1章/対面
アクセス頂きありがとうございます。
「あの、大丈夫ですか?風間さん」
「…は、はい!?」
「いえ、ぼーっとしていたので」
「いえいえ、大丈夫です!あっ、本日から能力対策特務二課に所属することになりました、風間すみれです!
よろしくお願いします!」
「丁寧にありがとうございます。私はこの特務二課で皆さんのサポートをしている、富司峰 壮太といいます。
同じ役職として一緒に頑張りましょう!」
「は、はい。よろしくお願いします!……いっ!?」
風間は丁寧に挨拶してくれた富司峰 壮太という男を見る。
スーツを着こなし、優しそうにほほ笑んでいた男だったが、今風間はその男に対してドン引きしていた。
「やっとっ、やっとっ!普通そうな人が~。ひぐ、えぐっ」
「あ、あの~ (なにこの人!?な、なんで泣きはじめたの!?)」
「はっ!? し、失礼しました。ぐすっ。なんていうか、感極まってしまって…」
「そ、そうなんですか… (うっわー、関わりたくないかも…)」
開いた特務二課の扉の前で、嬉し泣きする男と作った笑顔を引きつらせる女。
この場も混沌テイストを醸し出していた。
「それで、風間さん。なにか受付の人から聞いていますか?」
「いえ、何も聞いてないですけど…」
「そうですか…おかしいですね。きちんとお願いしたはずなのに。まーいいです。私が説明しますね」
「よろしくお願いします」
風間すみれの所属一日目への意気込みは、少しづつ萎みつつあった。
ーーー
カーン、カーン、カーン
風間が富司峰から今日の朝の流れを聞き終えたとき、綺麗な鐘の音が放送によって室内に鳴った。
先ほどまで賑やかだった室内は、驚くほどに静かになり、それぞれが各デスクに座っていく。
風間は急な雰囲気の変化にオロオロしてしまう。
先程までの混沌とした空気は一体どこへ……
張り詰めていくそように感じる室内の空気に意気込む気持ちが縮こまってしまう。
その風間は、いかにも新品です、といったデスクに座っていた。
横のデスクの人は富司峰である。
「みんな、おはよう」
「「「「おはようございます」」」」
ビクッ!
室内が静かになったと思いきや、一人の男が立ち上がり、挨拶をし始めた。
勿論、新人である風間はいきなりの挨拶に驚くことしかできていない。
「あー……まずは皆に紹介する人物がいる。風間、前に来い」
「は、はい!」
男に呼ばれた風間は即座に立ち上がり、自分を呼んだ男の横に立った。
自分が行うべき朝の流れは既に富司峰から聞いているので、事前に考えていた自己紹介内容<・・・・・・>
を思い出しながら、男の次の言葉を待つ。
(き、緊張する~~!)
先ほど部屋にいた先輩隊員達が風間に視線を向けている。
その視線が余計に風間を緊張させるのだ。
「今日から特務二課に所属することになった風間 すみれだ。風間は富司峰と同じ非戦闘職員の扱いだ。
よろしくしてやってくれ。風間、自己紹介を頼む」
「はい! (練習通りに、練習通りに……)
今日から能力対策特務二課に所属することになりました風間 すみれです。
能力は持っていないですが、非戦闘職員としてここで精一杯頑張りたいと思います。
どうぞよろしくお願いします! (ガバッ)」
ぱちぱちぱちぱち……
勢いよく頭を下げたすみれに対してまばらな拍手が送られる。
風間はその拍手を聞いて、自己紹介が終わったことに安心していた
「自己紹介ありがとう。というわけでだ、今日から風間には当分の間、御堂 幸音の補佐に付いて
仕事を覚えてもらう。幸音、出来るだけ迷惑は掛けないようにしろ、いいな?」
「……わかりました。善処します」
「よし。風間、自分の席に戻ってくれ」
「わ、わかりました……(あの女の子の補佐?……どういうこと…)」
風間は困惑と少しの落胆をしていた。
(あんな背の低い女の子の補佐?私が…)
(もっと凄そうな人の補佐とかなら良かったのに…)
風間は才能ある類の人間である。
異能力はなくとも自分を卑下することなく努力を怠らず、
運動能力もあり、学力においても高校、大学と成績はトップクラスの成果を取ってきた。
だからこそ、風間は自分自身に自信があった。
自身があったからこそ、特務二課に配属されてからエリート街道を進めると考えていた。
しかし、風間に任せられた役は、風格がありそうな周りの人間と比較して、
眠そうな顔で課長と思わしき人間に返事をした後に横目でファイルを読んでいる女の子の補佐である。
(……は~)
風間は内心、この先大丈夫だろうか、と考えながら自分の席に戻った。
「新人の紹介も終わったので、いつも通りに進めるぞ。各々今日の予定を報告しろ」
風間の自己紹介が終わり、いつもどおりの特務二課の朝礼が始まった。