特典艦や課金艦としてしか入手できない。

 俺が使うのも暇つぶしに購入した課金艦のリットリオ。

 主要国の戦艦は大方使い果たし、何かして遊ぶとなるとこのような課金艦やイベントで配布された特典艦という事になる。

 主要国にも課金艦はある。なぜわざわざイタリア戦艦を選んだのかって?そりゃあ、他の国にないデザイン性だよ。

 性能も悪くはない。ランク8にもかかわらず、主砲射程はトップランクと同等。威力も大和やH42を除くすべての戦艦をぶち抜けるほどの強力さ。しかも、スキル増しすればアイオワ程ではないが、H42と並ぶ速力を誇る。非常に使い勝手の良い戦艦だ。しかも、デザインの国イタリアだけあって、他国にはない美しさがある。城郭のような優美さが印象的な日本、合理的な機能美を見せるアメリカ、実用一辺倒ながらそれが美しいドイツ、なぜか高ランクになるほど劣化する英国面。

 

 ただ、イタリアという国は工業力の低さから1930年代に至っても300mmを超える装甲版を製造できず、リットリオの属するヴィットリオ・ヴェネト級では70mmの硬質装甲と280mmの主装甲の間に木材を挟む多層構造が採用されていた。

 理論的には良くても、単一の装甲板で構成された他国の戦艦に比べ防御力で劣るのは否めず、水中防御も独創的だが実際には逆効果しか発揮していない。

 そのため、史実においての脆弱性はゲームでも再現されており、雷撃を受けるとダメージが大きく、HPが大幅に減ることになる。ダメコンによる回復量など精神衛生上聞かない方がよろしい。


 使い勝手が良いと言ったが、それはあくまで、俺にとってであって、他国戦艦に慣れたプレイヤーには全く馴染まないだろう。実際、いくら他国戦艦の戦績が良くてもリットリオだけは悪いというのはよく聞く話だ。

 その主原因は、防御の良さで前線に突進して敵戦艦を蹴散らすというセオリーが一切通用しないことにある。

 防御力が低く、盾にならない。そして、発射速度が極端に遅く、接近戦で勝ち目がない。

 例えばビスマルクなどはスキル増しで次弾を25秒で装填できるのに対し、リットリオはスキル増しでさえ41秒かかってしまう。これでは撃ち負けるのは当然と言える。スキルさえ積めば他の戦艦は軒並み30秒を切るのだからこの差はどうしようもない。

 そのため、よく疫病神と言われるが、俺自身は他の艦と変わらない平均的な戦績を維持できている。プレイスタイルも問題だろうな。


 もちろん、不満がないわけではない。史実の工業力がもっと高ければリットリオも他国並みの防御力や発射速度を得ていただろう。もしかしたら10ランクを埋める事すらできたかもしれない。

 そんなことを思いながら、イタリアを選択して驚いた。


「なんで戦艦がこんなにあるんだ?」


 それがなぜかを俺は知っている。それこそ朝起きた時の違和感だったのだから。


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